リポアトロフィックディアベテス(脂肪萎縮性糖尿病) リポアトロフィックディアベテス シボウイシュクセイトウニョウビョウ

初診に適した診療科目

リポアトロフィックディアベテス(脂肪萎縮性糖尿病)はどんな病気?

リポアトロフィックディアベテス(脂肪萎縮性糖尿病)とは皮下脂肪や内臓脂肪などの脂肪組織が減少したり消失する脂肪萎縮症と呼ばれる疾患に合併する糖尿病を指します。
特に強いインスリン抵抗性がみられる点が特徴です。
高トリグリド血症、脂肪肝などの糖脂質代謝異常も同時にみられます。約100万人に1人の確率で発症するとされています。

脂肪萎縮症は遺伝子異常によって生まれつき先天性や家族性によって発症している場合や後天性の場合は自己免疫異常などが原因として挙げられます。
体全身の脂肪組織が減少、消失するタイプと四肢の皮下脂肪に限られた減少、消失がみられるタイプとがあります。
これらの原因から先天性全身性脂肪萎縮症、家族性部分性脂肪萎縮症、後天性全身性脂肪萎縮症、後天性部分性脂肪萎縮症の4つに分類されています。

脂肪萎縮症を発症すると伴って糖脂質代謝異常も見られます。糖尿病や高中性脂肪血症、脂肪肝などが例として挙げられますが、この中でも強いインスリン抵抗性を示す脂肪萎縮性糖尿病は予後を左右する疾患と言えます。

主な症状

リポアトロフィックディアベテス(脂肪萎縮性糖尿病)を発症すると脂肪萎縮症によって現れる症状と同様の症状が現れます。
全身もしくは四肢の脂肪萎縮は代表的な症状です。
もとにある脂肪萎縮症が先天性の場合には生後すぐに全身性の脂肪組織消失と肝腫大の症状が現れます。
首やわきの下、鼠径部などの皮膚が黒く変色したり皮膚に厚みが増す黒色表皮腫も見られます。
10歳頃になると糖尿病も徐々に表れ始めます。女性の場合には多毛症や月経異常も特徴的な症状と言えます。
多嚢胞性卵巣を発症する場合も多く見られます。糖尿病における特徴的な症状としては強いインスリン抵抗性を伴う高血糖が挙げられます。

脂肪萎縮症が後天性である場合には小児期頃から脂肪組織消失がみられるようになります。
同じく脂肪肝や糖尿病、高トリグリセリド血症などの合併症も生じます。
後天性でかつ部分性の脂肪萎縮症の場合に限っては糖脂質代謝異常の症状は比較的軽度であるとされています。

主な原因

リポアトロフィックディアベテス(脂肪萎縮性糖尿病)は脂肪萎縮症に伴って発症します。
脂肪萎縮症を発症すると脂肪組織から分泌されるレプチンと呼ばれる物質が欠乏した状態になります。
このレプチンが不足することが原因となって、糖尿病に代表される糖脂質代謝異常が起きるとされています。

脂肪萎縮症を発症する原因としては遺伝子異常、自己免疫異常、ウイルス感染、薬剤などが代表的なものです。
先天性の脂肪萎縮症に関しては特にBSCL2、AGPAT2、CAV1、PTRFなどの種類の遺伝子の異常が原因として考えられています。後天性でかつ全身性の脂肪萎縮症の場合は皮下脂肪織炎、若年性皮膚筋炎、若年性関節リウマチなどが原因として挙げられます。後天性の場合、自己免疫異常による発症がほとんどを占めます。

脂肪萎縮症の原因となる遺伝子異常については研究が進んでおり、近年でも特定が進みつつありますが、現在のところ脂肪萎縮がどのようにして起こるのかというメカニズムは明らかになっていないものが多いです。

主な検査と診断

リポアトロフィックディアベテス(脂肪萎縮性糖尿病)の診断においては、まず糖尿病であることを確定させ、発症原因を調べることによって診断される流れが多いです。

糖尿病の診断には血液検査、経口ブドウ糖負荷試験などが行われます。血液検査では血糖値、インスリンの分泌能力や抗体の有無などを確認します。
経口ブドウ糖負荷試験とは糖分が含まれた飲料を摂取しして摂取前後の血糖値を比較測定する検査方法です。
糖尿病であれば空腹時の血糖値が高くなる、摂取後の血糖値が下がりにくいなどの特徴が確認できます。
糖尿病の診断が確定すると、伴う合併症の検査が必ず行われます。

これらの検査結果で糖尿病を診断され、脂肪萎縮症を伴う場合にはリポアトロフィックディアベテス(脂肪萎縮性糖尿病)である可能性が疑われます。
さらに強いインスリン抵抗性があり、血中レプチン濃度が低い、特徴的な遺伝子異常などが認められると診断が確定します。そのため必要に応じて遺伝子検査なども行われます。

主な治療方法

リポアトロフィックディアベテス(脂肪萎縮性糖尿病)の治療はレプチン補充療法と呼ばれる方法が代表的な方法と言えます。
レプチンとは脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種で食欲を抑制させる働きをもつ物質です。
脂肪萎縮症を発症するとこのレプチンが減少し、それによって糖尿病が引き起こされるため、メトレレプチン注射によってレプチンを補充することで糖尿病の改善を図ります。
1日1回皮下注射を行い、1ヶ月ほどの期間をかけて徐々に投与量を調整していきます。

これまで、脂肪萎縮症に伴う糖尿病は難治性のものであると考えられてきましたが、このレプチン補充療法による治療が行われるようになり、高い治療効果が認められるようになりました。
患者さんの予後が良好である例も見られます。

ただ現在のところ脂肪萎縮症に対する根本的な治療法は見つかっていません。
レプチン補充療法などの代謝合併症に対する対症治療を行いながら定期的に検診を行い経過を観察していくことも重要です。