本態性血小板増加症 ホンタイセイケッショウバンゾウカショウ

初診に適した診療科目

本態性血小板増加症はどんな病気?

本態性血小板増加症とは、血小板が過剰につくられ血液中の血小板の数が基準値を超えて増加している状態で、骨髄増殖性疾患の一種です。
これによって血液の凝固や出血に異常が現れます。50~70代の人や若い女性に多い傾向があります。

血小板は骨髄内で巨核球と呼ばれる細胞をもとに作られ、通常血液の中に含まれています。
血小板には血液が固まる力を助ける働きがあります。そのため血小板が過剰に作られると血栓ができやすくなったり、過剰な出血が起こる場合があります。

血小板が過剰に作られる血小板血症は、血小板を作る細胞の疾患によって生じる原発性のものと、血小板の生産の増加を誘発する疾患による二次性のものとに分類できます。
本態性血小板増加症は二つのうち原発性に当てはまるため原発性血小板血症とも呼ばれます。

治療には症状を和らげたり血小板を減少させる薬剤などが用いられます。まれに適合ドナーが見つかった場合には骨髄移植が行われるケースもあります。

主な症状

本態性血小板増加症を発症していても症状が特に現れない場合もあります。
また症状が現れた場合にはいずれかの部位に血栓を生じている場合が多いです。

手足の発赤や熱感、灼熱痛、指先や手足のチクチク感、胸痛、視力障害、飛蚊症、頭痛、脱力感、めまい、軽度の出血などが挙げられます。
血栓によって血管が塞がれることでこれらの症状が現れます。
軽度の出血には鼻血やあざができやすくなる、歯ぐきに血がにじむ、消化管からの出血などが含まれます。
まれに脾臓や肝臓に腫大がみられる場合がありますが、比較的軽度でこれによって症状が現れることはほとんどありません。

特に糖尿病や高血圧にかかっている高齢者の場合は合併症のリスクが高まるため注意が必要です。糖尿病や高血圧は血管の損傷を引き起こすリスクが高く、一過性脳虚血発作、脳卒中、心臓発作など命に関わる症状が合併症として現れる場合もあります。脳や心臓以外にも脚や肺などの比較的太い血管に血栓ができたり、眼、脳、皮膚など細い血管にできるケースもあります。

主な原因

本態性血小板増加症は遺伝子の突然変異を原因として発症します。ヤヌスキナーゼ2と呼ばれる遺伝子の異常では血球の生産が過剰になります。
本態性血小板増加症の患者の訳半数はこの遺伝子異常が認められます。
またトロンボポエチン受容体、カルレティキュリン遺伝子の異常の場合はヤヌスキナーゼ2の活性化を促すため、同様に血球の生産が増加する仕組みになっています。
一般的に血小板数は450,000/μLを超えると標準値を超えており、600,000/μLとなると特に血液疾患の可能性が高いと判断されます。
また、血小板がつくられる元となる巨核球と呼ばれる細胞の数が増加する点も特徴と言えます。

血栓に伴うさまざまな症状が現れますが、適切な治療が行われれば経過は良好であるケースがほとんどです。
反対に動脈や静脈に重篤な血栓を生じた場合、命に関わる可能性もあります。
またごくまれに白血病へ移行する患者も見られます。また血栓症のリスクは血小板の数とは比例しないことも明らかになっています。
 

主な検査と診断

本態性血小板増加症の診断には血液検査、遺伝子検査、骨髄生検などが行われます。
また現れる症状や自覚症状から可能性が疑われるケースも多いです。

遺伝子検査を含めた血液検査では血小板の増加について確認することができます。
顕微鏡でより詳しく観察すると血小板が凝集していたり異常に大きいなどの通常とは異なるものが発見されるケースも多いです。
巨核球の破片なども見られます。定期健診などの血液検査で血小板の増加が指摘されて発見されることも多いです。

骨髄生検とは骨髄組織を採取して顕微鏡で観察する検査ですが、これによって原発性の血小板血症と二次性の血小板血症を判別することを目的に行われます。
その他にも細胞の遺伝子検査から血小板数を増加させるような別の疾患が見つけるケースもあります。
本態性血小板増加症の診断には、二次性血小板血症である可能性を除外することが重要です。
二次性血小板血症を発症する要因となる疾患には関節リウマチ、炎症性腸疾患、結核などの慢性炎症性疾患などが挙げられます。

主な治療方法

本態性血小板増加症の治療は主に薬物療法によるものが一般的です。
治療が行われるのは基本的に血栓や出血などの合併症が見られた場合です。
血小板の数が過剰な状態であっても特に症状がない場合には経過観察となることも多いです。

軽度の症状や頭痛の軽減ににはアスピリンと呼ばれる薬剤が投与されます。アスピリンには主に血小板の粘稠度を弱める働きがあります。
これによって血小板が固まりにくくなり血小板が増加するのを防ぎます。大量出血がある場合にはアスピリンを使用しないよう注意する必要があります。

血小板生産を低下させる薬としてはヒドロキシカルバミド、アナグレリド、インターフェロンアルファなどが挙げられます。

また症状が重篤で緊急を要し、これらの薬物療法では効果が見られなかった場合には血小板採血と呼ばれる方法も検討されます。
血小板採血は体から血液を抜き出して血液の中から血小板のみを取り出し、再度血液を体の中に戻す方法です。これは一時的な治療であり、根本的な治療とは言えません。
また骨髄移植は患者が若く、適合ドナーが見つかった場合に行われます。