鉄欠乏性貧血(小児)

初診に適した診療科目

鉄欠乏性貧血(小児)はどんな病気?

血液は、赤血球・白血球のほか、血小板や血漿で構成されていますが、鉄欠乏性貧血は赤血球の主成分のヘモグロビンを生成するためにひつよな鉄分が不足している状態の貧血のことです。
ヘモグロビンは、血液が酸素を運ぶ場合に必要な役割を担っています。鉄欠乏性貧血は、あまり症状が明らかではないため、見逃されやすい疾患の一つです。
機嫌が悪くなる、息切れや動悸、疲れやすさなど披露しているのだろうと放置されるような症状のため、家族でも気づかないことがほとんどです。
たまたま別の病気が疑われる際に血液検査をして、気がつくという場合が多いのです。しかし、鉄欠乏性貧血が原因で発達や発育に影響してしまう可能性があります。
顔色が悪い、不機嫌、元気がない、発育不良など心配なことがあれば、鉄欠乏性貧血を疑う必要があります。
夏でもないのに氷を好んで食べる傾向が強い場合なども、鉄欠乏性貧血の特徴です。
鉄欠乏性貧血であれば治療も比較的簡単で、もし症状の原因が鉄欠乏性貧血ではない場合、重大な病気が隠れている可能性もあるため、早期発見が望まれます。

主な症状

「貧血」の症状というとめまいや体がふらついてしまうような症状を想像してしまいがちです。
しかしこのような症状は鉄欠乏貧血の症状ではなく、低血圧が原因の場合が多いです。実際には体を少し動かしただけで、動悸や息切れを感じ、疲れやすさや立ちくらみ、めまい、頭痛などの症状があります。
鉄分が不足すると、爪が割れやすくなったり、匙状爪(さじじょうづめ)になったりします。匙状爪というのは、爪が反り返って中心部がくぼみスプーンの形になってしまう状態です。
このほか、唇の端に炎症が起きる口角炎や口の中が荒れる口内炎、絶縁舌乳頭萎縮が起きます。食道の粘膜に異常が出て、うまく飲み込めなくなる嚥下困難が起きる場合もあります。
鉄欠乏性貧血が進行すると心臓に負担が大きくなり、心雑音、脈拍が多くなる、心肥大などが起き、むくみやすくなります。
鉄欠乏性貧血は、徐々に進行していくため、症状の変化が緩やかで気付きにくいです。食欲がなく、元気がない場合は検査を受けるようにしましょう。

主な原因

鉄欠乏性貧血は、体の中で赤血球を作る鉄が不足していう状態です。
鉄は体に貯蔵しているべきですが、摂取する鉄がする、成長期に必要な鉄分が増加するなどが原因で鉄分が不足します。鉄分を摂取しても、鉄分の吸収をよくするための栄養素が不足しても起こります。鉄分の吸収をよくする栄養素は、たんぱく質や鉄、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンCです。これらが不足しても鉄欠乏性貧血が起きます。鉄欠乏性貧血は乳児でも起こり得る疾患です離乳食が始まってから、食べてくれるものだけに偏ると鉄欠乏性貧血になりやすくなります。
鉄分を含む食材、例えば赤身肉、レバー、ひじきやわかめなどバランスよく食べさせることが大切です。満期産で生まれた子どもは月齢6ヶ月ころまでは、体内に鉄の蓄えが十分にあります。しかし、完全母乳で育てると9ヶ月時点で鉄が足りなくなり鉄欠乏性貧血になる可能性があります。アメリカ小児科学会(AAP)では、月齢4ヶ月からの鉄の補充が推薦されています人工ミルクで育てている場合は、鉄欠乏性貧血の可能性は低くなりますが、できるだけ早くに発見するために検査が必要です。

主な検査と診断

鉄欠乏性貧血は、血液検査を行いヘモグロビン低値、血清鉄低値、総鉄結合能高値、貯蔵鉄の指標になる血清フェリチン低値を調べて診断されます。血清フェリチンは、血液中に貯蔵されている鉄の量を示します。
小児の場合は、少なくともフェリチン30ng/mL以上が必要です。基本的にはヘモグロビンの量が少なければ、鉄欠乏性貧血と診断されます。
乳児の場合は、鉄欠乏によって貧血にならない程度の場合でも神経伝達物質がうまく生成できず、脳細胞が機能低下を起こす可能性があるといわれます。
鉄欠乏が3ヶ月異常続く場合、精神運動発達遅滞になる可能性が高まることがわかりました。ヘモグロビン濃度が10.5g/dL以下になると危険度が高まるため、この状態にならないように鉄分補給が必要です。
血液だけではなく、心雑音の検査も行います。小児が不機嫌でいつも気だるそうにしている場合は、鉄欠乏性貧血を疑ってみて検査をすることが推奨されます。

主な治療方法

治療方法は、不足している鉄分を鉄剤を服用することで補うことが一般的です。
鉄剤の種類は、インクレミンシロップ、フェロミア、フェログラデュメットなどです。
ただし、中には鉄剤の服用で吐き気をもよおすなどの副作用を伴う場合があります。副作用が起きないように、服用の方法を工夫します。例えば食後に服用する、量を調節し数回に分けて服用する、飲む間隔をできるだけ取るなどです。
副作用が出ないように服用の方法を工夫しても、どうしても服用できない人もいます。その場合は注射を使います。薬の服用によって約2ヶ月で血液検査の数値が平常値を超えますが、すぐ鉄剤の服用をやめるとすぐに基準値を下回る可能性が高いです。
鉄分を体の中に蓄える必要があるため、その後数ヶ月は服用を続けることが推奨されています。並行して食事に気をつけるようにすることが大切です。
レバーやひじきなど、鉄分の多い食材は調理が面倒なものが多いですが、食事に気をつけないとまたすぐに鉄欠乏性貧血になってしまいます。