副甲状腺腺腫 フクコウジョウセンセンシュ

初診に適した診療科目

副甲状腺腺腫はどんな病気?

副甲状腺腺腫とは副甲状腺の中に生じる良性腫瘍の一種です。
副甲状腺は甲状腺近くにある米粒ほどの小さな臓器です。甲状腺を囲むように4つの副甲状腺が存在します。
副甲状腺は主に副甲状腺ホルモンの分泌に関わっており、これによって血液の中のカルシウムの濃度を調節する役割を果たしています。
また、腺腫とは腺細胞と呼ばれる細胞が増殖してできた腫瘍ですが、悪性腫瘍とは異なり組織を破壊しながら浸潤したり、他の臓器に転移したりすることはないとされています。
腺腫の場合、細胞が比較的緩やかに増殖する点も特徴です。急激に大きくなったり、壊死を伴うケースもほとんどありません。

副甲状腺に腺腫が生じると副甲状腺ホルモンの分泌過剰が起こります。
副甲状腺の中の一つで生じることもあれば、複数の副甲状腺で生じるケースもあります。これによって引き起こされる疾患が原発性副甲状腺機能亢進症です。

副甲状腺腺腫を生じた場合、原発性副甲状腺機能亢進症を引き起こすことで疲れやすい、注意力が散漫になるなどの症状や、精神的な症状、カルシウムの濃度に影響を及ぼすことで骨に異常を来す場合もあります。

主な症状

副甲状腺腺腫を発症すると副甲状腺ホルモンが過剰になることで副甲状腺機能亢進症を引き起こし、伴ったさまざまな症状が現れます。
一般的に副甲状腺機能亢進症の症状は変化が微細で分かりにくいとも言われています。

初期段階で現れる症状としては疲れやすくなる、注意力が散漫になる、ぼーっとしていることが増える、いらいら感を感じるなどが挙げられます。
これらの症状は本人も気分の問題であると軽視してしまい、受診が遅れてしまうケースも少なくありません。
また、症状が進行すると多尿、多飲、膵炎、血圧上昇なども症状として現れます。
重篤な場合、意識障害が現れることもありますがこれは副甲状腺がカルシウムの濃度の調節を行う役割を果たしているためです。カルシウムの濃度が異常に高くなった場合には意識障害のリスクも高くなるといえます。

カルシウム代謝の影響から骨に何らかの影響が現れるケースも多く見られます。関節痛や腰痛、骨痛、骨変形、病的骨折などさまざまな形で症状が現れます。

主な原因

副甲状腺腺腫ができる原因は現在のところ明らかになっていません。
腺腫は一般的に正常な腺上皮細胞に変異が生じて腫瘍化するものです。1つの副甲状腺から生じるものと、まれに2つの副甲状腺から生じるものもがあります。
副甲状腺腺腫を原因として発症する副甲状腺腺腫は原発性副甲状腺機能亢進症と呼ばれ、副甲状腺そのものに異常があることを指します。
また副甲状腺に生じる腫瘍が悪性であった場合、腺腫ではなく副甲状腺がんと呼ばれますが、割合は約1~5%と言われておりごくまれなケースです。

副甲状腺腺腫ができるとと副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、血液中のカルシウムが常時高い状態になります。
これによって原発性副甲状腺機能亢進症を発症します。
副甲状腺機能亢進症を発症する原因としては腺腫以外にも多発性内分泌腫瘍症など遺伝子異常に関わる疾患も例として挙げられます。
多発性内分泌腫瘍症は複数の内分泌臓器、非内分泌臓器に良性か悪性かを問わず腫瘍が多発する疾患で、病変の一つに副甲状腺機能亢進症が含まれます。

主な検査と診断

副甲状腺腺腫の診断には問診、触診、採血検査、超音波検査、下穿刺吸引細胞診、CT検査、MRI検査、PET検査などが行われます。
一般的には副甲状腺機能亢進症の症状が現れて受診に至るケースや、健康診断などから異常が見つかって発見されるケースが多いです。

問診によって自覚症状を確認したり、触診によって首の腫れなどを確認することも重要です。
血液検査ではペプチドホルモンの過剰分泌がないかを確認します。
この特徴がみられた場合、どの副甲状腺が原因となっているか特定するためにCT検査、MRI検査などの画像検査が行われます。
超音波検査によっても腺腫の有無が確認できます。皮膚の上から針を刺して組織を採取し、細胞をより詳しく調べる下穿刺吸引細胞診などの方法も必要に応じて検討されます。
悪性の腫瘍が疑われる場合には特に細胞診やCT検査、MRI検査、PET検査などが重要な検査に挙げられます。

副甲状腺機能亢進症の検査としてこれらに加えてシンチグラフィと呼ばれる検査が行われる場合もあります。これは副甲状腺の位置や異所性副甲状腺がないかを確認できます。

主な治療方法

副甲状腺腺腫の治療は手術によって腺腫を摘出する方法が一般的です。
副甲状腺ホルモンを過剰に産生している腺腫を取り除くことで症状の改善が期待できます。
良性腫瘍であるため、ほとんどの場合は手術によって完治します。
多くの場合は1つの副甲状腺腺腫の摘出で治療が完了しますが、まれに複数の副甲状腺で腺腫が見られる場合、すべて摘出する必要があります。
手術は多くの場合入院し、全身麻酔下で行われることが多いですが、腺腫ができている部位や症状によっては局所麻酔によって日帰り手術が可能なケースもあります。

具体的な方法としては、通常は頚部を横に切開する方法が一般的です。
ロボット手術による腋窩からアプローチする方法や、内視鏡手術による前胸部からアプローチする方法などもあります。

副甲状腺腺腫は良性腫瘍であることから経過を観察しながら徐々に治療を行うことも可能ですが高カルシウム血症が異常に高い場合やがんを疑われる場合には早期に治療を開始する必要があります。