ステロイド糖尿病

初診に適した診療科目

ステロイド糖尿病はどんな病気?

ステロイド糖尿病とは、病気などの治療の目的にステロイドを長期にわたって使用した為に起こる糖尿病のことです。
ステロイドには内服薬、外用薬、吸入薬、注射薬などの形があり、いずれの方法で投与された場合でも発症する可能性があります。

ステロイドは副腎副腎皮質ホルモンの一種で、ステロイド薬には抗炎症作用、免疫抑制作用があります。
そのため膠原病、ネフローゼ、関節リウマチ、重い喘息、ひどいアレルギー症状などさまざまな疾患に対して使用されています。
ステロイド薬の主な成分はグルココルチコイドと呼ばれるホルモンで、グルココルチコイドの働きの中にインスリンに対する感受性を低下させるというものがあります。
この働きによってステロイド薬を使用した際、血糖値を上昇さし、高血糖となる場合があります。その結果糖尿病を悪化させるという副作用のリスクがあります。

治療のためには適切な血糖コントロールを行い、合併症を引き起こさないように注意する必要があります。

主な症状

ステロイド糖尿病を発症した場合、その他の糖尿病と同様に自覚症状がないことがほとんどです。
喉の渇き、尿量の増加、倦怠感、体重減少などが症状として現れるケースもありますが、この場合症状が進行していると考えられます。

血糖値が高い状態が続くことで目や腎臓、神経に血液が流れにくくなり網膜症、腎不全、末梢神経障害を引き起こす場合があります。
この3つの合併症は糖尿病に最もよく見られる合併症として三大合併症と呼ばれています。これらは高血糖が続くことで血液中にブドウ糖が増え、血管を傷つけることから起こるとされています。

また糖尿病を発症している場合、心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクも高くなります。
免疫力が低下することから感染症にかかりやすくなったり肺炎や尿路感染症などが回復しずらく命に関わることもあります。

ステロイド糖尿病の場合、初期であればステロイドの使用を中止することで改善がみられる場合がありますが、高血糖状態が続いていた場合にはステロイドの使用を中止しても糖尿病が残るケースもあります。

主な原因

ステロイド糖尿病は長期にわたって、ステロイド薬を使用したことが原因で引き起こされます。
ステロイドが持つ血糖値を上昇させる作用や末梢神経のインスリン抵抗性の亢進、食欲の増進作用もステロイド糖尿病の原因となるといわれています。

長期にわたってステロイド薬を使用している人や高齢者、肥満、家族に糖尿病の人がいるなどの条件に当てはまる場合には特に糖尿病の発症リスクが高まるとされています。
これらの条件は生活習慣の乱れによって発症する2型糖尿病の原因とも一致するものです。
このような患者に対してステロイド薬を使用する場合には、投与前後に慎重に経過観察を行う必要があります。

またステロイド薬には内服薬以外にもさまざまな形があり、患者本人が投与に気が付いていないケースも多くあります。
特に外用薬、関節内注射などがそれらの例として挙げられます。

ステロイド糖尿病は通常遺伝性はないとされていますがステロイド糖尿病は2型糖尿病の家族歴がある場合発症しやすいとされています。
体質的な発症のしやすさにやや影響を与えていると考えられます。

主な検査と診断

ステロイド糖尿病の診断は問診や血液検査によって行われます。採血を行ってHbA1c、食後の血糖値、尿糖の数値を確認することで早期に診断が可能です。
HbA1cとは過去1~2か月の血糖値の状態を反映してくれる値です。

経口ブドウ糖負荷試験と呼ばれる検査方法は糖分が含まれた飲料を摂取した前後の血糖値の変化を調べるものです。
糖尿病の確定診断に用いられる検査の一つです。この検査で空腹時の血糖値が高い、摂取後の血糖値が下がりにくいなどの特徴がみられると糖尿病と診断されます。

またステロイド薬を用いた治療中には尿糖、食後血糖値、HbA1c、グリコアルブミン(GA)、1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)などの数値を観察し、血糖変動を定期的な検査で確認することも重要です。

そのため早期発見には健康診断などの定期的な検診を受けることも重要です。ステロイド糖尿病はその他の糖尿病と同じく、初期にはほとんど症状が現れません。

主な治療方法

ステロイド糖尿病の治療も、基本的には食事療法と運動療法によって行われ、改善しなければ経口血糖降下薬、インスリン療法などの方法が検討されます。
多くの場合はまず経口血糖降下薬による治療を行い、効果がみられなければインスリン療法に切り替えます。
初期の場合にはステロイド薬の使用を中止することで改善がみられるケースもありますが、中止をしても糖尿病が残ることも多いです。

経口血糖降下薬にはα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI),DPP-4阻害薬,速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬),GLP-1受容体作動薬などが例として挙げられ、これらの内服薬と食事、運動などの生活習慣の改善によって血糖コントロールを行います。

インスリン療法とは自己注射によって不足しているインスリンを補う方法です。早朝空腹時の血糖が低い、食後の血糖が高いなどがステロイド糖尿病の特徴であるためこれに合わせてインスリン量を調節します。

血糖コントロールをうまく行うことができれば症状を抑えながら日常生活を送ることが期待できます。