社会恐怖・社会不安障害(SAD) シャカイキョウフ シャカイフアンショウガイ

初診に適した診療科目

社会恐怖・社会不安障害(SAD)はどんな病気?

社会恐怖・社会不安障害とは他人の目を気にしすぎて、過度の緊張や不安を感じてしまう病気で、SADとも呼ばれています。
人前で何かをする際に苦痛を感じたり、人前で何かをすること自体を避けてしまう状態を指します。
具体的には発汗や手足の震えが典型的な症状ですが、特に社会不安障害の例で言えば赤面恐怖症、発対人恐怖症、 場面恐怖症などが症状として挙げられます。

誰にでも緊張は起こりうるものですが、社会恐怖・社会不安障害の場合、自身でも不合理だという思いを抱きながらも症状がエスカレートして日常生活にも支障をきたします。

現在のところ日本において約300万人以上が社会恐怖・社会不安障害に悩んでいるとされており、特に10代半ばから20代前半で発症するケースが多いです。
うつ病のきっかけとなる可能性もあるため、思い当たることがある場合には早期に心療内科や精神科などの医療機関を受診することが大切です。
薬物療法や認知行動療法などを用いて適切に治療が行われることで症状の改善が期待できます。

主な症状

社会恐怖・社会不安障害では、人前でスピーチすると極度に緊張する、人前で食事ができない、人々の注目を浴びるのが怖い、初対面の人に挨拶するのが恥ずかしいなどの症状が現れます。またこのような状況を恐れるあまり、その状況を避けようとして回避行動を取るようになり学校や会社に行けなくなるなど日常生活に支障を来たすようになります。これは病的な状態と言えます。

身体的な症状としては発汗、手足が震えなどが典型的です。人前に出ると緊張により顔が赤くなる赤面恐怖症、緊張により発汗しやすくハンカチなどで心の安定を求める発汗恐怖症、周囲の視線が気になり恐怖や強い不安を感じる対人恐怖症、人前で文字を書こうとすると緊張と不安を感じる書痙なども症状の一部です。

社会不安障害においては、恐怖、緊張を感じる状況が限定されている限定型と、状況を問わずに症状が現れる全般型とに分類されます。全般型の場合、特に発症が早く重症である割合が高いとされています。

主な原因

社会恐怖・社会不安障害を発症する原因やメカニズムは、現在のところ明らかになっていません。
ただ関連が深いとされているのが脳内の神経伝達物質であるセロトニンです。セロトニンには精神を安定させる作用があり、何らかの要因からセロトニンのバランスが乱れて不安を誘発する可能性があると考えられています。また脳内の扁桃体と呼ばれる部分が過剰に反応することで恐怖や不安を誘発しているのではないかとする説もあります。
遺伝的な要因も一部にはあるとされていますが、そのような症例はまれです。過去に人前で恥ずかしい思いをした経験が社会恐怖・社会不安障害を発症するきっかけとなったとする例もあります。

社会恐怖・社会不安障害は世代を問わず発症しますが特に思春期での発症が多いとされています。
一般的な不安障害の中でも発症年齢が特に低いという特徴があります。また30代、40代など仕事などの場面で人前で話す機会の増える世代においても発症するケースがあります。

主な検査と診断

社会恐怖・社会不安障害の診断には精神疾患簡易構造化面接法と呼ばれる方法が用いられます。
この方法は面接形式の診断法で、約15分ほどで完了する簡単な質問です。4項目すべてに当てはまる場合、社会恐怖・社会不安障害が疑われます。

症状の重症度も定められた基準をもとに判断されます。
主にLSASと呼ばれる評価尺度を用いて不安や恐怖、回避行動の度合いを4段階で評価します。それらの合計点から重症度を診断する方法です。
人前で電話をかける、公共の場で食事をする、人前で文字を書くなど具体的な行動がチェック項目に挙げられています。

動悸や震え、発汗などの症状は甲状腺機能亢進症とよく似た症状であることから、その可能性を排除するために血液検査を行う場合もあります。

社会恐怖・社会不安障害の診断においてはパニック障害との判別も重要です。症状が現れる際の状況が特定されているかどうかが二つの疾患の異なっている点と言えます。

主な治療方法

社会恐怖・社会不安障害の治療は薬物療法と認知行動療法を併用することで高い効果が見込めます。
薬物療法では主にSSRIと呼ばれる抗うつ薬の使用が一般的で、この薬によってセロトニンのバランスを整えることができます。
約2週間から8週間程度で徐々に症状が落ち着くことが多いです。
不安や恐怖、緊張をやわらげる抗不安薬を使用する場合もありますが、依存性が見られるという特徴があるためSSRIの補助的な役割で使用することも多いです。
SSRIと比較して即効性が高い点が特徴です。

認知行動療法とは、回避行動を軽減する目的で思考パターンを変える、緊張感をやわらげる精神療法の一種です。
具体的には認知修正法、段階的暴露療法、社会技術訓練、不安対処訓練、集団認知行動療法などが挙げられます。
また日常の生活習慣を改善することによって不安や恐怖、緊張を和らげることができます。

社会不安障害の患者の多くは1人で悩みを抱えています。悩みに共感したり、さりげなく受診を勧めるなど、治療にあたっては周囲のサポートも不可欠です。