線維腺腫 センイセンシュ

初診に適した診療科目

線維腺腫はどんな病気?

線維腺腫とは乳房にしこりができる疾患です。しこりは細胞が過剰に増加してできたもので、主に良性腫瘍に分類されます。境界がはっきりしており、よく動くため手で触ってみるとはっきりと分かるのが特徴です。母乳を分泌する腺が増殖する管内型、周囲の脂肪組織が増殖する管周囲型などの種類があり、それらが混在しているものもあります。20~40歳代の女性に多く見られ、特に30歳代に多い疾患です。

線維腺腫は2~3cm以下のものがほとんどで、自然に小さくなり目立たなくなるケースも多いです。そのため3㎝以下の線維腺腫であれば治療は行わず経過観察となるケースがほとんどです。

また妊娠時に線維腺腫が大きくなる場合もありますが、授乳期を過ぎると同様に自然に小さくなります。まれに3cmを超えて大きくなるものや、10cmほどの巨大な腫瘍である場合もありますが、その場合には葉状腫瘍が疑われます。葉状腫瘍には良性と悪性のものがあり、悪性の場合全身に転移するものもあります。

主な症状

線維腺腫の典型的な症状はしこりのみで、痛みを伴わないことがほとんどです。
しこりは球状または卵形で、ゴムのような弾力があるのが特徴です。
よく動き、しこりのまわりは滑らかでつるりとしています。特徴的なしこりであるものの、触診のみでがんと区別するのは困難なため確定診断を行うためには精密な検査が行われます。

手で触れた際に分かるほどしこりがはっきりとしてくるのは20歳頃のケースが多いとされています。一般的に線維腺腫が成長する速度は穏やかであるとされていますが、人によりさまざまです。10代でしこりに気が付く場合もあれば、40代になってから自覚することもあります。

腫瘍は片方の乳房に1つできることが多いのですが、複数できたり両方の乳房にできることもあります。数年~十数年と長期間にわたってしこりがある場合、そのほとんどは線維腺腫と考えられます。腫瘍の大きさは約2~3cmほどで、5cmほどの大きさになるのは全体の約3%ほどとまれです。

主な原因

線維腺腫は正常な細胞が過剰に増えてできるものですが、その原因は明らかになっていません。
現在のところ、女性ホルモンの一種であるエストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンバランスが何らかの影響を及ぼしていると考えられています。
これは線維腺腫が思春期以降に発症することが多いためです。
また腫瘍は青年期にはゆっくりと成長し続けますが、30代頃に成長が止まったり、40代や50代で閉経した後に自然と消えていくことからも女性ホルモンとの関わりが深いと推察されています。

また年齢以外に腫瘍が大きくなる要因として、経口避妊薬の服用、妊娠、出産をはじめ、他のホルモンの影響などが考えられています。妊娠や出産によるものは、授乳が終わる頃には小さくなる限定的なものがほとんどです。

基本的に線維腺腫は乳がんリスクとは関わらないものとされています。ただまれなケースですが線維腺腫の中でも嚢胞、瘢痕組織、固くなったしこりなど複雑な構造をしているものは、乳がんのリスクをやや高める可能性があるとされています。

主な検査と診断

線維腺腫の診断には、主に触診や超音波検査、マンモグラフィ検査が行われます。
マンモグラフィ検査(乳腺レントゲン撮影)では、境界が鮮明な平たい円形の腫瘤像として確認できることがありますが、特に若い女性の場合乳腺が厚いためはっきりとした所見が得られないこともあります。また超音波検査では均一な低内部エコーをもつ円形、楕円形の腫瘤像として現れます。
二つの検査を比較するとより診断に役立つのは超音波検査と言われており、これはマンモグラフィ検査で腫瘍の確認ができないケースがあるためです。

また線維腺腫の診断のためには葉状腫瘍や乳がんなどではないことを確認するのも重要です。悪性の葉状腫瘍や乳がんの場合、積極的な治療が必要となるためです。確定診断のためには上記のような検査に加え、腫瘍を採取して行う細胞診や病理組織検査も行われます。腫瘍の採取は注射針で腫瘍の一部を吸い出す方法が一般的で、乳房を切開ししこりの一部を切って病理検査を行うことは少ないと言えます。

主な治療方法

線維腺腫と診断され、乳がんや葉状腫瘍の可能性が無いとすれば特に積極的な治療は行わず、経過観察となることがほとんどです。
半年~1年程度、定期的に腫瘍の大きさなどに変化が無いかを確認します。

線維腺腫で積極的な治療が選択されるケースは、腫瘍が大きく見た目に影響を与えている場合や、短期間で急速に大きくなった場合、葉状腫瘍や乳がんの可能性がある場合などです。まれに痛みを伴うこともあり、この場合にも治療が検討されます。また、これらの特徴が現れていない状態であっても青年期における線維腺腫は大きくなる傾向があるため切除が検討されます。

線維腺腫は手術によって腫瘍を切除します。局所麻酔を用いて乳房の一部を切開するだけで切除ができるため入院の必要もないケースがほとんどです。傷が小さいため傷跡も目立ちにくく患者への負担は比較的少ない手術と言えます。切除後も定期的な検査を受けて経過観察を続けることで再発に備えることができます。