口腔底がん

初診に適した診療科目

口腔底がんはどんな病気?

口腔底がんとは口腔がんの一種で、舌の裏側に接する部分である口腔底に発症する悪性腫瘍です。
口腔底の中心部分に発症することが多く、この場所には舌下腺、顎下腺の開口部があります。
その下部にも舌下神経、舌神経があるため手術によって大きく切除するのが難しい部位と言えます。
両側の頚部リンパ節への転移も多いのが特徴です。男女で見ると約4:1となっており、男性に多く発症する傾向があります。

口腔底がん以外の口腔がんの種類には、舌がん、歯肉がん、頬粘膜がん、硬口蓋がんなどが例として挙げられます。
中でも舌がんは口腔がんの半数を占める最も多くみられるがんです。

初期の段階では痛みや出血はあまりみられません。口腔底に代表される軟組織にがんを発症すると、周囲に固いしこりを伴う粘膜のただれ、欠損などが症状として現れます。口の中は自身で確認しやすい部位のため、症状の現れ方によって早期発見も可能です。自覚症状が無い場合、気づかれずに進行してしまうケースも少なくありません。

主な症状

口腔底がんを発症すると、痛みを伴わずに腫れるなどの症状が現れます。
進行するとしこり、腫れ、ただれ、出血、歯のぐらつきが症状として現れたり、病変部位が腐ることで悪臭を生じる場合もあります。
多くの場合、痛みを生じた段階ですでに進行しているケースが多いです。
特に口腔底部分に硬いしこりやなかなか完治しない口内炎があるという場合には注意が必要です。またその他の部位へ転移し、首のリンパ節の腫れや、転移先の臓器の機能障害などを引き起こします。

また口腔底がんはリンパ節転移が早期より発生しやすい点も特徴のひとつで、約半数の患者は初診時にすでにリンパ節へと転移しているとされています。口腔底がんの5年生存率は約70%~80%と言われています。初期症状の段階で治療ができれば比較的簡単な治療で完治する場合が多く、後遺症などもほぼ見られません。しかし手術による治療を行う段階では、舌やあごの骨の切除が必要になったり、その後の生活にも大きく影響を及ぼします。

主な原因

口腔底がんを発症する主な原因は入れ歯の使用と言われています。また喫煙、飲酒などの影響も重要視されています。入れ歯の場合、特に歯にあっていない入れ歯を使用していたり、被せものが破損した状態を放置していることによって口腔底に慢性的な刺激を生じることが原因となります。虫歯を治療せず放置したり、お口の清掃不良など口内環境の悪化が口腔底がんを引き起こす要因となります。

また喫煙は口腔がん全体で見た場合、最大のリスク要因となっています。喫煙者の口腔がんの発生率は喫煙をしない人と比べて約7倍、さらに死亡率は約4倍であるとする報告もあります。

喫煙に次ぐ要因として挙げられるのが飲酒です。特にリスクが高くなるのが飲酒中の喫煙と言えます。飲酒中に喫煙すると、たばこに含まれる発がん性物質がアルコールに溶けて口腔粘膜にダメージを与えます。特に50歳以上の男性で飲酒、喫煙の習慣がある人は注意が必要です。

口腔底がんの発症を予防するためには口腔環境を清潔に保ち、生活習慣を見直すことが重要です。

主な検査と診断

口腔底がんの診断には病理検査を中心にCT検査、MRI検査、PET検査、US検査、胸部X線検査、Gaシンチグラフィ、骨シンチグラフィ、上部消化管内視鏡検査、消化管造影検査など必要に応じてさまざまな検査が行われます。
病理検査では腫瘍の組織を採取して顕微鏡で確認することで診断を確定することができます。
原発部位の腫瘍や、転移先の部位を確認するために超音波検査などの画像検査が行われます。
腫瘍の大きさや位置、どの程度広がっているかなどを確認できます。PET検査は頚部にがんが転移している場合に行われる検査です。口腔底がんと同時に食道がんなどを発症しているケースも多いため、上部消化管内視鏡検査によって消化管の確認も行われます。また患者が痛みなどの症状を自覚している場合、すでに進行している状態であると考えられリンパ節への転移が疑われます。

検査結果をもとに口腔底がんがどのステージにあるのかを分類し、治療方法が検討されます。基本的には歯科口腔外科や耳鼻咽喉科で治療が行われる場合が多いです。

主な治療方法

口腔底がんの治療は手術療法、放射線療法、化学療法の3つを単独で行ったり組み合わせて治療が進められます。
治療開始前の検査によって組織型、部位、大きさ、悪性度などを正しく見極めて治療法が検討されます。

口腔底がんを手術によって切除する場合、初期の場合には特に効果の高い治療方法と言えます。
しかし口の一部を失うため機能障害や審美的な問題が残ります。これによって話しにくくなる、顔が変形するなどの症状が現れ、日常生活に影響があります。

抗がん剤による化学療法や放射線治療では、口内炎、白血球・血小板減少、口腔粘膜炎など副作用としてを生じることが多いです。
これによって痛みを生じ会話ができないというケースもあり、治療中の口腔内の環境は悪化すると言えます。

このように治療後は摂食、嚥下、発語に関する力が低下する傾向にあり、その対策としてリハビリテーションが行われます。また、口腔底がんを早期に発見するためにはセルフチェックや定期的な歯科検診が大切です。