D型肝炎

初診に適した診療科目

D型肝炎はどんな病気?

D型肝炎とはB型肝炎ウイルスと重複して発生する肝臓の感染症でB型肝炎の患者のみに見られます。
D型肝炎ウィルスは分娩時に母親から子供へと感染したり、血液や他の体液への接触によって感染が広がります。
中でも輸血などの血液を介するものが主体となります。滅菌していない針を共用して注射を行ったり性行為などによって感染が広がる場合も多いとされています。

このウィルスの最大の特徴は、つねにB型肝炎ウィルスに寄生して増殖する点にあります。
D型肝炎ウイルスは不完全なウイルスであるため、増殖するためにB型肝炎と同時感染する必要があります。
B型肝炎にD型肝炎を合併すると、重症化しやすい傾向があります。D型肝炎ウィルスの分布には地域差があり、北欧や地中海、アメリカ、オーストラリアでよく見られます。

D型肝炎に同時感染するとB型肝炎の症状が悪化する場合が多いです。
D型肝炎はまれな感染症で、急性感染か慢性感染かによっても分類できます。慢性感染の場合、半年を超えて持続するケースもあります。

主な症状

D型肝炎を発症するとほとんどのケースでB型肝炎が重症化します。
B型肝炎とD型肝炎の慢性的な同時感染は肝臓が瘢痕化する肝硬変を引き起こします。
また重度の肝炎である劇症肝炎を起こす可能性もあります。
劇症肝炎は進行が速く、肝臓で除去されるはずの有害物質を除去できずに血液中に溜まり脳に入りこむことで肝性脳症を発症する原因にもなります。
肝性脳症を発症すると早ければ数日で昏睡状態に陥り、場合によっては命に関わる場合もあります。成人が肝性脳症を発症した場合、特に死亡するリスクが高いとされています。

B型肝炎の症状としては急性肝炎の場合、全身の倦怠感や食欲不振、黄疸などが挙げられます。急性肝炎を発症すると約1~2%の割合で症状が進行します。劇症化が進むことで肝不全や肝性脳症を引き起こします。また、慢性肝炎の場合、特別な症状が認められないケースも多く、約9割が無症状とされています。残りの約1割で継続的な炎症が続き、慢性肝炎から肝硬変へ以降し肝細胞がん、肝不全に至るリスクがあります。

主な原因

D型肝炎は血液や他の体液への接触を主な原因として発症します。
例としては分娩時の母親から子供への感染、感染者との性交渉、感染者の血液を輸血する、注射針やシリンジなどの共有、感染者が使用した器具によって入れ墨やピアスの穴あけなどを行う、事故による針刺しなどが挙げられます。母親から子供への垂直感染はごくまれな例です。

血液や体液なしには感染しないウィルスであるため、ウイルス感染者との握手や抱擁、入浴などの行為で感染することはありません。
このことからも感染者に対して差別意識を持つ必要は無いと言えます。またD型肝炎感染はB型肝炎の予防接種によっても予防効果があるため、妊娠前に予防接種を済ませておくことも重要です。
感染者が妊娠した場合には出産時にワクチンや免疫グロブリン製剤を使用することで子供への感染を防ぐことも可能です。

他人の血液には触らない、性交渉時のコンドームの着用、歯ブラシやかみそりなど感染者の血液が付いている可能性のあるものを共用しないなども感染を防ぐために気を付ける必要があります。

主な検査と診断

D型肝炎の診断は血液検査によって行われます。「肝臓は沈黙の臓器」と呼ばれており、症状が現れるまでに時間がかかる点が特徴です。
D型肝炎が疑われる症状としてはB型急性肝炎が重症化している場合や、B型肝炎の慢性感染があり無症状だったものの急激に症状が悪化した場合などが挙げられます。

血液検査を行うことでD型肝炎ウイルスに反応して作られた抗体を確認することができます。
抗原や抗体は酵素免疫測定法と呼ばれる方法を用いて検出します。この抗体が確認されれば確定診断がくだされます。
また、D型肝炎を発症している場合、血清中や肝臓の組織からD型肝炎ウイルスのRNAを検出することも可能です。
逆転写酵素とPCR法を組み合わせてD型肝炎ウイルスのRNAを増幅させて検出する方法もあります。
このPCR法を用いた検査方法は現在のところ最も迅速にD型肝炎ウィルスを検出できる方法とされています。

B型肝炎ウイルスに単独で感染している場合と比較して、D型肝炎ウイルスと同時感染している場合、血清から検出される抗原の量は少ないとされています。

主な治療方法

D型肝炎の治療には、生活指導や抗ウイルス薬などによる対処療法が一般的です。
D型肝炎ウイルスのみに対応する特別な治療法はありません。これは急性ウイルス性肝炎すべてに共通しています。
D型慢性肝炎の治療の場合はインターフェロンアルファと呼ばれる抗ウイルス薬による治療が行われます。
飲酒により肝臓が障害されるため、D型肝炎を発症した場合には禁酒が必要です。活動の制限などは特に必要ない場合が多いです。

急性期には、入院して安静を保ち、栄養が豊富なバランスのよい食事をとります。
食欲がない場合、5%のブドウ糖や肝庇護薬、ビタミン剤の点滴も用いられます。食欲が復活したら、たんぱく質を多く含む食事を心掛けます。
劇症肝炎を発症した場合には肝移植が検討されます。
最も効果が期待できる治療法で、生存の確立が高くなる方法と言えます。

近年ではD型肝炎ウイルスの患者は減少傾向にありますが、これはB型肝炎ウイルスのワクチン接種が普及したことによるものです。