左心低形成症候群 サシンテイケイセイショウコウグン

初診に適した診療科目

左心低形成症候群はどんな病気?

左心低形成症候群とは生まれつき心臓に大動脈弁閉鎖(狭窄)と僧帽弁閉鎖(狭窄)が見られる先天性の心疾患です。
左心房から僧帽弁、左室、大動脈から大動脈弓にいたるまでの特に心臓の左側が十分に発達しない疾患で、難病にも指定されています。
心臓の先天異常の約2%を占めるとされています。

左心低形成症候群は心不全を引き起こし最終的に死に至る恐れがあります。
左心低形成症候群の乳児は、生後すぐの時点では心臓の左側が未発達なため、酸素が不十分な血液が動脈管と呼ばれる血管から全身に運ばれています。
この時血液が流れる動脈管は生後間もなく閉じてしまう血管で、これが自然に閉じると左心低形成症候群の場合全身にほとんど血液が送られない状態になります。
このため生後すぐに治療を行わなければ乳児は死亡します。

治療については手術による修復や心臓移植が行われます。未発達の左心室の役割を右心室が代わりに果たせるように手術は段階的な治療が行われます。

主な症状

左心低形成症候群の場合、生後24~48時間頃に動脈管が閉鎖し始めるため、そのタイミングと同時にさまざまな症状が現れるケースがほとんどです。
主に心不全の徴候が急激に現れます。

具体的には速い呼吸、泣き声が小さくなる、手足が冷たくなる、低体温、息切れ、弱い脈、蒼白または青みがかった皮膚を特徴とするチアノーゼ、体温低下、嗜眠、肝臓の腫れ、排尿回数の減少などが現れ、最終的にはショック状態を引き起こします。
これは動脈管が閉鎖しはじめると同時に全身への血流も減少するため、心臓や脳、そのほかの臓器にも十分な血液が供給されなくなるためです。
そのまま血流が回復されなければ乳児は死に至ります。
そのため生後すぐに呼吸管理や動脈管を閉鎖しないようにするなど血圧維持のための治療が開始されます。

治療によって動脈管が開いた状態が維持されている場合、ショック状態を防ぐことができますが軽度のチアノ-ゼ状態は継続するため、脈が速い、呼吸が速いなどの症状が継続して現れます。

主な原因

左心低形成症候群を発症する原因は現在のところ明らかになっていません。
また 特異的な遺伝子異常は現在のところ発見されていませんが、左心低形成症候群の兄弟に同じ病気の兄弟が生まれる確率は約0.5〜2%と言われているため、わずかに遺伝による影響があると考えられています。
左心低形成症候群の子供が生まれやすい環境や要因についても研究が進められていますが、現段階でリスク要因として明らかになっているものはありません。

先天性心疾患は100人に約1人の割合で発症が見られます。
先天性心疾患全体のうち左心低形成症候群は約1.2〜1.6%を占めています。近年は胎児の時点で母親の胎児超音波検査で診断されるケースも増加しています。
ただ左心低形成症候群は妊娠経過、胎児の成長には異常がみられないことがほとんどで、心臓に注目している場合を覗いては発見されないケースもあります。

左心低形成症候群は、以前は新生児期を乗り切ることはほぼ不可能とされていた疾患ですが現在ではノーウッド手術が開発されたことにより段階的な外科治療によって発育発達できる可能性もあります。

主な検査と診断

左心低形成症候群の診断には心臓超音波検査、胸部X線検査、心電図検査などが行われます。最も早い段階では母親の出生前超音波検査で発見されるケースがあります。同様に胎児の心臓超音波検査で発見されるケースもあり、これらの場合は出生前に診断が下されることになります。

また、出生後に現れた症状から左心低形成症候群が疑われる場合には緊急の心臓超音波検査が行われます。合併する心疾患や三尖弁と呼ばれる部分の逆流の有無、狭窄の程度、心房中隔欠損の交通、動脈管の開き具合などを詳細に確認することができます。それらの結果から確定診断がくだされます。

胸部X線検査や心電図検査も同時に行われ、より詳しく心臓や心拍などについても確認します。場合によっては足などの血管から心臓までカテーテルを挿入するカテーテル検査が行われることもあります。この検査では冠動脈の交通などをより詳しく確認することができます。

左心低形成症候群の新生児が生命を維持するためには、肺と体の血流のバランスを慎重に保つことが重要です。そのために検査を行いながら集中治療室で慎重に全身管理がなされます。

主な治療方法

左心低形成症候群の治療では一般的にはノーウッド(ノルウッド)手術を新生児期におこない、その後乳児期にグレン手術、1~2歳でフォンタン手術を行う場合が多いです。心臓移植が第一選択とされているものの、ドナー心臓の数は非常に少なく移植を待つ間に死亡してしまう乳児が約20%ほどとされています。

ノーウッド手術とは生後数週間以内に行われるもので、右心室から出る肺動脈幹から新しい大動脈を再建していく方法です。肺動脈幹からもともと出ていた左右の肺動脈はこの時に切り離します。

その後6ヶ月前後でグレン手術、2歳前後にフォンタン手術を行います。異常なくこの段階を踏んで適切な時期に治療を行うことができれば、チアノーゼを起こさずに新生児期を超え、その後成長していくことが望めます。フォンタン手術を終えるまでは長くリスクが高い状態が続くと言えます。

手術後は強心剤や利尿剤、アスピリンなどの服用が必要になります。また定期的な超音波検査を行うことで経過を観察していくことも重要です。