急性呼吸不全 キュウセイコキュウフゼン

初診に適した診療科目

急性呼吸不全はどんな病気?

急性呼吸不全とはさまざまな疾患を結果とし、肺や心臓などに障害が出て呼吸器の機能低下が起き、十分な酸素を臓器に送れなくなった状態を指します。
血液中の酸素レベルが低下したり、二酸化炭素濃度が高くなることがあります。

呼吸不全のうち、比較的短い期間で急速に起きた場合、急性呼吸不全と呼ばれます。

特に肺や心臓は体内の酸素と二酸化炭素のバランスを保ち役割を果たしています。
肺の機能が妨げられると全身の臓器に影響を及ぼします。呼吸をすると空気中の酸素を取り込んで、二酸化炭素を呼気に排出することができます。
そのため動脈の血液には一定の酸素が存在しますが肺の機能が低下するとその酸素も低下するためです。

急性呼吸不全を発症すると息苦しさを感じます。慢性的な肺疾患が突然悪化したり、健康であった人が突然に重症の肺疾患を発症するなど緊急性の高い疾患と言えます。急性呼吸窮迫症候群などを引き起こす可能性もあり、その場合は突然死のリスクもあります。

主な症状

急性呼吸不全を発症すると息苦しさ、呼吸回数の増加、呼吸時にゼーゼーと音がなる喘鳴などが典型的な症状として現れます。
またこのような呼吸をすると通常の呼吸よりも体力を消耗するため体重減少が見られる場合もあります。

また血液中の酸素レベルが低下することによってチアノーゼと呼ばれる皮膚の色が青っぽくなる症状が現れます。
血液中の酸素レベルの低下、二酸化炭素濃度の上昇、酸性度の上昇などが関わり合って錯乱や眠気を引き起こすこともあります。

血液中の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れると、体は深く速い呼吸をすることで二酸化炭素を体から排出しようとします。
その際肺の機能が障害されているとそれがうまく働かずにバランスが崩れた状態が続きます。その結果として脳や心臓が機能不全になり、不整脈や意識不明になるなど命に係わる状態に陥るケースもあります。

極端に眠くなる、呼吸が遅くなる、静かに昏睡状態に陥るという経過をたどる場合もあり、これは呼吸を促す仕組みに何らかの異常が現れている際に起こることがほとんどです。

主な原因

急性呼吸不全の代表的な原因としては、肺炎、敗血症、多発性外傷、熱傷などが挙げられます。
急性に経過する呼吸不全に分類される場合には肺炎、自然気胸、急性肺血栓塞栓症などがあり、特に急性呼吸不全の代表疾患とされるのが急性呼吸窮迫症候群です。
これは敗血症、重症熱傷、重症膵炎、外傷などを原因として発症し、気道が狭くなる状態が持続する疾患です。

また急性呼吸不全の原因は血液中の酸素レベルが低くなる低酸素血症性呼吸不全と血液中の二酸化炭素濃度が高くなる高炭酸ガス血症性呼吸不全の2種類に分類することもできます。
まれに両方が同時に起こる場合もあります。
低酸素血症性呼吸不全の原因としては急性呼吸窮迫症候群、重症な肺炎、肺に過剰な体液がたまる、肺組織の異常などが挙げられます。高炭酸ガス血症性呼吸不全の原因としては甲状腺機能低下症、睡眠時無呼吸症候群、アルコールや薬の過剰摂取、気道の閉塞や狭窄などが挙げられます。

上記に挙げたものに限らず、呼吸機能や肺に影響を及ぼすほぼすべての病気が急性呼吸不全の原因となる可能性があります。

主な検査と診断

急性呼吸不全の診断には血液検査、画像検査、培養検査などが行われます。
急性呼吸不全においては酸素と二酸化炭素のバランスの異常を見つけることが重要です。
これは一般的に血液検査によって測定する他にも、指か耳たぶに付けるだけでモニタリングできるパルスオキシメーターと呼ばれるセンサーを用いる場合もあります。
診察によって症状や身体所見から呼吸不全が疑われた場合、さらに詳しく検査が行われます。
どの程度酸素バランスが障害を受けているのかを調べるためには、運動負荷を行っている間の酸素飽和度評価なども行われます。これは治療方針にも関わる検査となっています。

また必要に応じて血液や痰を採取して培養検査が行われることもあります。呼吸不全を引き起こしている疾患について調べる際に有効です。生検検査では、肺がんなどが発見されるケースもあります。単純レントゲン写真や胸部CTなどの画像検査も併せて行われ、肺の構造も確認します。

主な治療方法

急性呼吸不全の治療は酸素の補充を目的として酸素投与、非侵襲的陽圧換気、人工呼吸管理、膜型人工肺での呼吸管理などの方法が検討されます。
急性呼吸不全の患者は基本的に集中治療室(ICU)で治療が行われます。症状が急激に悪化するなど命に係わる危険があり、全身管理が必要になるためです。

まず第一に行われるのが酸素投与です。必要な量より多くの酸素を投与し、様子を見ながら量を調節します。
酸素量に応じてフェイスマスクや鼻の中に置く器具を用います。

また人工呼吸器は機械から加圧された空気を人工的に体内に送る方法で、肺の換気異常に対して効果が期待でき、二酸化炭素濃度を低下させることができます。

肺障害を引き起こすしている疾患に対しての治療も重要です。
肺炎や敗血症には抗生物質の投与、気胸であれば胸腔ドレナージ、喘息であれば気管支拡張薬などが症状に応じて用いられます。
肺気腫は喫煙習慣と深く関連する疾患であり、治療のために禁煙が必要です。