兎眼 トガン

初診に適した診療科目

兎眼はどんな病気?

兎眼とは何らかの原因で眼瞼が閉じなくなり、眼球が常に露出する病気です。
兎の文字が使用されているのは、うさぎは目を開いたまま眠ると言われていたことに由来しています。

顔面神経麻痺の後に発症する場合や外傷がある人に発症することが多いのが特徴です。
症状の重い眼瞼外反や、甲状腺の病気による眼球突出なども原因となる可能性があります。瞼を閉じれなくなるため角膜や結膜が乾燥して膜びらんや結膜充血を引き起こし、痛みを伴う症状が現れます。目の乾燥や痛みだけでなく、ごろつき、流涙、かすみ、視力低下などの症状も代表的です。片目だけが見開いた状態になることで、左右の目の大きさが変わってしまうこともあります。どちらかの目だけが閉じられないといった場合にはまず兎眼が疑われます。目に傷が入ると当然感染症を引き起こすことがあるため注意が必要な疾患です。

治療には目の乾燥を防ぐ目薬や軟膏をはじめ、顔面麻痺による場合にはその治療を行うことで兎眼も同時に改善することが多いです。

主な症状

兎眼の場合、眼瞼が閉じなくなることによる黒目(角膜)や白目(結膜)の上皮障害が典型的な症状です。
目の表面が常に露出した状態になるため、眼の乾燥、ゴロゴロする異物感、痛みを引き起こします。乾燥、目のかすみ、痛みはドライアイの症状とも似ています。

目が乾燥することによって傷がつきやすく、細菌にも感染しやすい状態になるため合併症にも注意が必要です。

重症化した場合にはびらんと呼ばれる角膜の傷や角膜混濁、視力低下なども引き起こします。視力の低下は角膜にもともと無い血管が周囲から入り込み、角膜が白く濁ることによって起こります。

角膜炎、角膜潰瘍を併発することも多いとされています。角膜炎は黒目の表面が炎症を起こし、角膜潰瘍は角膜が目の表面から欠けてしまう疾患です。感染症を伴う場合には重症化するケースも多く、視力低下につながります。

男女比や年齢などには関わらず発症しますが、顔面麻痺が原因の場合はやや女性の割合が高くなります。

主な原因

兎眼の原因としてあげられるものには、顔面神経麻痺、外傷、眼瞼外反などがあります。
顔面神経麻痺で起きる兎眼は突発的に起こる場合も多いです。
また火傷や外傷で眼瞼の瘢痕(はんこん)や欠損によって発症したり、目の腫瘍や、甲状腺機能亢進症で眼球が突出するために発症することもあります。兎眼は、角膜乾燥と角膜潰瘍を引き起こす可能性が高いです。

最も代表的な原因は顔面神経麻痺による兎眼で、顔面神経が麻痺することで眼を閉じる筋肉である眼輪筋も動かなくなるために起こります。顔面神経麻痺で最も多いとされるBell(ベル)麻痺は、人口10万人当たりの発症が年間20~30人となっており珍しくない疾患です。Bell(ベル)麻痺は自然治癒する割合も高いですが、治療後も麻痺が残ることがあります。

甲状腺機能亢進症などの甲状腺眼症による場合、上まぶたを挙げる筋肉に炎症が生じることで兎眼を引き起こします。下まぶたを支える靭帯が緩んだり下がる下眼瞼弛緩を原因とするケースもあります。

主な検査と診断

兎眼は細隙灯顕微鏡などを用いて眼を拡大し、詳しく観察することで診断されます。
具体的には目の表面を染めることができるフルオレセインという色素を用いることで、角膜や結膜に異常がないかと確認することができます。
また併せて視力検査も行うことで角膜びらんや角膜混濁、血管侵入などによる視力低下が無いかを確認します。

顔面麻痺による兎眼が疑われる場合には、筋肉の動きをより詳しく確認するための検査も行われます。
注目する点は眉毛の位置の左右差などです。おでこに皺を寄せたり、口を横にひっぱる「いー」口を前に突き出す「うー」の発音をさせて口角の上がり具合や口すぼみの状態を確認する方法もあります。下眼瞼弛緩の状態については直接触診することで緩み具合を確認することもあります。さらにCT検査やMRI検査を行い、頭部の状態を確認する必要があります。

甲状腺眼症による兎眼が疑われる場合には上まぶたをあげる筋肉の炎症の有無を確認する必要があり、MRI検査が行われることもあります。

主な治療方法

兎眼の治療は原因となる疾患の治療もしくは対症療法が行われます。

顔面神経麻痺による兎眼の治療には、上まぶたに小さい金の板を埋め込む手術方法があります。
板の重みによって上まぶたを下げる効果が期待できます。

甲状腺眼症による兎眼の場合、上まぶたにステロイド薬の注射をする治療法があり、これによって上まぶたをあげる筋肉の炎症を抑えることができます。
さらに筋肉が固まっている場合には上まぶたを伸ばす手術も検討されます。

下まぶたの下がりには下まぶたを引き上げるテープを用いたり、一部分を切り取って縫い寄せる手術や眼尻を切って引き上げる手術方法などが検討されます。

対処療法では、眼の表面の乾燥に対し人工涙液やヒアルロン酸による点眼、軟膏が用いられます。これらで対処しきれない場合には就寝時にテープやガーゼを用いて強制的に眼を閉じる方法もあります。また、ステロイド点眼は特に角膜の混濁がある場合に用いられ、透明性の回復が期待できます。