ぽっくり病 ポックリビョウ

初診に適した診療科目

ぽっくり病はどんな病気?

ぽっくり病とは現在ではブルガダ症候群とも呼ばれ、心室細動によって突然心臓が停止し死亡する可能性がある病気です。
心室細動とは心臓が細かく震えることで規則的な拍動が無くなり、全身に血液を送れなくなる状態を指します。
筋細胞膜にあるイオンチャネルと呼ばれるタンパク質の一種を支配する遺伝子の異常に要因があり、その背景には心臓の電気現象の異常が関連していると考えられています。

全く普通に日常生活を送っていた人が突然発作を起こして死に至ることがあるため、ぽっくり病という名が以前から知られています。
フィリッピン、タイなどの東南アジア地区で特に多いとされており、東洋人の男性に多い病気です。

心室細動の発作により意識を失ったり、睡眠時の呼吸に異常が現れるなどが代表的な症状と言えます。症状は一過性で自然に回復する場合もありますが、心室細動が止まらない場合死に至るケースも多いです。心肺停止などを引き起こす症候性ブルガダ症候群、自覚のない無症候性ブルガダ症候群とに大きく分類できます。

主な症状

ぽっくり病の症状として最も典型的なものが突然起こる重篤な不整脈です。
ぽっくり病を発症すると不整脈の一種である心室細動が症状として現れます。これは心臓が細かく震えてけいれんし動くことができなくなる状態で、患者の心臓の構造や機能は正常であり明らかな原因がない場合がほとんどです。
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をはたしているため心室細動を起こすと全身に血液が送られず意識を失う、けいれん、呼吸がおかしいなどの症状が現れます。
症状が類似している疾患にはJ波症候群などが挙げられます。ぽっくり病やJ波症候群などを総称して特発性心室細動と呼ぶこともあります。

夜の睡眠時に発作が起きるのも特徴で、一過性の場合もあれば心室細動が止まらない場合もあります。
長時間心室細動が続くと突然死に至るケースがあります。
また心室細動を起こして心停止になり、蘇生後に心電図検査を行った際、ぽっくり病(ブルガダ症候群)の特徴が認められる場合があります。

主な原因

ぽっくり病の原因は心臓ナトリウムチャネルの遺伝子異常に関連するとされています。
SCN5Aと呼ばれる遺伝子で、ナトリウムを選択的に通す特徴があります。
心臓の筋肉の細胞が電気的に興奮している時間について心臓の内膜側と外膜側に差が生じ、電気的に不安定になることで不整脈を引き起こすと考えられています。

ブルガダ症候群患者さんのうち約20%にこの遺伝子異常が見られます。男女比は10:1と男性に特に多く、中でも30~50歳代の男性に発症が多い傾向があります。
このことから男性ホルモンとの関連性を指摘する説もあります。
また遺伝子の先天的な異常も関連しているとされています。ぽっくり病の患者にはイオンチャネルの遺伝子変異だけでなく突然死した血縁者がいることが多いためです。

その他の生活習慣に関わる発症要因としては睡眠前の過食、睡眠不足、喫煙、飲酒、興奮、疲労などが挙げられます。また原因となる基礎疾患を伴わないケースをぽっくり病と定義しています。

主な検査と診断

ぽっくり病の診断には血液検査、12誘導心電図、胸部X線撮影、心臓超音波、24時間ホルター心電図、運動負荷心電図、加算平均心電図などが行われます。
問診では自覚症状についてや近親者に突然死しな人がいるかといった家族歴についても確認します。
心電図検査では通常の方法だけでなく、坂道を登ったり急ぎ足をしている行動中に現れる心電図の変化も確認します。

これは運動負荷心電図と呼ばれ、動悸、息切れ、胸痛などを再現して変化を確認する方法です。また通常の心電図で記録できない微細な電気信号を記録できる加算平均心電図なども必要に応じて使用されます。24時間心電図を付けた状態で日常生活を行い、不整脈が起こっていないかを確認する方法もあります。
不整脈を起こす可能性が高い患者に対しては入院をして心室細動が誘発されるかを確認する心臓電気生理検査なども検討されます。


また心臓の血液の流れを観察するために心エコー検査も行われます。
これらの検査で異常が認められた場合にはさらに詳しく薬剤負荷検査、遺伝子検査なども行われその結果から診断が確定します。

主な治療方法

ぽっくり病の治療には除細動器の植込みや生活指導などによる方法があります。
突然死を予防できる確実な治療法は植込み型除細動器を用いる治療のみです。
これまでに心停止や心室細動を起こしたことがあり、再発の危険性が高いと判断された場合に用いられます。
また発作を起こしたことがない場合でも予防的に植込みが行われるケースもあります。
不整脈による突然死はほぼ100%防ぐことができますが植込み後は定期的な通院と電池交換が必要です。
また発作の回数を減らす目的で内服薬を用いることもあります。電磁波の影響を受けないよう気を付けて生活する必要もあります。

不整脈発作は夜間や早朝に特に多く起こりますが飲酒後や食後にも起こりやすいとされています。
そのため禁酒や満腹まで食べないようにするなどの指導が行われます。また発熱時に発作を起こしやすくなることもあるため、発熱時は早期に医療機関を受診することも重要です。
また不整脈の薬である抗うつ薬やナトリウムチャネル遮断薬などにはぽっくり病を悪化させるリスクがあるため使用する場合は注意が必要です。