股関節唇損傷 コカンセツシンソンショウ

初診に適した診療科目

股関節唇損傷はどんな病気?

股関節唇損傷とは、股関節の動きを安定させるクッションの役目をしている軟骨(股関節唇)が、切れたり裂けたりすることによってスムーズな動きができなくなったり痛みを生じる病気です。日本国内の潜在的な患者数は5,000~数万人いるとされています。

股関節は股関節を構成する寛骨臼とよばれるくぼみ部分に大腿骨が重なるようにできており、その部位の軟部組織を股関節唇と呼びます。
寛骨臼の周りに付着しており、大腿骨頭に吸い付いて安定性を高める役割を果たしています。関節唇を損傷すると股関節の曲げ伸ばしや長時間の座位などで股関節に痛みやだるさを生じます。
疼痛が強いため日常生活にも影響を及ぼします。スポーツなどをきっかけに発症しますが、もともとの原因は骨の形の異常にあるとされています。

また股関節唇損傷は患部が小さいためレントゲンや通常のMRIでは画像に写らないという特徴があります。そのため正確な判断が難しく、 椎間板ヘルニアや座骨神経痛に間違えられるケースも多いです。

主な症状

股関節唇損傷は主に股関節の痛みが代表的な症状です。
特にしゃがんだり脚を上げるなど股関節を大きく動かした際に痛みを生じたり引っ掛かり感を感じることが多いです。
また長時間座った姿勢を続けた場合などには瞬間的な痛みではなく、痛みが徐々に現れる場合もあります。その他にもあぐらをかく、内側へ脚を組むなどの姿勢や、靴下を履く、爪を切る、椅子から立ち上がる際に痛みや違和感を感じることもあります。

股関節唇の損傷の程度によって痛みの現れ方もさまざまで、瞬間的に激しい痛みや鈍痛を生じることもあれば、慢性的な倦怠感を感じるという場合もあります。
痛みがあっても日常の動作に気を付けながら2~3ヶ月安静にし、痛みを引き起こす動きを控えれば症状は自然に治まることも多いです。ただ適切な処置を行わずに股関節に負担をかけ続けると、股関節唇だけでなく関節軟骨まで損傷が広がり変形性関節症へ移行する可能性があるため、症状が現れた際には早期に医療機関を受診することが大切です。

主な原因

股関節唇損傷は寛骨臼と大腿骨頭がぶつかり合うことが原因となって発症します。
この現象をFAIと呼びます。運動のしすぎで損傷が多発して発症に至る場合が多いです。一部にはFAIを原因とせずに股関節唇損傷が起こるケースもあります。

股関節は体の関節の中でも運動量が多く体重がかかる部位です。関節唇や関節軟骨などのクッションとなる組織が骨同士の摩擦や衝撃は吸収する重要な役割を果たしています。
関節唇には神経があるため損傷を受けることで痛みを感じます。
もともと寛骨臼や大腿骨頭の形に異常がある場合、FAIが起こりやすい状態と言えます。股関節唇損傷のもとともとの原因をたどると骨の形の異常に起因していると言えます。

股関節唇損傷は40歳代での発症が最も多く、次いで30歳代、10歳代、50歳代の順になります。10歳代の損傷の直接の原因は、サッカーやラグビーなどの激しい運動によるものがほとんどで、30歳代~50歳代の場合ランニングとゴルフが圧倒的に多くなります。

主な検査と診断

股関節唇損傷の診断にはX線検査、CT検査、MRI検査が行われます。
股関節唇損傷の診断をするためには股関節に痛みを生じる他の要因がないかを探ることも需要です。

X線検査では寛骨臼や大腿骨頭に変形がないかを確認できます。また股関節周囲の骨折がないかなども同時に確認します。
特に突然激しい痛みを生じた場合には骨折が疑われることもあります。股関節唇は軟部組織のためX線検査では抽出できません。

CT検査、MRI検査では股関節の構造をより詳しく確認できます。
特にCT検査は3次元の骨の画像を描出できる点がメリットで、骨の形の以上だけでなく寛骨臼や大腿骨頭の関係性なども確認できます。
MRI検査は股関節唇を描出することができる点がメリットで、ダメージについても確認できます。股関節唇の詳細な評価には通常の撮像法だけでなく特殊な撮影法で行われます。筋、腱、骨、軟骨、靭帯などの他の組織も同時に評価することができます。

主な治療方法

股関節唇損傷では基本的に保存的治療が行われます。
股関節唇にダメージを与える動作やスポーツは中止して安静を保ち、消炎鎮痛剤や湿布などを使用して痛みを和らげます。
さらにリハビリテーションも有効で、骨盤や腰のストレッチなどによって骨盤の柔軟性を得たり、筋力を強化することも重要です。
日々の生活で股関節に負担をかけないよう心掛けることによって痛みを管理しることや予防につながります。股関節内に局所麻酔やステロイド注射をすることで炎症を軽減させる方法もあります。
初期段階であればこれらの保存的治療によって症状が改善する場合が多いです。

これらの保存的治療を行っても症状が数ヵ月に渡って改善が見られない場合には手術も検討されます。股関節の外側から内視鏡を挿入し、損傷部位を切除したり縫合する股関節鏡視下術などの方法があります。股関節唇の温存のためには縫合する方法が一般的です。状況に応じて腸脛靭帯による再建術なども検討されます。