大腿骨頭無腐性壊死

初診に適した診療科目

大腿骨頭無腐性壊死はどんな病気?

大腿骨頭無腐性壊死とは、股関節を構成する大腿骨頭と呼ばれる部分が、血流が低下したことによって骨組織が死んでしまう壊死に陥る疾患です。
厚生労働省の特定疾患に指定されている疾患ですが、手術などによる治療を行えば痛みを感じないように生活を送ることができます。

骨壊死を発症すると、時間を空けて股関節に痛みが現れる点が特徴です。これは骨壊死が起こった段階で痛みがあるわけではなく、壊死した部分がつぶされることで痛みが生じるためです。そのためわずかな一部分の壊死の場合、痛みが現れないケースもあります。その他、膝や臀部に痛みを生じるケースもあります。

現在のところ原因は明らかになっていませんが、ステロイド薬の使用や多量のアルコール摂取が要因として関連しているのではないかと考えられています。

変形性股関節症などと股関節痛などの共通点があります。ただ変形性股関節症は長い時間をかけて徐々に進行しますが大腿骨頭無腐性壊死は比較的急性に発症します。

主な症状

大腿骨頭無腐性壊死は骨壊死に至った段階では自覚症状がありません。
その後骨壊死した部分がつぶれ、大腿骨頭が圧迫されると痛みが現れます。その時間差は数ヵ月から数年かかる場合もあります。

痛みは急に生じることが多く、股関節部痛が代表的です。その他にも腰痛、膝痛、殿部痛から痛みが始まることもあります。股関節においては可動域制限は主に内側にまわしたり、外に向けることが困難になりますが、屈曲は初期は制限されないことが多いです。 男女比では男性の発生が多いのですが、ステロイド性ではほぼ同数です。30~50歳代に発症が多いとされており、働き盛りの年代に多いともされています。

初期段階での痛みは2~3週間の安静によって軽減する場合もあります。ただ大腿骨頭が再び圧迫されれば痛みが繰り返したり、増すこともあります。細菌感染のように周囲へ広がることはないため、壊死部分の大きさは変化しません。範囲が小さいには場合は壊死した部分が修復されて小さくなることもあります。

主な原因

大腿骨頭無腐性壊死の原因については現在も研究が進められています。大腿骨頭はが関節内に深く納まっていて血管が少なく、血流障害を起しやすい場所と言えます。
壊死した骨の部分が大きく体重を支えきれずにつぶれてしまうことで痛みを生じます。

現在のところ、大腿骨頭無腐性壊死の原因はステロイド薬の服用、多量のアルコール摂取習慣、明らかな危険因子のない場合という3つに分類されています。

特にステロイド薬を一日平均で15mg以上程度服用したことがある、日本酒で2合以上のお酒を毎日飲んでいるなどは大腿骨頭無腐性壊死を引き起こす強い危険因子とされています。

ステロイド薬はさまざまな疾患の治療に用いられる薬剤です。大腿骨頭無腐性壊死がステロイド薬の副作用とするべきかについても現段階では不明です。また、合併疾患に対してステロイドの投与を継続した場合でも壊死の範囲が広がることはないため、必要な場合にはステロイドの継続投与も可能です。

また、遺伝との関連は今のところ明らかになっていません。

主な検査と診断

大腿骨頭無腐性壊死は問診、画像検査によって診断がくだされます。
問診では痛みの程度や部位、痛みを生じるようになった時期などを確認します。
問診によって大腿骨頭無腐性壊死が疑いがあるとされた場合にはレントゲン検査、MRI検査、骨シンチグラフィーなどの画像検査が行われます。

レントゲン検査ではでは骨がどの程度つぶれているのかなどを確認できますが、早期の場合には変化を確認できない場合もあります。MRI検査は早期の骨壊死の診断にも有効とされており、骨頭内のバンド像を確認することができます。このMRI検査で特徴的な所見があれば確定診断が可能です。

また、他の部位の壊死がないかを同時に確認したい場合に行われるのが骨シンチグラフィーです。放射性同位元素を注射し、全身骨格を撮影することができますが小さな病巣の場合確認できないケースもあります。

これらの検査結果と内科的合併症や壊死の大きさ、位置も含めて治療法が検討されます。

主な治療方法

大腿骨頭無腐性壊死の治療は保存療法、手術療法に大きく分類されます。
保存療法は比較的軽症で壊死の大きさや位置からも予後が良好であると判断される場合に選択されます。
痛みに対しては鎮痛消炎剤の投与することもありますが、基本的には生活指導による部分が大部分を占めます。
関節症性変化が進行するまでは可動域は保たれるため積極的な可動域訓練なども行わないことが多いです。しかし圧潰の進行防止が期待できるものではないため、圧潰進行が予想される場合には手術が選択されます。

手術は骨頭温存を目的としており、時機を見極めることも重要です。変形が進む前に手術を行う方が高い効果が期待できます。特に若年者の場合、関節を残す骨切り術が最も多く選択されます。ただ壊死範囲が大きい場合や骨頭圧潰が進行し特に重症な場合、高齢者である場合には人工関節置換術が用いられることが多いです。圧潰した大腿骨頭を人工骨頭に置き換えたり、股関節全体を人工股関節に置き換える方法です。