母子感染 ボシカンセン

初診に適した診療科目

母子感染はどんな病気?

母子感染とは、妊婦が細菌、ウイルスなどに感染し、妊娠中、分娩時、出産後(授乳などによる)に胎児、新生児に伝播するものです。
垂直感染とも呼ばれます。妊娠前から元々その細菌、ウイルスを保持している場合もあれば妊娠中にそれらに感染する場合もあります。

感染時期や感性経路によって3つに分類されます。赤ちゃんがお腹の中にいる妊娠中の感染で、新生児に病変が出現するものは先天感染あるいは胎内感染と呼ばれます。
分娩が始まり産道を通る時に感染する産道感染、母乳から感染する母乳感染があります。

感染するウイルスとして代表的なものとしてはB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、梅毒、風疹ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス-1型、性器クラミジア、B群溶血性レンサ球菌(GBS)などが挙げられます。多くのウイルスが妊婦健康診査で検査が行われるため、妊婦検診を受けることでも予防につながります。

主な症状

母子感染では、感染したウイルス、細菌によって現れる症状は異なります。

例えば母子感染で挙げられる代表的な風疹ウイルスでは胎児に感染すると、白内障、先天性心疾患、難聴などの障害がある赤ちゃんが生まれる可能性があります。特に妊娠初期の感染に注意が必要です。

B型肝炎ウイルス(HBV)では、B型肝炎と呼ばれる肝臓の感染症を引き起こします。赤ちゃんに感染した場合、多くは無症状です。まれに乳児期でも重い肝炎を引き起こすこともあり、将来的に肝炎、肝硬変、肝がんを発症するリスクがあります。また、C型肝炎ウイルスにおいても赤ちゃんに自覚症状はない場合がほとんどです。同じく肝炎、肝硬変、肝がんの将来的なリスクが高まります。

ヒト免疫不全ウイルスでは赤ちゃんに自覚症状はない場合が多いですがまれにATL、HAMの発症を引き起こします。

風疹ウイルスでは、赤ちゃんに聴力障害、視力障害、先天性心疾患、また性器クラミジアでは赤ちゃんに結膜炎や肺炎、B群溶血性レンサ球菌では赤ちゃんに肺炎、髄膜炎、敗血症などの重症感染症を引き起こす場合があります。

主な原因

母子感染の原因は、妊娠中のお母さんが細菌、ウイルスなどにに感染し、お腹の赤ちゃんに影響が起きるものです。
妊娠中に感染することもあれば、妊娠前から元々そのウィルスや細菌を持っていることもあります。

風疹ウイルス、麻しんウイルスは地域で流行が見られた際に外出を控えたりかかっている可能性のある人との接触を避けることはもちろん、免疫のない家族に予防接種を受けてもらうことも予防につながります。

ヒト免疫不全ウイルスやヒトT細胞白血病ウイルス-1型は母乳を介して赤ちゃんに感染するものですが適切な感染予防対策によって感染率を低下させることもできます。

クラミジア・トラコマチスなどは性行為によって感染するもので妊娠中に感染することもあります。

トキソプラズマは加熱が不十分な肉を食べたり猫のフンやフンに汚染された土に触れることでも感染します。

リステリアは加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモン等に含まれ、食品を介して感染しますが加熱することで予防ができます。

主な検査と診断

母子感染の検査は、妊婦検診によっていくつかのウィルスや細菌感染について確認ができます。感染症検査と、ウィルスや細菌の種類によっては抗体検査が行われます。感染症が見つかった場合、赤ちゃんへの感染を防いだり将来の発症を防ぐために必要に応じた治療や指導が行われます。

B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、梅毒、風疹ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス-1型、性器クラミジア、B群溶血性レンサ球菌(GBS)などは、多くの場合妊婦検診による検査が行われています。これらの項目の検査が実施されているかどうかは医療機関ごとにも若干差があり、お母さんと赤ちゃんの経過によっても異なります。これらの感染症検査は赤ちゃんへの感染を防ぐだけでなくお母さんの健康管理にとっても大切です。

一方妊婦検診による検査がないものには水痘(水ぼうそう)、性器ヘルペス、サイトロメガロウイルス、トキソプラズマ症などが挙げられます。

主な治療方法

母子感染の治療はそれぞれの感染症によって方法も異なります。
妊娠中に治療が行われる場合もあれば、必要に応じた保健指導が行われる場合もあります。

胎内感染が確定したり、可能性が高いとされる場合にはその病原体によって妊娠中でも治療を開始するケースがあります。例えばトキソプラズマや単純ヘルペスウイルスなどへの感染の場合は抗生剤などをお母さんに投与することで胎盤を通じて胎児に伝わり、感染を防ぐ効果が期待できます。ただほとんどの場合は胎児治療は行われず、出産後に治療を開始するのが一般的です。

産道感染による感染症の場合は、お母さんの産道にある病原体を分娩前に治療したり、帝王切開を選択することで感染を防ぐこともあります。母乳感染による対策としては、母乳ではなく人口乳を用いることで感染経路を遮断する方法が一般的です。

母子感染が確定した場合には子どもに対しての長期的なサポートが不可欠です。難聴や失明などには特に注意が必要です。