パジェット病

初診に適した診療科目

パジェット病はどんな病気?

パジェット病とは皮膚にできるがんの一種です。
乳頭部に発症する乳房パジェット病と、主に外陰部、肛門の周囲、腋きの下に発症する乳房外パジェット病とに分類されます。
汗を産生する汗器官由来の細胞ががん化したり、周囲の臓器から生じたがんが広がることで発症します。
がん化した腫瘍細胞が表皮の中に留まらず真皮まで広がった状態をパジェット病としています。

乳房パジェット病は乳がんの一種とされており、ほぼ同じように扱われます。主に乳頭に発生しますが男性にも女性にもみられます。乳頭パジェット病の場合には皮膚が赤くなったりかさぶたができるなど皮膚炎のような症状が現れます。

乳房外パジェット病は60歳以上の高齢者に発症が多く陰部や腋などに発症するケースが特に多いです。

治療にあたっては、乳房パジェット病か乳房外パジェット病かに関わらず手術による病変部の切除が一般的です。他の臓器に転移が見られる場合には化学療法が行われます。

主な症状

パジェット病は、乳房パジェット病と乳房外パジェット病どちらもパジェット細胞というがん細胞が表皮に広がることが原因となって発症します。
発症に伴ってさまざまな皮膚の症状、かゆみや痛みを伴います。

乳房パジェット病の場合に現れる症状としては皮膚が赤くなる、じくじくとした状態になる、かさぶたができるなどが挙げられます。
境界がはっきりしているのが特徴で、かゆみ、痛みを伴うことも多いです。パジェット細胞は徐々に皮膚の表面に広がり、特に乳頭によく症状が現れます。

乳房外パジェット病の場合、湿疹やたむしによく似た症状が現れます。赤くて湿った病変で、いくつもの湿疹が集合したような見た目が特徴です。表面にかさぶたや痒みも生じます。皮膚は赤色の他に、白色や茶色の病変を生じることもあります。さらに進行すると病変に結節や腫瘤ができる場合があります。湿ってただれるとかゆみが出るため、触ったり掻いたりして出血するケースもありますが、大量出血には至りません。

主な原因

パジェット病を発症する原因は現在のところ完全には解明されていません。
一因としてはエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンに依存する細胞と関連していると考えられています。
その他にも加齢、物理的な刺激、遺伝的な要因などが関係しているとする説もあります。ひとつの要因で発症するというよりは、さまざまな要因が組み合わさり発症するという考え方が一般的です。

乳房パジェット病の場合、乳頭に近い乳管上皮から発生し、それが乳頭表面の皮膚にまで入り込み広がるもので、乳がんの特殊な種類と考えることもできます。
また乳房外パジェット病は鼠径部、陰部、肛門周辺などの皮膚の表皮の中にパジェット細胞が発生し、それが広がっていくことで発症します。
その部位にある汗腺から生じる場合や、膀胱、肛門、直腸など周囲の臓器から生じる場合があります。またほかの臓器のがんを合併する場合もあります。

パジェット病は手術による切除で治療される場合が多いですが、転移や再発もよく起こります。

主な検査と診断

パジェット病の診断には、問診、視診、生検などが行われます。
問診ではかゆみや痛みがあるかなど、自覚症状などについてを確認します。同時に皮膚症状を視診によって確認します。
パジェット病の症状は一般的な皮膚炎とよく似ており、問診や視診のみで診断をくだすことはできません。
湿疹、接触皮膚炎、カンジダ外陰炎などは特にパジェット病の症状と類似しています。

確定診断のためには生検を行う必要があります。病変の皮膚から少量の組織を採取して顕微鏡で詳しく観察することで細胞の性質を判断することができます。
この検査は痛みを伴うため局所麻酔などを用いて行われる場合が多いです。

診断が確定したら、他の部位への転移がないかを確認する必要があります。
進行具合の把握や術前検査として血液検査や画像検査などを含めた精密検査が行われます。
乳がん、大腸がん、直腸がん、子宮頸がんなどと併発している可能性もあるため、検査は全身に対して行われます。

主な治療方法

パジェット病の治療は原則として手術による切除が行われます。
特に病変が表皮内にとどまっている場合に有効で、病変の境目から健常な皮膚を含めて1~3cmほど空けて切除します。
実際の病変よりも欠損が大きくなることもあります。そのため同時に欠損部の再建手術も必要になるケースも多いです。
またレーザー療法によって腫瘍を切除する方法もあります。

乳頭パジェット病の場合は乳がんと同様に治療が行われます。乳頭と乳輪を外科的に切除する方法が一般的です。
外陰パジェット病の場合、病変が広範囲に及ぶと外陰部全体を切除する必要があります。

リンパ節転移が広く浸潤していたり臓器に転移が見られる場合、放射線治療や化学療法による治療も行われます。
化学療法では主に抗がん剤が用いられますが、抗がん剤のみでの使用はほぼなく、手術による治療の後に追加治療として行われる場合がほとんどです。
放射線治療や化学療法による治療は根本的な治癒には効果が期待できないとされています。