ベル麻痺

初診に適した診療科目

ベル麻痺はどんな病気?

ベル麻痺とは、顔面神経の機能不全によって顔の片側に筋力低下や麻痺を生じる顔面神経麻痺の一種です。
突然症状が現れることが多く、耳の後ろから徐々に顔の片側に症状が広がります。
症状がみられる側の舌にも味が感じられなくなるなどの症状が現れます。

ウイルス感染症や自己免疫疾患を原因として発症する例があるとされていますが、ベル麻痺の場合、原因は不明である場合も多いです。
かつては顔面神経麻痺を発症し、明らかな原因が認められないものをベル麻痺としていました。
顔面神経と呼ばれる第7脳神経がウイルス感染症や自己免疫疾患の原因によって腫れ、うまく働かなるというのが現時点で考えられている発症のメカニズムです。

顔面神経には顔の筋肉を動かす働き以外にも唾液腺と涙腺を刺激したり、味覚を感じさせる、聴覚に関わる筋肉をコントロールするなど幅広い役割を担っています。

麻痺が部分的か完全麻痺かによっても予後には差があります。治療を行う場合には神経の腫れを軽減する薬剤などを使用します。

主な症状

ベル麻痺を発症すると初期症状として耳の後ろに痛みを生じるケースが多いです。
さらに数時間の間に顔の片側の筋力が突然に低下します。筋力低下は完全な麻痺から比較的軽度なものまで程度はさまざまです。
発症から48~72時間後に症状が最も悪化するとされています。

顔面神経麻痺を発症すると顔の見た目は平たんな印象になり、無症状になる特徴があります。
ベル麻痺のように片側にのみ麻痺の症状が現れる場合には、正常な側の筋肉に麻痺している筋肉がひっぱられ、顔がねじれたような印象になる場合があります。
顔面にしびれや重さを感じることも多いです。

またベル麻痺を発症すると額にしわを寄せたり、顔をしかめたり、まばたきをすることが難しくなります。
眼を完全に閉じられなくなったり、眼を閉じると眼球が上方に回転するなども特徴的な症状と言えます。

顔面神経は唾液や涙の分泌にも関連しているため、眼や口腔の乾燥、よだれの増加、涙の分泌量が減ることによる眼の乾燥なども症状として現れます。
特に目の乾燥には痛みを生じるケースがあり、まれに重篤な状態に陥る場合があります。

主な原因

ベル麻痺は明らかな原因がなく急に発症する特発性の麻痺です。
ベル麻痺は顔面神経麻痺の中で最も高頻度に発症します。
しかし現在ではベル麻痺のすべてが原因不明という訳ではなく、循環障害による神経の腫れやヘルペスウイルスによる神経炎などが原因となっているケースが例として挙げられます。
中耳炎から生じている神経炎や、耳下腺の悪性腫瘍なども原因となる可能性があります。

ベル麻痺の原因として最も一般的なのが単純ヘルペスウイルス1型による感染症と帯状疱疹によるものです。
単純ヘルペスウイルス1型とは口唇ヘルペスに代表される口の感染症の原因となるウイルスです。
その他にはインフルエンザの原因ウイルス、サイトメガロウイルス、風疹などさまざまな感染症からベル麻痺を発症することがあります。
これらの感染症に感染したことで神経が腫れ、細い神経の通り道に圧迫されて症状が現れます。

ベル麻痺以外の顔面神経麻痺の場合、ライム病、腫瘍、頭蓋骨骨折などによって発症するケースもあります。

主な検査と診断

ベル麻痺は多くの場合、現れている症状に基づいて診断が行われます。
顔面神経麻痺の中でもその症状の現れ方にはそれぞれ特徴があり、その他の疾患と区別することも可能です。
例えば脳卒中による麻痺であれば眼を固く閉じたり、眉を寄せることができます。
片側の腕や脚に筋力低下が見られるという特徴もあります。
また、その他の顔面神経麻痺を引き起こす疾患の場合でも、麻痺が徐々に進行するなどベル麻痺とは異なる特徴があります。
ベル麻痺以外に原因となりうる疾患としては、ライム病、サルコイドーシス、糖尿病、腫瘍、頭蓋骨骨折などが挙げられます。

症状からベル麻痺であると判断ができない場合には、血液検査、X線検査、脳のMRI検査やCT検査の結果から診断を確定する場合もあります。
血液検査やX線検査ではライム病、サルコイドーシスの有無などを確認することができます。
これらの検査結果と症状から、他の原因である可能性を排除していくことで診断を確定することができます。

主な治療方法

ベル麻痺の治療は薬物療法を中心に行われます。
症状が現れて48時間以内の場合、コルチコステロイドを服用することで神経の腫れを軽減する効果が期待できます。
回復がやや速く、良好になる効果も期待できます。コルチコステロイドと同時に抗ウイルス薬が処方されるケースがありますが、ベル麻痺に対して抗ウイルス薬が果たす効果は不明となっています。例えば単純ヘルペスウイルスや帯状疱疹など原因となる感染症が明らかなものに対しての抗ウイルス薬であっても、その効果は明らかになっていません。

眼を乾燥から保護するために人工涙液や点眼薬なども用いられます。
点眼薬には生理食塩水が含まれており、眼を完全に閉じられない場合に眼の損傷のリスクを減らす目的で使用されます。
睡眠時に眼帯を装着する方法も目の乾燥保護のために効果的です。症状が特にひどい場合には上下のまぶたを縫い合わせる手術を行う場合もあります。

顔面の麻痺が部分的であれば多くの場合数カ月以内に回復しますが、完全な麻痺がある場合には回復がみられず顔の筋力低下が残るケースもあります。