胸部外傷 キョウブガイショウ

初診に適した診療科目

胸部外傷はどんな病気?

胸部外傷とは事故や転落、銃弾、鋭利な刃物などによって胸に何らかの外傷ができることを指します。
軽症から重症のものまで幅広くありますが、中でも致命的な胸部外傷には心タンポナーデ、緊張性気胸、血気胸、肺挫傷、胸壁動揺、気道閉塞、大動脈の損傷などが挙げられます。

呼吸や循環を阻害したり、重篤化するため命に関わるケースもあります。肋骨や胸部の筋肉を損傷すると肺が膨らまなくなったり、肺そのものが損傷することで、正常に機能しなくなる可能性があります。また、大量出血により循環機能に影響したり、胸壁内部に出血を生じて呼吸が妨げられることもあります。

力が加わった部分に圧痛や痛みを生じます。息を吸うと痛みが悪化することも多いです。ショック状態を起こしている状態では、血圧が低下し激しい動悸も現れます。

治療は損傷した部位や症状に応じて行われますが、特定の胸部外傷の場合、胸部に針やチューブを挿入する治療によって命が助かる場合もあります。

主な症状

胸部外傷の症状は損傷した部位や状態によってさまざまですが、特に痛み、圧痛、呼吸困難、胸部の皮下出血などが多く見られます。中でも緊急性が高い症状としてはショック症状、意識障害、強い呼吸困難、チアノーゼ、血痰(けったん)、喀血(かっけつ)などが見られます。また呼吸が速い・浅い、脈拍が速い・弱い、血圧が低いなどの症状は重症であることが予想されるものです。
肺が重度の機能不全、呼吸不全を起こしていたり、患者がショック状態にあることを示しています。

その他にも緊張性気胸、血胸では強い呼吸困難、ショック症状、頸静脈の圧が高まって拡張する頸静脈怒張(けいじょうみゃくどちょう)、呼吸機能が低下して皮膚や唇が紫色になるチアノーゼ、暴れたり落ち着かなくなる不穏などもみられることがあります。

また心臓を包んでいる膜の中に血液などの体液が溜まる心タンポナーデの場合、血圧低下、頻脈(ひんみゃく)、心音微弱、頸静脈怒張なども見られることが多いです。

主な原因

胸部外傷は自動車衝突、転落、スポーツにおける事故などによる外部からの鈍力や、銃弾、ナイフなど穿通する物体を原因として生じることが多いです。

胸部外傷によって死に至るケースのほとんどが、呼吸と循環のいずれかまたは両方を損傷することで発生しています。
まず呼吸を妨げる原因としては、肺挫傷、気管気管支破裂などによる肺や気道の直接的な損傷や、 血胸、気胸、動揺胸郭などが例として挙げられます。肺や気管支、食道の損傷により空気が胸部などに入り込むこともありますが、それが生理学的影響を及ぼすことは少なく、あくまでもそもそもの損傷が問題です。

また、循環を妨げる原因としては血胸などで生じる出血によって起こるショック、静脈還流量の減少による低血圧、直接的な心損傷などが挙げられます。静脈還流量が減少は主に緊張性気胸や心タンポナーデを要因として起こります。心筋または心臓弁を損傷することで心不全、伝達異常を起こすケースもあります。

主な検査と診断

胸部外傷の診断ではまず肺の聴診、首や胸部のけが全体の視診および触診を行います。胸部損傷は視診によって明らかな場合もありますが、損傷の重症度を図るには画像検査などの結果を確認する必要があります。また、呼吸困難がみられる患者に対しては血液中の酸素レベルを測定しながら処置をする必要があります。
血液検査を用いてより詳しく酸素や二酸化炭素の濃度を測定する場合もあります。

胸部X線検査は胸部外傷のほぼすべての場合に行われる検査で、気胸、血胸、鎖骨骨折、一部の肋骨骨折などを確認することができます。心臓の損傷に限っては超音波検査が必要です。また、大動脈の損傷の疑いがある場合にはCT検査、超音波検査、大動脈造影検査なども併せて行われます。必要に応じて心電図検査も行われる場合もあります。

緊急性の高い状態である場合も珍しくなく、特に大量血胸、緊張性気胸、開放性気胸、動揺胸郭、心タンポナーデは早期に治療開始が必要です。

主な治療方法

胸部外傷の治療はけがの種類に応じて行われます。基本的に個々のけがに対して治療が行われますが、支持療法として痛みを和らげるために鎮痛薬なども用いられます。
また治療に伴う酸素投与や静脈内輸液、輸血など、呼吸と循環を補助する処置はけがの種類に関わらず治療と並行して行われます。

血胸や気胸などによって胸腔に血液や空気がたまっている場合には胸腔ドレーンと呼ばれる方法で胸部にチューブを入れ、血液や空気を抜き取ります。これによって虚脱した肺の機能が改善する効果が期待できます。また、緊張性気胸が疑われる場合には針による減圧を行ったり、心タンポナーデが疑われるショック症状には心嚢穿刺なども行われます。命の危険がある状態では診断時にベッドサイドで治療を開始するケースも多く見られます。

条件を満たしている場合には、蘇生目的の緊急開胸が行われることもあります。開胸には疾患の感染など大きなリスクを伴い費用もかかることから基準があらかじめ定められています。