末端肥大症 マッタンヒダイショウ

初診に適した診療科目

末端肥大症はどんな病気?

末端肥大症とは、脳下垂体前葉から分泌される成長ホルモンが持続的に過剰分泌することによって手足が肥大などが見られる慢性疾患です。
100万人に3~5人の割合で発症し、40~65歳頃に発症する人が多い傾向があります。

成長ホルモンは人体の成長を促進させる役割を果たしています。
そのため分泌が多すぎると発育期においては骨格が全体的に成長し身長が異常に伸びる巨人症や、成長が止まった成人においては末端肥大症を発症するケースがあります。
脳下垂体に腫瘍ができることで起こる場合がほとんどです。
症状は比較的穏やかに進行し、発症に気が付かない場合もあります。診断されるまでに数年を要することも少なくありません。

骨の節々が肥大したり軟部組織も厚くなるため眼窩上部や顎の突出、口唇や鼻の肥大などが現れて顔つきも特徴的になります。
またこれらの外見的な症状以外にも高血圧や糖尿病を引き起こす可能性もあります。

手術療法、薬物療法、放射線療法などによる治療が選択肢として挙げられます。

主な症状

末端肥大症の特徴的な症状としては鼻や耳、唇が大きく肥大し、眉部が膨らんだり、下顎が突出したりして、顔の形が変わってくることが挙げられます。
こうした顔つきの変化は患者の心理的なストレスにもなります。
また下顎の出っ張ることでかみ合わせが悪化したり、舌が肥大することで睡眠時無呼吸症候群を発症する場合もあります。

成長ホルモンには血糖を低下させるインスリンの働きを弱めたり、腎臓での水や塩分の再吸収を過剰にさせる作用があるため代謝に異常を来たすことがあります。
この作用によって糖尿病、高血圧、脂質異常症などを発症します。
その他にも心肥大や慢性呼吸不全に代表される循環器や呼吸器疾患の合併症も多いのが特徴です。
また心血管障害を発症するリスクが高まることで、通常と比較して寿命が10年程度短くなるとされています。

上記に加えて頭痛、視野狭窄、声が低くなる、汗をかきやすくなる、月経不順、授乳時以外の母乳分泌など幅広い症状が現れます。

主な原因

末端肥大症を発症する原因のほとんどは成長ホルモン産生下垂体腺腫と呼ばれる脳下垂体にできる良性腫瘍によるものです。
この腫瘍が成長ホルモンの異常分泌を引き起こします。
特に長期間に渡って継続的に成長ホルモンが分泌された場合に末端肥大症を発症します。
末端肥大症全体のうち、約99%が良性の脳下垂体腫瘍が原因で発症すると言われています。

脳下垂体は成長ホルモンだけでなく体温や血圧、血糖を調節する副腎皮質刺激ホルモン、乳腺の発育や妊娠に関わるプロラクチン、甲状腺刺激ホルモンなどさまざまなホルモン分泌を調整する役割を担っています。
脳下垂体に腫瘍ができるとホルモン分泌に大きな影響を及ぼし、末端肥大症などを発症します。

また、膵臓や肺にできた腫瘍から分泌されるホルモンが影響している場合もあります。
このホルモンが下垂体に影響を与え、結果として成長ホルモンの過剰分泌につながるものです。

末端肥大症で見られる症状は多岐に渡りますが、腫瘍そのものの影響で現れる症状と、ホルモンの過剰分泌によて現れる症状とに分けられます。

主な検査と診断

末端肥大症の診断にはまず問診や診察によって特徴的な手足の肥大や顔つきの変化、頭痛や月経異常などに代表される自覚症状について確認します。
子どもの場合は高身長も典型的な特徴と言えます。
末端肥大症は外見的な特徴もはっきりと見られるため、問診や診察の時点で末端肥大症が疑われる場合も多いです。

さらに血液検査を行うことで成長ホルモンの分泌が過剰になっていないかを確認します。
この際に成長ホルモン(GH)とインスリン様成長因子-1(IGF-1)に注目して行われ、どちらも数値が高い場合に診断が確定します。

頭部のMRI検査やCT検査などの画像検査も行われます。
これは下垂体の腫瘍の有無や位置、大きさなどを確認する目的で行われるものです。

血液検査や画像検査の結果を見ても確定診断に至らない場合にはブドウ糖などの成長ホルモン濃度を抑える物質を投与して反応を確かめる方法もあります。
この際に抑制が起こらなければ末端肥大症である可能性が極めて高いと言えます。

主な治療方法

末端肥大症の治療の場合、多くは手術によって下垂体にできた腫瘍の切除を行います。
手術用顕微鏡や内視鏡を用いて鼻孔から腫瘍を取り出すハーディー手術と呼ばれる方法が一般的です。鼻腔を通らないほど腫瘍が大きい場合には開頭手術も検討されます。

原因となる腫瘍が切除できれば多くの場合、成長ホルモンの過剰分泌が安定します。
肥大した軟部組織も落ち着き、高血圧や糖尿病、視野障害なども改善することが多いです。

手術を行っても症状の改善が見られない場合には薬物療法や放射線治療も追加して行われます。
放射線治療は腫瘍にピンポイントで照射できるガンマナイフやサイバーナイフなどが有効です。
高血圧や糖尿病などの合併症に対しては症状に応じた治療も必要です。

末端肥大症は初期の段階で適切な治療が行われれば症状に改善が見られ、大きな支障なく日常生活を送れるケースがほとんどです。
一方で治療が行われず長年に渡って放置されていた場合にはさまざまな合併症を引き起こすリスクが高くなります。