悪性胸膜中皮種

初診に適した診療科目

悪性胸膜中皮種はどんな病気?

悪性胸膜中皮種とは胸膜の中皮細胞から発生する悪性の腫瘍を指します。
肺は胸膜という膜に包まれています。この膜の表面をさらに覆っているのが中皮であり、中皮細胞のがん化により生じるのが悪性胸膜中皮腫です。
胸膜は二重の膜となっており、外側の胸壁を覆っている膜を壁側胸膜、内側の肺を覆っている膜を臓側胸膜と呼びます。
壁側胸膜の中皮細胞から発生した悪性胸膜中皮腫は、臓側胸膜に広がり、さらに周囲の組織やリンパ節、他の臓器にも広がり転移していきます。

悪性胸膜中皮腫ほとんどがアスベストの粉塵を吸い込んだことによって発症します。アスベストは天然の鉱物繊維であり、石綿とも呼ばれています。
かつては建設資材などとして幅広く使用されていました。
悪性胸膜中皮種はアスベスト(石綿)を扱う職業についていた方やアスベストを吸い込みやすい環境にいた方に多く発症が見られます。
現れる症状としては胸の痛み、咳、呼吸困難、圧迫感などがあります。

主な症状

悪性中皮腫を発症すると胸の痛み、咳、大量の胸水によって呼吸困難や胸部圧迫感などを生じます。
また、原因が分からない熱や体重減少が起こる場合もあります。これらの症状はその他のさまざまな疾患にも現れる症状で、特徴的な症状とは言えません。
初期段階は無症状であり、発見が遅れるケースも多い疾患です。
悪性中皮腫は胸膜だけでなく心膜、腹膜、精巣鞘膜などにも発生することがありますが、胸膜から発生する悪性中皮腫が最も多くみられます。男女で見ると男性に多いとされています。

アスベストに暴露してから悪性中皮腫の発症までには40年程度かかると言われており、比較的最近までアスベストを大量に消費してきた国では今後、さらに患者数が増加することと予想されています。アスベスト繊維は髪の毛の5000分の1と言われるほど非常に細かく、空気中にも浮遊しやすいという特徴があります。そのため本来であれば咳や痰、粘膜の働きによって排出されるものが体内に入り込み、症状を引き起こします。

主な原因

悪性中皮腫を発症する原因はアスベストの粉塵を吸い込むことによるものです。
アスベストは鉱石が繊維状になってできた天然の鉱物繊維です。
熱や薬品に強いという特徴があり綿状の性質で加工がしやすいため、以前は建設資材などに多く使用されていました。
それがアスベスト繊維を吸い込むと数十年経過してから中皮腫、肺がん、アスベスト肺などを引き起こすリスクが高いということが発覚し、現在では使用禁止となっています。非常に長い潜伏期間が悪性中皮腫の特徴ともいえます。

アスベストの粉塵を呼吸ともに吸入すると、体内で分解されることなく肺胞に溜まっていきます。
これが原因となって細胞を損傷し、平均して40年ほど経過してから悪性中皮腫を発症します。

悪性中皮腫を発症しやすい条件としててアスベストを扱う現場で働いていた人や、作業現場の近くに住んでいた人が挙げられます。
具体的には建設業や電気配線業、港湾労働に従事していった人などが挙げられます。

主な検査と診断

悪性中皮腫の診断には、問診、診察、胸部X線検査、胸部CT検査などが行われます。
特に問診では自覚症状や、これまでにアスベストの粉塵を吸い込む環境で働いていたり暮らしていた経験があるかなどについても確認します。
自覚症状がなく、健康診断の際の胸部X線検査で偶然に悪性中皮腫が発見されるケースも多いです。
画像で見られる所見としては、胸水が溜まっている、胸膜に腫瘤がある、胸膜が不規則に厚みを帯びているなどが特徴的です。
肺全体をつつみこむように広がる胸膜の肥厚、多数のしこり、多量の胸水などが確認できれば悪性中皮腫である可能性が高いと判断されます。

肺がんとの鑑別が難しい疾患としても知られており、このために胸に針を刺して腫瘍の細胞を採取してさらに詳しく調べたり、全身麻酔を用いて採取した組織による生検も必要に応じて行われます。これによって最終的には病理組織学的に診断を確定する場合も多いです。

また近年血液腫瘍マーカーとして承認された可溶性メソテリン関連ペプチドも診断に役立ちます。

主な治療方法

悪性中皮腫の治療は手術療法、 化学療法、放射線療法があり、症状に合わせて適した治療が行われます。
腫瘍が周囲に広がっていない場合には、手術療法によって腫瘍を切除する方法が一般的です。
片側の肺の全てを切除する胸膜肺全摘除術、胸膜を剥ぎ取る胸膜切除・肺剥皮術などの方法があります。
胸膜肺全摘除術は合併症のリスクもあり、手術後に片方の肺への負担が増加するリスクがあります。
そのため臓器機能がしっかりと保たれ、片肺でも生活に支障がないと判断された場合に行われます。

化学療法は主に他の治療を組み合わせて行われます。腫瘍が手術によって切除しきれない場合に抗がん剤を用いてがん細胞を攻撃することができます。
腫瘍が大きくなるのを防いだり、症状を緩和する効果が期待できます。

放射線療法は主に手術後の再発予防や痛みを軽減することを目的に行われることが多いです。
早期の段階では、手術と放射線療法を組み合わせることで治癒率が高くなるとされています。