偽痛風 ギツウフウ

初診に適した診療科目

偽痛風はどんな病気?

痛風とは、ピロリン酸カルシウム(CPPD)と呼ばれる物質が軟骨に沈着して起こる関節炎の一種で、ピロリン酸カルシウム結晶沈着症とも呼ばれています。
高齢者に見られることが多く、発症の頻度に男女差はありません。発作の現れ方が痛風と似ているためこの名称がつけられました。

膝、手首など大きな関節に発症する痛みが特徴で、痛みは突然生じる場合が多いです。
関節の痛みや腫れ、赤みなどが数日にわたって現れます。長引く慢性の痛みやこわばりにような関節リウマチなどに似た症状が現れる場合もあります。

ピロリン酸カルシウム二水和物の結晶が発生するメカニズムは解明されていないものの、関節の損傷がある場合や痛風患者、臓器や組織にタンパクが蓄積している場合などが発生しやすい条件として挙げられています。

治療は痛みを緩和する対処療法が中心となり、ほとんどの場合は予後も良好ですが、日常生活に障害があるような場合には人工膝関節置換術などの手術も検討されます。

主な症状

偽痛風を発症するとピロリン酸とカルシウムは軟骨内でピロリン酸結晶を形成し、軟骨変性や炎症を起こします。
偽痛風の症状は痛風とよく似ており、関節に突然痛みを生じることがあります。
関節の腫れや赤みも現れます。痛風の場合、これらの症状が現れる前兆として患部に違和感を感じたり、むずむずした感覚を覚える場合が多いですが偽痛風ではこのような前兆は現れません。
痛みは一般的に2~3日程度続き、症状が鎮静化するには1~2週間ほどかかる場合がほとんどです。
発作の頻度は年に一回程度であったり、あまり頻繁には起こらないとされています。
発作と発作の間は痛みを感じないケースや痛みをまったく生じないケースもあり痛みには個人差があります。また発熱を伴うこともあります。

偽痛風の痛みは特に大きな関節に現れます。膝関節や首に生じることがあり、中でも首に痛みを生じると首が回らなくなる場合もあります。
長引く慢性の痛みやこわばりが現れる場合もあり、特に腕や脚の関節に多い傾向があります。慢性の痛みは関節リウマチや変形性関節症ともよく似ています。

主な原因

偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶が関節内に大量に付着することで起こります。
ピロリン酸カルシウムは関節内の軟骨で作られるもので、何らかのきっかけにより過剰に沈着します。
痛風の原因となるのは尿酸結晶であり、その点が痛風とは異なる点です。偽痛風は変形性関節症に関連して発症する可能性も指摘されています。

ピロリン酸カルシウム二水和物の結晶ができる人に多い特徴としては血液中のカルシウム濃度が高い副甲状腺機能亢進症、組織中の鉄濃度が高いヘモクロマトーシス、血液中のマグネシウム濃度が低い低マグネシウム血症、低リン血症などを発症しているなどが挙げられます。しかし偽痛風の患者にはこれらの条件に当てはまらない人も多く見られます。
また、ピロリン酸カルシウム二水和物の結晶が一部の人にのみ作られる明確な理由は現在のところ解明されていません。

関節への外傷、肺炎、心筋梗塞などの体へのダメージ全般が発作を引き起こすきっかけになります。遺伝的な要因や高齢であることも関係しているとされています。

主な検査と診断

偽痛風の診断には関節液の顕微鏡検査、X線検査、超音波検査、血液検査などが行われます。
偽痛風は関節に腫れ、熱、痛みなどを生じ、患者が高齢である場合に特に疑われます。
問診や診察から偽痛風の可能性が高いと判断された場合、関節液の顕微鏡検査が行われます。
この顕微鏡検査では、まず関節に針を刺して関節液のサンプルを採取します。
採取した関節液を顕微鏡で観察し、ピロリン酸カルシウム二水和物結晶が確認できれば確定診断となります。
偏光顕微鏡と呼ばれる機器を用いて確認すると痛風の原因である尿酸結晶との違いを判別することができます。
基本的に確定診断を行うことができるのは顕微鏡検査の結果による場合のみです。

関節液が採取できない場合に行われるのがX線検査です。X線検査では関節の軟骨に結晶を確認することができます。
さらに関節の超音波検査も併せて行い、X線検査と同様に関節の軟骨に結晶が確認されれば偽痛風である可能性が高いと判断されます。

また痛みの発作を生じた場合には血液検査が行われます。血液検査では白血球の上昇などから炎症の程度を判断することができます。

主な治療方法

偽痛風の治療は炎症に対する対処療法が中心となります。痛みが激しい場合、鎮痛剤を用いて痛みを緩和したり、関節の炎症が激しい場合には関節に針を刺し、関節液を排出しステロイド剤を注入する方法が行われます。これは炎症を抑えることを目的とした治療方法です。

全身性の炎症反応が現れている場合、ステロイド薬の全身投与も検討されます。
これは複数の関節が炎症を起こしている場合にも行われることがあります。

また適度な運動によって膝まわりの筋肉を鍛える方法も効果的です。
偽痛風は特に高齢者の発症が多く、変形性関節症を合併しているケースも多く見られます。

また痛みなどの症状が現れていないにも関わらず関節の変形をっ生じるケースがあります。
このような場合には関節内を洗浄してピロリン酸カルシウム結晶を摘出する方法があります。
気がつかないうちに進行が進み、日常生活に影響が及ぶほど関節の変形が進んだ場合には人工膝関節置換術などの外科的手術も検討されます。