薬剤起因性顆粒球減少症

薬剤起因性顆粒球減少症はどんな病気?

薬剤起因性顆粒球減少症とは、血液中の特に白血球に含まれる顆粒球と呼ばれる成分が減少する疾患です。
主に薬剤の副作用によって発症する場合、薬剤起因性顆粒球減少症と呼ばれます。

顆粒球は顆粒を成分として含む白血球の総称で、好中球、好酸球、塩基球の3つの種類があります。
顆粒球減少症ではその中でも好中球が減少する傾向があることから好中球減少症とも呼ばれます。
この好中球は血液中にあるすべての白血球の約半数以上を占めており、細菌感染や真菌感染から体を守る役割を果たしています。
そのため好中球が減少したり無くなったりすると感染症によって死に至るリスクが高まります。

薬の副作用によって顆粒球減少症を発症する場合、がん治療(化学療法)に用いられる薬剤などで起こりやすいとされていますが、本来は白血球を減らす副作用はない薬によるケースも多くみられます。これらの薬が好中球をつくる骨髄の働きを障害することで発症します。

主な症状

薬剤起因性顆粒球減少症を発症すると38度以上の発熱、発疹、リンパ節の腫れ、のどの痛みなどが症状として現れます。
一般的に風邪によく似た症状が特徴と言えます。薬剤起因性顆粒球減少症によって感染症を発症した場合にこれらの症状が現れます。
一般的に顆粒球減少症そのものには症状がないとされています。
そのため感染が頻繁に起こるまで見逃されているケースも多いです。

薬剤起因性顆粒球減少症における症状の現れ方は薬剤や個人差があり、使用し始めて1週間~2ヶ月間ほどの間に発症する場合が多いとされています。
そのためこの期間は2週間ほどを目安に定期的な血液検査を行うことで副作用の有無を注意深く観察する必要があります。
また、副作用の原因となる薬剤を使用する頻度が低い場合、通常発症しやすいとされる期間以降に症状が現れる場合もあります。

また症状が現れるかどうかは投与量には関連しません。
特に甲状腺機能亢進症、胃潰瘍、不整脈に関する薬剤には副作用として顆粒球減少症を発症しやすいものが多いため体調の変化に特に注意が必要です。

主な原因

薬剤起因性顆粒球減少症の原因はさまざなま疾患の治療で用いられる薬剤の副作用によるものです。
例えば甲状腺機能亢進症で用いられる薬剤の場合、好中球の急激な消費や破壊が見られる傾向があります。
好中球が骨髄でつくられるよりも早く消費されたり破壊されるため、常に好中球が不足した状態に陥ります。
具体的な例としては抗甲状腺剤メルカゾールなどが挙げられます。この薬剤の場合、飲み始めてから2ヵ月の間に症状が現れるケースが多いとされています。

一方抗がん剤による副作用の場合は、抗がん剤が好中球を作る骨髄の働きを止めてしまうことで好中球が不足します。これは抗がん剤にはがん細胞の増殖を止める働きがあり、それと同時に正常な細胞の増殖を止めてしまうためです。抗がん剤の場合、投与から約1~2週間で好中球の数が最も減少するとされています。

好中球が減少する期間が長いほど感染症にかかるリスクが高くなります。定期的な血液検査と細菌や真菌に対する感染症対策が重要です。

主な検査と診断

薬剤起因性顆粒球減少症の診断には血液検査が行われます。
特に薬剤の使用を始めてから感染症の症状が現れた場合には薬剤起因性顆粒球減少症が疑われます。
感染を何度も繰り返したり、通常ではかかりにくい感染症にかかった場合などには特に疑いが強くなります。血液検査によって好中球の数を確認します。

血液検査によって好中球の減少が確認できたら、薬剤だけでなく有害物質や感染症が原因となっている可能性も含めて原因を特定します。
必要に応じて骨髄検査が行われます。
骨髄の組織を詳しく観察すると組織の形、好中球幹細胞の数、成熟や増殖が正常かなどを確認できます。骨髄検査によって原因となっている感染症が見つかる場合もあります。

その他にも尿検査、尿培養検査、血液培養検査、胸部X線検査など、特に患者が異常を訴えていない箇所も含めて全身くまなく検査するケースも多いです。
これは薬剤起因性顆粒球減少症の場合、典型的な症状と診察所見がすべてのケースに現れるとは言えないためです。

主な治療方法

薬剤起因性顆粒球減少症の治療は、軽度の場合は一般的に症状がなく、治療の必要もないケースが多いです。
また中度であれば原因となっている薬剤の使用を中止することで症状が改善され、自然に回復するケースもあります。
薬剤起因性顆粒球減少症が重度である場合には速やかに薬剤の使用を中止することに加え、強い抗菌薬が使用されます。
薬剤の使用を中止する他、発症している感染症に対しても治療が行われます。回復が早ければ約2週間ほどで回復するケースが多いです。

通常ではあまり重症にならない感染症でも薬剤起因性顆粒球減少症を発症し、免疫が低下した状態では命に関わるリスクもあります。
感染によって全身に炎症反応が広がる敗血症や肺炎などが例として挙げられます。敗血症を発症すると発熱、心拍数や呼吸数の増加、意識障害なども見られます。

感染症予防のためには手洗いや口腔ケアの継続が効果的です。
十分な休息と睡眠、栄養補給によって免疫が低下している状態でも心の健康を保つことも重要です。

薬剤起因性顆粒球減少症の初診に適した診療科目