食道憩室 ショクドウケイシツ

初診に適した診療科目

食道憩室はどんな病気?

食道憩室とは、食道壁の一部がポケット状に外側に突出し、表面は粘膜におおわれているものを指します。
食道はのどから胃までをつなぐ管であり、食べたものを喉から胃へ送る役割を果たしています。
食道壁は粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜の4つの層で構成されており、主に筋層によって食べ物は胃へと運ばれています。
無症状である場合がほとんどですが、場合によって食べものの吐き戻し、嚥下困難などが症状として現れます。

食道憩室には圧出性憩室と牽引性憩室の2つの種類が存在します。圧出性憩室とは食道の内腔の圧が高まり壁が押し出されることで生じるものです。
牽引性憩室は周囲の臓器に起きた炎症が食道におよび、炎症・癒着を起こし食道壁が外側に引っ張られることで生じます。

食道憩室ができやすい場所としては喉の部分にあたる咽頭、食道の中間部あたりの中部食道、食道の下部にあたる横隔膜上の3か所が挙げられます。
日本においては中部食道憩室が7割以上を占め、最も多いとされています。

主な症状

食道憩室は初期の場合、そのほとんどが無症状です。
憩室が大きくなっていくと症状が現れる場合もあり、憩室が食道を圧迫するため飲食の際に飲み込みにくさを感じたり、食べ物が通過しづらいと感じる嚥下困難の症状が現れます。
また食道憩室が生じる場所によっても現れる症状に差があります。

咽頭にできる憩室の場合は、初期は軽度の喉の違和感に始まり、進行するにつれて飲み込みにくさを感じたり、食べ物の逆流を起こす場合があります。
この逆流は吐き気や腹筋の収縮がない状態でも起こります。またこの逆流によって咳が出たり、肺炎を引き起こすケースもあります。

中部や横隔膜にできる憩室の場合は無症状の場合も多いですが、症状が現れる場合には飲み込みにくさ、逆流の他に発症している部分に痛みを生じるケースがあります。また憩室の内部に腫瘍ができることがあり、そこから出血を起こしたり、症状が進行すると食道の壁に穴が開く場合もあります。このように穴が開いてしまった状態を穿孔と呼びます。

主な原因

食道憩室には先天性で嚢胞壁に筋層があるのものと、後天性のものがあります。
食道の圧が高くなって筋層が弱くなった部分や筋層がない部分から粘膜が突出した内圧性憩室、食道の周囲に炎症があってテント状に突出した牽引性憩室があります。

食道憩室を生じる原因は憩室の種類によって異なります。
咽頭憩室の場合、口から食べ物が移動する動きと輪状咽頭筋の弛緩とが協調しいないことが原因となって発症する場合があります。
特に食道の壁の中でももともと弱い部分に圧力がかかることで生じます。

中部食道憩室は近くにある臓器で炎症がおき、それが食道の壁に及ぶことや、食道の運動障害を原因として発症します。
肺門部に生じるリンパ節の結核などが炎症の例として挙げられます。

横隔膜上憩室は食道の壁の弱い部分に対し、食道の動きの異常などが加わって発症することが多いです。
食道から胃への食物の流れが滞る食道アカラシアや胃の一部が食道に飛び出ている食道裂孔ヘルニアなどの疾患に伴う形で生じるケースも多く見られます。

主な検査と診断

食道憩室の診断は問診や食道X線造影検査、上部消化管内視鏡検査などが行われます。
問診では自覚症状の有無などについて確認します。食道X線造影検査はバリウムなどの造影剤を用いて食道を撮影する検査です。
バリウムによって食道の輪郭がはっきりと映し出され、異常が見やすい点が特徴です。
食道造影検査では食道の動きなどを保存するために動画の撮影が行われるケースもあります。
咽頭食道憩室や横隔膜上憩室の場合は袋状の突出が確認でき、中部食道憩室では円錐状や台形状の突出が確認できます。この違いは圧出性か牽引性かによるものです。

上部消化管内視鏡検査は内視鏡と呼ばれる管状の機器を食道に入れて検査が行われます。
がんの合併や潰瘍の有無、出血の有無などを確認することができます。また憩室内に食べた物が溜まってしまう場合があり、その有無も確認できます。

一般的な検診などにおいて食道X線検査によって食道憩室が見つかる割合は約0.5~1%とされており、珍しい疾患と言えます。

主な治療方法

食道憩室の治療は無症状の場合、特に積極的な治療は行われません。
中部食道憩室や横隔膜上憩室は特に症状が無い場合が多いため、治療が不要であるケースが多いです。
憩室が大きくなり症状が現れた場合には治療が検討されます。潰瘍や出血など合併症を起こしているケースでは手術による治療が行われます。
手術方法は憩室を切除する治療が一般的です。憩室を切除する際に輪状咽頭筋を切開する場合もあります。憩室に炎症を起こしている場合は抗菌薬を使用することが多いです。

横隔膜上憩室の場合は食道アカラシアや食道裂肛ヘルニアなどが原因となることも多く、それらの疾患の治療も行われます。
中部食道憩室や横隔膜上憩室の場合は定期的な上部消化管内視鏡検査によって食道がんの有無を確認することが重要です。
まれに憩室内に食道がんを発症するケースがあるためです。

基本的に食道憩室は症状が進んで悪化するケースはそれほど多くなく、予後も良好な疾患とされています。