酸触歯 サンショクシ

初診に適した診療科目

酸触歯はどんな病気?

酸触歯とは酸性の食べ物、飲み物などによって歯の表面のエナメル質が溶けてしまう状態を指します。
近年虫歯、歯周病に続く第3の歯の病気として注目されています。

口の中が長時間酸性に傾くことで起こりますが、飲食物以外にも逆流性食道炎、拒食症、過食嘔吐、過度なダイエットなども要因になることがあります。
年齢を問わず発症しますが特に若い世代に多く見られます。

歯のエナメル質はミネラル成分で構成されており、飲食後は誰でも口の中が酸性に傾きます。それによってミネラル成分が溶けて一時的に歯が柔らかい状態になりますが、時間が経過すると唾液の働きによって歯は再び石灰化します。健康な歯はこれを繰り返しています。しかし口の中が長く酸性になると再石灰化するまでに時間がかかるようになり、結果として歯が溶けるという現象につながります。

酸触歯になってしまった場合、治療にはかぶせ物や詰め物を使った治療や板状のセラミックを張り付ける方法などがあります。

主な症状

酸触歯の症状として代表的なものには歯の黄ばみ、表面の凸凹、歯が溶けることで歯が薄くなるなどの症状が挙げられます。
また歯の角が丸みを帯びたり、歯の表面のつやがなくなる、詰め物やかぶせ物が外れやすくなるなども症状の一部です。
酸触歯になっている場合、このような症状から歯の見た目にも大きな影響を及ぼします。

症状が進行すると冷たいものや熱いものを口に入れた際に歯がしみたり、エナメル質が溶けた部分から虫歯を引き起こすこともあります。また歯の形が変わるためかみ合わせに影響を及ぼすケースも多いと言えます。

欧米等では以前から深刻な社会問題となっている酸触歯ですが、食生活の欧米化に伴って酸性の飲食物が増えた日本においても約6人に1人は何らかの症状があるとされています。

酸触歯は非常にゆっくりと進行する点も特徴です。そのため以前は主に成人起こるものと考えられていましたが、近年では子どもの食生活環境の変化によって子供の発症例も増加傾向にあります。

主な原因

酸触歯は酸が原因となって起こります。原因となる酸は飲食物に含まれているものと、体内から分泌されるものとに分けられます。

飲料では、特に炭酸飲料や果汁飲料などの酸性飲料には注意が必要です。酸性かアルカリ性かを判定するにはpH値と呼ばれる値が用いられます。中性はpH値7、それより数値が小さい場合は酸性、大きい場合はアルカリ性を示しています。平常時の口の中は中性から弱酸性です。炭酸飲料などのpH値は約2~3、オレンジやミカンなどの果汁飲料はpH値が約4、ビールもpH値が5以下である場合が多いです。また食べ物では柑橘系果物に注意が必要です。レモンのpH値は約2、グレープフルーツが約3、オレンジやミカンは約3.5で酸蝕歯になるリスクが高い食べ物と言えます。

体内から分泌される酸では、逆流した胃酸や胆汁によるものが代表的です。逆流性食道炎、拒食症、過食症などによって過度な嘔吐を繰り返すと口の中が酸性に傾いた状態が長く続きます。

主な検査と診断

酸触歯は口の中を直接確認し、歯の黄ばみや歯の角が丸くなるなどの典型的な特徴から診断されることが多いです。
また問診によって酸触歯になりやすい生活習慣や食生活の特徴がないかなども確認します。

先に挙げている飲食物や疾患以外にも酸蝕歯になりやすくなる要因は複数あります。
サプリメントや黒酢、クエン酸を定期的に摂取する習慣や、夕食が遅い、夕食後にお酒や水以外の飲み物を飲む、フルーツを食べたりお酒を飲んだ後にすぐに歯磨きをするなど生活習慣によって酸触歯を進行させている可能性もあります。また、自分の歯が酸蝕歯になっていないかを簡単な項目でチェックすることも可能です。特に注意すべきなのが症状が進行している場合で、具体的には歯が濃い黄色になっている、歯の先端が透けている、歯の表面に小さいくぼみがある、詰め物が突然取れるなどが代表的です。

酸触歯は早期に発見して治療を行うためにも気になる症状がある場合に受診するだけでなく、定期的に検診を受けることが大切です。

主な治療方法

酸触歯の治療はオールセラミックのかぶせ物や詰め物を用いる治療法が一般的です。
この方法では色や形等、見た目を改善することができますが、歯を大きく削る必要がある点がデメリットと言えます。
また、ラミネートべニアと呼ばれる治療法も選択肢に挙げられます。これは歯の表面を薄く削り、その上にセラミックを板状にしたものを張り付けるという方法です。
切削量は最小限で済み、自然で美しい歯が取り戻せることから近年ではこの方法による治療数が増加傾向にあります。

また、酸触歯の治療の基本には歯磨きがあります。口の中が酸性になっても唾液の力で中和され、溶けたエナメル質は復活します。
これには30分ほど時間がかかるため、食後すぐに歯をゴシゴシと磨くと軟らかくなったエナメル質を削り落としてしまう恐れがあります。
食後は歯磨きまで30分ほど時間を空けるとよいでしょう。ダラダラ飲食を控えたり、酸性の飲み物はストローで飲む、飲食後は水やお茶で口の中を軽くすすぐといった予防策があります。