突発性慢性膵炎 トッパツセイマンセイスイエン

初診に適した診療科目

突発性慢性膵炎はどんな病気?

突発性慢性膵炎とは原因がはっきりとしない慢性膵炎を指します。
慢性膵炎とは膵臓に繰り返し炎症が起こることで最終的に膵臓全体が硬くなり、萎縮する疾患です。
膵臓の炎症は治療を行っても繰り返し起きますが、適切な治療を受けていれば命に係わるケースはごくまれです。

慢性膵炎は男性に多い病気とされていますが、突発性慢性膵炎に限っては女性に多い傾向があります。
男性の慢性膵炎の中で最も多いのは飲酒を要因の一つとするアルコール性膵炎ですが、女性の慢性膵炎の中で最も多いのが突発性慢性膵炎です。
女性の慢性膵炎全体の約半数を占めます。

初期の段階では、上腹部痛や腰背部痛などの症状が主に現れ、吐き気や嘔吐などのその他の症状も現れる場合があります。
慢性膵炎が進行すると膵組織が破壊され、状態は悪化しているにも関わらず腹痛は軽減したり消失したりすることが多いです。

特に突発性慢性膵炎の場合は原因が明らかではないため治療は主に生活習慣の改善や保存的治療が行われる場合が多いです。

主な症状

突発性慢性膵炎はその他の慢性膵炎と同様の症状を呈します。
上腹部痛や腰背部痛などの激しい痛みをはじめ、吐き気や嘔吐、腹部膨満感、腹部重圧感、全身倦怠感などは初期に現れる典型的な症状です。
中でも腹痛は繰り返し現れ、膵炎の特徴的な症状と言えますが、初期に現れた痛みが、症状が進行するにつれて軽減したり無くなる場合があります。
これは細胞の破壊が進んだことで膵臓の機能が著しく低下するためです。
慢性膵炎の急性期にはみぞおちを中心に非常に強い痛みを生じ、臍へその左右や背中にまで痛みが広がります。
腹痛は主に食事の数時間後に現れることが多く、アルコールや脂肪摂取をきっかけに生じます。

症状が進行すると腹痛が治まる一方で消化吸収不良による下痢や体重減少、糖尿病などの症状が現れます。
場合によっては、膵臓に石ができたり、膵液の通り道である膵管が太くいびつになる場合もあります。一度このような状態になると、慢性膵炎は元に戻ることはありません。

また慢性膵炎は膵がんの発症リスクを高めたり、寿命を短くする要因になるとされています。

主な原因

突発性慢性膵炎は慢性膵炎の中でも発症の原因が不明なものを指します。
慢性膵炎全体で見ると、発症の原因としては飲酒、胆石、て膵損傷、高脂血症、副甲状腺機能亢進症などが挙げられます。
慢性膵炎全体の中で原因がはっきりとしない突発性慢性膵炎は約20%と多く、珍しいものではありません。

まれな例では遺伝性慢性膵炎も挙げられますが、血縁者に慢性膵炎の患者が特に多い場合に関連していると考えられており、基本的には遺伝による発症は少ないと考えてよいでしょう。

慢性膵炎全体の予防という観点から見れば適切な飲酒量を心がけること、ストレスや疲労をためないことが重要です。
これは発症後にも同様です。激しい腹痛を伴う時期には特に注意が必要で、腹痛発作を繰り返す場合、症状は徐々に悪化していきます。
初期の段階で禁酒や禁煙を含めた規則正しい生活をすることで、それ以上悪化することを防ぐことが期待できます。
食生活を整えることも大切で、初期には1度に食べる量を少なくしながら必要な栄養を摂取することを心がけます。

主な検査と診断

突発性慢性膵炎の診断には、問診、血液検査、尿検査、画像検査、内視鏡による検査などが行われます。問診では特徴的な痛みについてなど自覚症状を主に確認します。
血液検査や尿検査では膵液に含まれるアミラーゼやリパーゼ値を調べ、上昇がみられる場合膵炎が疑われます。
慢性膵炎においてはこれらの数値は必ずしも上昇しません。そのため確定診断のためにさらに画像検査が行われます。

画像検査では主に超音波検査、CT検査などによって膵臓の形、膵石の有無、膵嚢胞などを確認することができます。
画像検査の結果と尿検査や血液検査の結果を併せて診断がくだされます。

内視鏡的膵管造影と呼ばれる検査は膵管に造影剤を注入して膵管の状態を確認する検査です。
造影剤によって膵管がよりくっきりと見える点がメリットです。膵管が狭くなっている部位や太くなっている部位がないかを確認することができます。

そのほかにも必要に応じて内視鏡超音波や組織を採取して観察する検査なども行われます。

主な治療方法

突発性慢性膵炎の治療は原因が明らかではないため、生活習慣の改善や対処療法が中心となります。
基本的に断酒、禁煙に加え、激しい痛みを生じている場合には鎮痛薬、膵酵素阻害薬、栄養剤などを内服します。
低下した膵臓の機能を補うために消化酵素薬、インスリン注射なども行われます。

慢性膵炎では繰り返し起こる激しい痛みが特徴です。鎮痛薬の効果が見られなくなる前に、膵石を取り除き膵液の流れを改善する治療が行われます。
内視鏡治療によって膵石を除去し、膵管にステントと呼ばれる管を入れることで流れを改善する方法などがあります。

対処療法などの治療で改善が見られなくなると手術による治療も検討されます。
膵臓を切り取る膵切除術、膵液の流れを改善する膵管ドレナージ術などの方法が選択肢となります。
これらの手術で膵液の流れが改善され、痛みもなくなる場合が多いものの、膵臓が元通りになることはありません。手術後も継続して生活管理を行っていくことが重要です。