微少血管狭心症

初診に適した診療科目

微少血管狭心症はどんな病気?

微少血管狭心症とは冠動脈が狭くなることで心筋に十分な血液を送れなくなることで生じる疾患です。
髪の太さほどの微小な冠動脈の拡張不全や収縮亢進によって一時的に心筋への血液供給が不足し、胸部圧迫感を引き起こします。これは安静時にも起こる場合があります。

一般的な狭心症は男性に多く、冠動脈が硬化して狭くなったり、けいれんしたりして血流が悪くなり胸に痛みが出る症状が特徴です。
これに対し、微少血管狭心症は特に30代半ば~60代半ばに発症し、特に更年期と呼ばれる40代後半~50代前半の女性に多い病気です。
エストロゲンが減少しはじめるのもこの年代で、女性ホルモンの不足が微少血管狭心症の発症に関わっているのではないかとする説もあります。心臓に限らず心身の不調を感じやすい時期と言えます。

微少血管狭心症には血管内に脂分が蓄積することで血管が物理的に狭くなる労作性狭心症と、発作時に血管が痙攣することで狭くなる冠攣縮性狭心症の2種類があります。

主な症状

微少血管狭心症を発症すると主な症状として胸痛を感じる例が多く、一般的な狭心症などと比較すると痛みが長時間持続しやすい点が特徴と言えます。
多くは心臓に痛みを感じますが、これをみぞおちや肩などの痛みだと感じる場合もあります。痛みはほとんどの場合20~30分ほど続き、まれに数時間~1日続くこともあります。
大きな冠動脈の攣縮では短時間の胸部圧迫感が症状として現れますが、微少血管狭心症の場合とは症状の特徴が異なります。その他にも呼吸困難感、吐き気、胃痛などの消化器症状や背部痛、顎やのど、耳の後部などへの放散痛、動悸など幅広い症状が現れる可能性があります。
また微少血管狭心症は運動をしている時に限らず、安静時に発症することがあります。これも一般的な狭心症とは異なる点です。

特に労作性狭心症は身体的に活発に活動した時や精神的に興奮した時などに胸の圧迫感を感じるケースが多いです。安静にして心身を落ち着かせることで症状も落ち着くことがほとんどです。

主な原因

微少血管狭心症を発症する原因は現段階では明らかになっていません。
ストレスや疲労、喫煙、寒冷、精神的ストレスが発症要因になる可能性があるとされています。またエストロゲンと呼ばれるホルモンとの関連も指摘されています。

女性は閉経後にエストロゲンが減少します。エストロゲンが減少すると一酸化窒素の産生も低下し、心臓の細い血管が収縮しやすくなります。
これは一酸化窒素は血管壁の細胞からつくられ、血管平滑筋の弛緩作用や血小板凝集抑制作用など血管を広げる働きに関わっているためです。
このことからエストロゲンの現象が微少血管狭心症の発症につながる可能性があると考えられています。
また、Rho(ロー)キナーゼと呼ばれる酵素の一種が活性化することも原因のひとつと考えられています。

現段階で微少血管狭心症は詳細が解明されていない部分が多く、正しく診断されずに長年症状に悩んでいる方も多いです。
胸痛などの狭心症の自覚症状がある場合には医療機関で詳しい検査を受けることが大切です。

主な検査と診断

微少血管狭心症の診断には心臓カテーテル検査による冠動脈造影などが行われますが、診断が難しいことで知られており確実に診断できる方法はいまだ確立されていません。
一般的な動脈硬化が原因の狭心症では冠動脈の造影検査によって太い血管が狭くなっている部分を確認できる場合が多いですが、微少血管狭心症の場合はっきりとした冠動脈の狭窄が確認できない場合も多く、診断に時間がかかることも珍しくありません。

薬剤を使って狭心症を誘発させながら造影検査を行うと、冠動脈の狭窄が見られないにも関わらず心筋の血流不足が心電図から明らかになることがあります。
このような場合や胸痛が現れた場合には微小血管狭心症と診断されることが多いです。造影検査でも映らないほど細い血管に狭窄が起きていると考えられます。

また微少血管狭心症が疑われる場合不整脈、食道や胃などの消化器疾患、胸部の整形外科的疾患、心身症などの症状が類似している疾患の可能性を除外する必要があります。
必要に応じて画像検査や血液検査なども行われます。

主な治療方法

微少血管狭心症の治療は薬物治療、生活指導などを中心に行われます。
薬物治療では特にカルシウム拮抗剤の使用による効果が期待でき、心筋梗塞や脳血管障害などを起こすリスクも軽減されます。
薬物治療に対して改善が見られない場合にはさらに詳しく専門的な検査を行った上で血管拡張薬の追加、高脂血症の治療、血管内皮反応性の改善薬、女性ホルモンの補充などが行われます。

微小血管狭心症には予防のための対策も大切です。
この疾患において重要なのが血管の内腔を覆う血管内皮と言われています。血管内皮の障害となるものには高血圧、脂質異常症、糖尿病、メタボリック症候群などが挙げられます。
まずは適度な運動や食事など生活習慣を見直すことで予防効果が期待できます。
また、大量の飲酒や喫煙も悪影響が考えられるため控えるのがよいでしょう。
エストロゲンに似た作用を持つイソフラボンは大豆製品に多く含まれており、食事で積極的に大豆製品を摂取するなども予防に繋がります。