マルトリンパ腫 マルトリンパシュ

初診に適した診療科目

マルトリンパ腫はどんな病気?

マルトリンパ腫とは悪性リンパ腫の一種です。
粘膜に関連したリンパ組織から、リンパ球の中のB細胞が腫瘍化することで発症します。
悪性リンパ腫の中では発症頻度が低く、発症年齢の平均は60歳代とされています。低悪性度に分類される疾患で、病気の進行は比較的ゆっくりとしており、年単位で経過していきます。
マルトリンパ腫が悪性リンパ腫全体に占める比率は約7~8%とされています。

発症部位としてよく見られるのは消化管、扁桃、肺、甲状腺、唾液腺などです。消化管が最も多く約半数を占め、その中でも胃に発症するケースが多いです。
部位に関わらず症状が現れないことが多いです。唾液腺や甲状腺のMALTリンパ腫の場合、自己免疫疾患を合併している場合が多いです。

感染症や炎症を原因として発症する可能性があると考えられており、特に胃MALTリンパ腫においてはヘリコバクター・ピロリ菌に感染している場合が約約50~100%と高い特徴があります。

主な症状

マルトリンパ腫は発症しても経過が穏やかに進行するため症状が現れないケースが多いです。
胃マルトリンパ腫の場合においても無症状のまま過ごし、検診で発見されるケースが多いとされています。
まれに症状が現れるケースでは腹痛、腹部の不快感、吐血、全身のだるさなどが挙げられます。

胃マルトリンパ腫はピロリ菌に感染しているケースが非常に多いためまずピロリ菌の感染の有無が確認されます。
ピロリ菌に感染していても初期の場合それによる特徴的な自覚症状はほとんどありません。
ただピロリ菌感染を放置しておくと、胃マルトリンパ腫以外にも胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮いしゅく性胃炎、胃がんなどを引き起こす場合があり、これらの病気から胃のむかつき、胃の痛み、吐き気などの症状が現れる場合があります。
ピロリ菌に感染していた場合、多くは除菌療法によって改善します。

胃以外の大腸、肺、甲状腺、唾液腺、乳腺、眼科領域などに発症するMALTリンパ腫も症状が現れないことが多く、治療方針を決定するには限局期であるか進行期であるかを検査で明らかにする必要があります。

主な原因

マルトリンパ腫が発症する原因として最も多いとされているのがピロリ菌の感染です。
胃マルトリンパ腫の半数以上がピロリ菌感染によるもので、ピロリ菌によって活性化したT細胞がマルトリンパ腫細胞を増殖させると考えられています。

マルトリンパ腫は何らかの自己免疫疾患や慢性感染症が発症の原因となる場合が多いです。
唾液腺や甲状腺のMALTリンパ腫の場合は自己免疫疾患を合併しているケースが多いため、発症原因にも関わっていると考えられています。
シェーグレン症候群の場合、唾液腺マルトリンパ腫を発症するリスクは通常時と比較して約44倍、橋本病の場合、甲状腺リンパ腫を発症するリスクは約70倍とする報告もあります。

また一部に遺伝的な要素も関連していると考えられており、API2MALT1遺伝子の異常は最もよく挙げられる例です。
ピロリ菌を除菌してもリンパ腫が消失しない場合、検査によってAPI2MALT1遺伝子が陽性であることが多いです。

主な検査と診断

マルトリンパ腫の診断は上部消化管内視鏡検査や病理検査などによって行われます。マルトリンパ腫は無症状であることが多く、健康診断で何らかの異常が見つかり上部消化管内視鏡検査が行われ、偶然に発見されるケースが多いです。

確定診断のためには病理検査によって異型B細胞、リンパ上皮性病変を確認する必要があります。そのために免疫染色も行われます。マルトリンパ腫はリンパ球系のがん細胞が増殖し、細胞がさまざまな形態をしている点が特徴的です。濾胞と呼ばれる球状のかたまりの内部ではなく、濾胞と濾胞の間や周囲に増殖しているのが確認できます。マルトリンパ腫はこれらの特徴から辺縁帯リンパ腫に分類できます。

胃マルトリンパ腫が疑われる場合にはピロリ菌の感染の有無を検査によって確認します。上部消化管内視鏡による検査が最も一般的ですが、尿素呼気試験、抗体測定、糞便抗原測定などの方法によって患者に負担をかけずに検査する方法もあります。

主な治療方法

マルトリンパ腫の治療では、発症している部位やステージに合わせて治療が行われます。
まずは胃に発症するものとそれ以外の臓器に発症するものとに分類します。胃マルトリンパ腫であれば多くはピロリ菌の感染が見られ、除菌が行われます。
3つの薬剤を1週間内服する方法です。
除菌は効果を見ながら薬剤を変更して再度行われる場合もあります。
除菌療法が成功するとマルトリンパ腫が縮小するだけでなく長期に渡ってがん細胞が認められなくなるケースもあります。
除菌による効果が見られない場合には放射線治療が行われ、それでも効果が見られなければ化学療法が選択されます。
限局期であればこのように除菌療法、放射線治療、化学療法という段階に分けて治療が行われることが多いです。
進行期の場合は化学療法や無治療経過観察となります。

胃以外の臓器に発症したマルトリンパ腫の場合、限局期と進行期で治療が異なります。
限局期の場合放射線治療や手術による治療が検討され、進行期であれば化学療法や経過観察となる場合が多いです。