下肢静脈瘤
下肢静脈瘤はどんな病気?
下肢静脈瘤とは、静脈の弁が正常に働かないため血液が重力によって逆流し、下肢の静脈に血液が溜まることにより静脈が膨れて瘤(こぶ)のようになることを指します。症状としては、足の痛み、だるさ、むくみ、かゆみ、血管が浮き出て見える、皮膚が茶褐色になる、などがあります。
治療法としては、弾性ストッキングの着用、硬化療法、ストリッピング、カテーテルによる血管内焼灼術、接着剤による血管内塞栓術などがあります。
主な症状
静脈血は動脈血と比べ老廃物が多いため、足の静脈に血液が溜まると様々な症状が起こります。初期症状は足のだるさ、就寝中のこむら返りがあります。症状が進行すると足の血管が浮き出てむくむようになります。
更に進行すると足の皮膚の色が茶褐色になり、湿疹やかゆみが出てきます。これを「うっ滞性皮膚炎」と言います。うっ滞性皮膚炎は下肢静脈瘤の症状としては重症にあたります。
うっ滞性皮膚炎が更に進むと皮膚にしわがなくなり夏ミカンのように硬くなります。このような状態を皮膚脂肪硬化と言い、ここまで進行すると皮膚は炎症で常に痛みます。
そして最もひどい症状は皮膚がえぐれた状態の潰瘍と呼ばれる状態です。
主な原因
下肢静脈瘤は、立ちっぱなしの仕事やデスクワークの女性に多く、これらの方に共通することは足のふくらはぎの筋肉をあまり動かさないことです。「足は第二の心臓」と呼ばれ、特にふくらはぎの筋肉は足の静脈に溜まった血液を心臓に戻す役割を担っているので、ふくらはぎの筋肉をあまり動かさないと血液が溜まった足の静脈が弁とともに伸びてしまいます。すると、血液が弁の隙間から逆流するので更に足の静脈に血液が溜まるという悪循環が起こります。血液を何とか心臓へ戻そうと、新しく静脈が発生しますが、これ太く曲がりくねっており、しかも弁がない異常な静脈です。これが静脈瘤です。つまり、下肢静脈瘤の発生原因は静脈弁の異常ということになります。
立ち仕事(デスクワーク)のほかに、妊娠(下肢静脈瘤の発生には女性ホルモンが関与しており、妊娠回数が多いほど静脈瘤になりやすい)や遺伝(親が静脈瘤だと子供に遺伝する確率は女児62%、男児25%)なども静脈弁が異常をきたす原因となります。
主な検査と診断
下肢静脈瘤の診断には超音波検査が必須です。超音波検査では、静脈の中を血液がうまく流れているかを調べることができます。足にゼリーを塗って超音波装置を当てるだけの簡単な検査で、痛みもありません。立った状態あるいは座った姿勢で検査が受けられ、両足で10分から15分で終わります。下肢静脈瘤が疑われる症状があり、なおかつ超音波検査で静脈の血液が逆流していることが証明されれば治療の対象となります。
主な治療方法
下肢静脈瘤の治療として手軽に始められる方法は弾性ストッキングを履くことです。弾性ストッキングは医療用の靴下で、足を包み込むように圧迫する力により足の静脈に溜まった血液を心臓の方へ押し上げることができます。老廃物の多い静脈血が足に溜まらなくなるため、足のだるさやむくみ、こむら返りなどの症状が改善します。ただし、ボコボコ浮き出た足の静脈瘤を消す効果や、静脈弁を治す効果はありません。弾性ストッキングを脱いでしまえば再び足の静脈には血液が逆戻りしてしまいます。したがって弾性ストッキングは根本的な治療法ではなく、あくまでも応急処置です。根本的な治療法は、静脈血の逆流を止めることです。その方法は、3通りあります。静脈弁がきちんと閉じなくなり血液が逆流している異常な静脈を①切除②焼く③接着することで逆流をなくすのです。
①の静脈を切除する手術はストリッピングと呼ばれ、特殊なワイヤーを使って血液が逆流している静脈を切除します。下肢静脈瘤のスタンダード手術として、これまで何十年間の長きにわたり行われていた手術でしたが、最近行われることはほとんどなくなりました。
②の静脈を焼く治療が血管内焼灼術です。カテーテルを異常な静脈内に挿入し、カテーテルの先端から発する熱によって静脈を焼いて閉塞させる治療です。ストリッピングに比べ患者さんの体に与えるダメージが少なく、日帰り治療が可能となり、現在、世界で最も主流の治療方法です。
③の静脈を接着材で閉塞させる血管内塞栓術は最新の治療方法です。異常な静脈内にカテーテルを挿入し、接着剤を注入。皮膚を圧迫すると静脈が接着され血液が流れなくなるので逆流がなくなります。
これらの治療法により、異常な静脈には血液が流れなくなるので、血液は正常な静脈に流れるようになり、血液の逆流がなくなります。すると足の静脈には老廃物の多い汚れた血液が溜まらなくなるため、下肢静脈瘤の症状は改善するのです。