不育症
不育症はどんな病気?
不育症とは妊娠が成立しても流産や死産、出生後28日を経過しない新生児死亡を繰り返して子どもを持てない病態を指します。2回以上流産を繰り返すことを反復流産、3回以上続くことを習慣性流産といいます。
不育症はこうした習慣性流産も含め妊娠が満期に至るまでに流産、早死産を起こしてしまうことの総称です。
定義的にはこうした事態が3回以上続いた時に不育症といいます。不育症の原因は、感染症、内分泌異常、子宮形態異常、夫婦染色体異常、免疫学的原因、血液凝固異常など多岐に渡っており、系統立てた検査と治療が必要です。
ほとんどの不育症は妊娠12週未満の初期段階で発生することが多いです。不育症の中でも問題とされるのが流産・死産とされており、新生児死亡も含まれてはいますがこちらに関しては赤ちゃん側の要因で起こったり偶然に起こることが多いためです。
出産経験があり2人目以降が続けて流産や死産となった場合、続発性不育症が疑われます。
主な症状
不育症では妊娠しても胎児が育たずに流産や死産を繰り返すことが主な症状です。自然流産は珍しいものではなく、1回であればその多くが偶発的な染色体異常によるものです。
自然流産が2回続くと、偶発的な要因の他にも夫婦のどちらかもしくは両方に要因がある可能性が否定できません。
3回以上流産や死産を繰り返す場合には積極的な検査、治療、管理が必要となります。続発性不育症は2人目以降続けて流産や死産となるもので、同じく検査や治療が行われることがあります。
検査を行っても原因が明らかにならないことも約6~7割の割合であります。
自然流産は全体の妊娠の約1~2割に発生し、ほとんどが卵子に偶発的に発生した染色体異常によるものと言われています。これは治療により防ぐことは難しいとされています。一方、受精卵に異常がなく母体側に原因がある流産もまれに存在します。不育症においては偶発的に発生した染色体異常による流産とそれ以外の原因の有無を調べることが重要とされています。
主な原因
不育症の原因は偶然起こる場合や、何らかの要因が見つかる場合もあります。いまだ解明されていないことが多く、約半数は検査を行っても原因の特定が難しいとされています。
具体的に要因として挙げられるのが内分泌異常、血管に血の塊が生じやすい血栓性素因などです。
不育症の方を調べるとよくみられる症状として、赤ちゃん側の病気には染色体異常疾患、遺伝子異常が挙げられ、お母さん側の病気としては抗リン脂質抗体症候群、子宮奇形、甲状腺機能の異常、黄体機能不全、血液凝固系の異常などが挙げられます。中でも最も多いとされているのは赤ちゃん側の染色体異常などの偶発的な要因です。
また生活習慣などに関わるリスク要因としては肥満、糖尿病、飲酒・喫煙、カフェインの大量摂取、精神的なストレスなどが挙げられます。
甲状腺の異常や糖尿病は正常に戻ると妊娠の成功率が上昇すると言われており、これらの治療が間接的に不育症にもよい効果をもたらす可能性があります。また、カウンセリングを受けた場合、次回の妊娠成功率が上がるとされる報告もあります。
主な検査と診断
不育症の検査は3回以上の流産を繰り返した場合、原因不明の死産の場合に推奨されています。一度でも出産を経験したことがなく3回以上の流産を繰り返している夫婦の場合、治療を行うことで成功率に差があるとされています。
まず問診によって妊娠歴、肥満、喫煙、カフェインの大量摂取、精神的なストレスなどリスク要因となりうる項目を確認します。
また、ホルモン検査によって甲状腺機能、下垂体ホルモン、卵巣ホルモンについて詳しく数値を確認します。さらにエックス線や内視鏡、超音波(エコー)検査を用いて子宮の形を確認したり、抗体を調べる自己抗体検査、血の固まりやすさが分かる凝固系検査も行われます。
夫婦が持つそれぞれの染色体の数や状態を調べるために夫婦染色体検査も行われます。これによって染色体構造異常が見つかった場合でも子供を持てる確率は正常値の人と変わらないとされています。流産回数は正常値の人と比べ多くなる可能性はあります。
基本的な検査を除いて多くの検査は保険適応外になります。
主な治療方法
不育症の治療は検査によって原因が分かっている場合と原因が不明な場合とで治療方法が異なります。ただ、不育症患者の多くは検査や治療を行い、最終的に子どもを授かることができるといわれています。
基本的に検査で分かったリスク因子をもとにした治療が行われますが、ストレスやカフェインの大量摂取など生活習慣の見直しも大切です。
原因がわかっている場合の不育症には、検査で見つかった異常に対して治療を行います。
例えば抗リン脂質抗体陽性、凝固因子異常に対しては抗血栓療法による治療が行わ、甲状腺機能異常や糖尿病に対しては薬物治療が行われます。
子宮の形態異常に対しては手術による治療が行われます。染色体異常に対しては着床前診断を行うことで、流産回数を減らせる可能性があります。ただこの検査を行うことは最終的に子どもを持てる割合には影響せず、体への負担や治療費も踏まえて決定する必要があります。
検査を行っても原因が分からない場合の治療には、プロゲステロンの投与などが検討されます。