地震恐怖症 ジシンキョウフショウ

初診に適した診療科目

地震恐怖症はどんな病気?

地震恐怖症とは不安障害という神経症の一種です。地震に対する強い不安から心身の調子を崩すことが特徴です。
症状が悪化すると、日常生活に支障が出たりPTSDと呼ばれる心的外傷後ストレス障害やうつ病を引き起こすことがあります。
男女比は約1対2で、女性に発症することが多いとされています。

代表的な身体症状は動悸、息切れ、呼吸困難、胸の痛み、めまい、吐きけ、冷や汗などが挙げられます。
心の症状としては一人だと不安、夜眠れない、地震が怖いなどがあります。地震が発生していないにも関わらず地震の揺れを感じることもあります。
東日本大震災以降には首都圏などの直接的な被害が少なかった地域でも地震恐怖症を発症する人が増加しています。これは長引く余震や被災地に関する報道を目にし、不安を感じた人が多かったことも要因のひとつと考えられています。

地震恐怖症の治療はまず心理療法士がカウンセリングを行い、医師が必要に応じた投薬をするのが標準的な治療法です。

主な症状

地震恐怖症では地震のことを考えたり思い出した際に症状が現れます。
動悸、めまい、息苦しさ、呼吸が早くなったり遅くなったりするなどが代表的な症状で、重症化した場合には過呼吸を引き起こすこともあります。
人によって症状は多岐に渡り、口の渇き、消化不良、吐き気、頭痛などの症状が現れることもあります。

地震に対して強い恐怖や不安を覚えるため、倒壊や津波による被害を受ける恐れがない安全な場所を求めます。
反対に古い建物など耐震性が低い場所や揺れの大きい乗り物、地震を想起させる場所へ行くことを避けるようになったり、場合によっては仕事や学校へ行けなくなり、日常生活に影響を及ぼす人もいます。家具の倒壊を防ぐ対策や防災用品に対して過剰に費用をかけるなどの行動も見られます。

不眠症、パニック障害、うつ病などにつながる可能性があります。強烈な不安や恐れを抱き、泣いたり、叫んだり、悲鳴を上げるなどパニック発作に類似した症状が現れる場合もあります。

主な原因

地震恐怖症は過去の地震による被災経験などを原因に発症します。
自然災害が引き起こす恐怖症の一種と言われています。
実際に自身が被災した体験に起因するものもあれば、地震によって家族など親しい人を失ったり、津波を目撃するなどの経験がトラウマとなることも多いです。地震に関するショッキングな報道や映像によっても地震恐怖症を引き落こすことがあるため、被災の有無が必須条件ではありません。

緊急地震速報の警報音も不安や恐怖をあおる要因になる可能性があります。人口の約1割に発症しうるという説もあります。

阪神大震災や東日本大震災の後に発症する人が多く、特に東日本大震災が発生した際にはインターネット等により被災地の映像や情報をより目にしやすい状況がありました。
そのため被災地から距離があり被害が比較的少なかった地域に住む人でも地震恐怖症に悩む人も多い傾向があります。また物資不足や計画停電など、地震後に起こる様々な出来事も含めて、地震後は大きなストレスを感じやすい環境であると言えます。

主な検査と診断

地震恐怖症の検査は医師の診断によって評価されますが、精神障害とみなせるかは複雑な条件により判断が難しい場合もあります。
強い苦痛が生じているか、日常生活に支障が出ているか、症状が長期にわたっていたり、再発を繰り返しているかなども診断において重要です。
診断によって治療が可能な病気であると診断されることが治療の一歩ともなります。

うつ病や睡眠障害など、他に同様の症状を引き起こす疾患がないかも調べる必要があります。そのために身体診察や血液検査も必要に応じて行われます。

不安を主症状とする精神疾患をまとめて不安障害と呼び、その中に地震恐怖症も含まれます。
不安障害の生涯有病率は全体の約9%ほどで、その中でも地震恐怖症のような特定の恐怖症の割合が最も多く約3%を占めます。

不安障害に関連する遺伝子についても現在研究が進められています。今後は地震恐怖症に限らず、症状の発症に関連する脳内部位や神経回路、機能異常について解明されていくことでしょう。

主な治療方法

地震恐怖症の治療には、心理療法士によるカウンセリングや、投薬による治療、認知行動療法などが用いられます。
心理療法士によるカウンセリングによって自身の悩みや疾患を理解することができるため、特に女性においてはカウンセリングのみで症状の改善が見られるケースもあります。
男性においては、カウンセリング後に薬による治療を希望する傾向が高いとされています。

投薬による治療には抗不安薬、抗うつ剤などが用いられます。
不安障害、うつ病の治療で使用される機会が多く、脳内にあるセロトニンのバランスを整える効果が期待できます。
また、必要に応じて精神安定剤や睡眠剤も使用されます。認知行動療法とは、不適切な反応の原因となる思考を修正することを軸とした治療方法です。

これらの方法を必要に応じて組み合わせることによって多くの場合苦痛が軽減されたり、日常生活へ影響を減らすことができます。
また、地震恐怖症以外の疾患を併発している場合や、地震恐怖症を引き起こしている疾患などがあればその治療も併せて行われます。治療には周囲のサポートも不可欠です。