急性肺損傷 キュウセイハイソンショウ

初診に適した診療科目

急性肺損傷はどんな病気?

急性肺損傷とはALIとも呼ばれ、動脈血液の中に酸素が取り込みにくくなり、急な息切れや呼吸困難などを引き起こす疾患です。
主に敗血症や肺炎などを起こしているときに合併して発症したり、誤嚥や体の複数個所に損傷を受けた後などに発症することがあります。
医薬品が関係しているケースもあり、主に抗がん剤、抗リウマチ剤、血液製剤などによるものもあります。
急性肺損傷は間質性肺炎などの基礎疾患がある患者に発生しやすいとされています。

息苦しさなどに加えて咳や痰、呼吸が速くなる、脈が速くなるなどの症状が現れます。
動脈の血液中の酸素が低下する点が特徴ですが、その程度によってALI、ARDSなどに分類されます。P/F比=PaO2/FIO2の値が200以下である場合には重症のARDS(急性呼吸窮迫症候得群)、300以下をALIと呼びます。ALI、ARDSはどちらも重篤な低酸素状態を示しており、ほとんどの場合人工呼吸器の装着が必要になります。

主な症状

急性肺損傷を発症すると息が苦しい、咳や痰がでる、呼吸がはやくなる、脈がはやくなるなどといった症状が現れます。
日常生活の動作や軽い運動で呼吸困難が起こったり、身体をあまり使っていないのに疲れを感じる易疲労感、発熱を伴うケースもあります。
ただこれらの症状は急性肺損傷で必ずしもみられるものではなく、初期症状には個人差があります。

症状が悪化すると、酸素吸入だけでは改善が望めない状態になり人工呼吸器の装着が必要になる予後の悪い疾患と言えます。

また、輸血に関連して発症するケースでは、輸血中や輸血開始後すぐに症状が現れることも多いです。
抗がん剤、抗リウマチ薬などの使用による副作用である場合はその薬の種類によって好発時期は異なります。
一般的に医薬品を投与した後は、急性肺損傷のリスクが伴うため、症状や患者の変化に注意する必要があります。また副作用が疑われる場合には、症状が現れた時点で一旦輸血や薬の使用を中止します。

主な原因

急性肺損傷は、動脈血液の中に酸素が取り込みにくくなることを原因として発症します。
肺組織の脆弱化、高圧の人工呼吸による障害、抗がん剤、抗リウマチ薬、血液製剤などの医薬品によって引き起こされることがあります。
直接的な原因としては有毒物質の吸入や細菌性肺炎などの重症な呼吸器感染症、誤嚥性肺炎、脂肪塞栓症候群(FES)、肺挫傷など体に損傷を受けることなども挙げられます。
また、関節的な要因としては敗血症などの感染症が挙げられます。このように急性肺損傷はさまざまな要因から発症に至ります。

特に医薬品の重篤な副作用として発症することも珍しくありません。
輸血関連急性肺障害はは輸血中から開始後6時間以内の発症がほとんどで、特に開始後1~2時間以内での発症が多いです。
肺がん治療に使用されるゲフィチニブと呼ばれる薬の場合は4週間以内に発症することが多く、抗不整脈薬のアミオダロンの場合、投与後1ヶ月以降から2~3年での発症が多いなど医薬品の種類によって発症時期はさまざまです。

主な検査と診断

急性肺損傷の診断には問診による症状の確認や、血液検査などが行われます。
主に肺胞領域における急性炎症や肺胞上皮細胞、血管内皮細胞の傷害などから判断されます。
血液検査を行うことで血中の酸素濃度や二酸化炭素濃度を調べることができます。また必要に応じてエックス線検査やCT検査などの画像検査も行われます。

急性肺損傷は症状が類似している疾患も多いため、診断のためには、静水圧性肺水腫、各種呼吸器感染症、好酸球性肺炎(AEP)、びまん性肺胞出血(DAH)、特発性器質化肺炎(COP, BOOP)、剥離性間質性肺炎(DIP)、過敏性肺臓炎(HP)、膠原病肺、リンパ脈管筋腫症(LAM)、肺血栓塞栓症(PE)、悪性腫瘍、急性拒絶反応、薬剤性肺障害などと鑑別し、これら可能性を除外する必要があります。
肺生検を行うことで正確にこれらの疾患である可能性がないかを含めて診断が可能ですが、実際にはより実用的な検査である気管支肺胞洗浄が行われます。

主な治療方法

急性肺損傷は原因によっても治療法がさまざまです。
医薬品の副作用を原因としている場合には、まず投与を中止することが大切です。
肺損傷が重症化している場合には副腎皮質ステロイドの投与が行われる場合が多いです。
これを行っても改善が見られない場合にはステロイドパルス療法と呼ばれる方法での投与も検討されます。
これは多量のステロイドを1クールとして、数クールに分けて繰り返し投与する方法です。その後はステロイド内服によって徐々に量を減らしていきます。

またステロイドの効果が見られないステロイド抵抗例に対しては免疫抑制薬の併用や、血液浄化療法や持続的血液濾過透析などの方法も検討されます。
血液浄化療法は血液から不要な物質や有毒な物質を取り除く方法で、透析、ろ過、吸着、分離などの方法があります。
免疫抑制薬にも薬剤性肺障害の発症リスクがあるため、治療方法はそれらを加味して慎重に決定されます。

急性肺損傷を引き起こしている外傷や疾患があれば並行して治療が行われます。