脊椎損傷、脊髄損傷

初診に適した診療科目

脊椎損傷、脊髄損傷はどんな病気?

脊椎損傷とは、脊椎(脊髄)が損傷することの総称です。
脊椎は背骨を構成する骨を指しており、頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨が縦に連なって並んでいます。それぞれの骨の間には椎間板と呼ばれるクッションがあります。
脊椎には脊柱管と呼ばれる脊髄が通る管があったり、全身へ繋がる神経が通っているなど人間の体の中でも重要な部位と言えます。

脊椎損傷ではこの脊椎が骨折、脱臼などの外傷を受けることで損傷しますが、多くは交通事故や転落、スポーツによるものが多いです。どの部位の脊椎が損傷したかによって症状も異なりますが、脊髄や神経に障害が加わることで呼吸障害や手足の麻痺などを引き起こす重篤なケースもあります。その他にも排尿排便障害、呼吸障害、血圧調整障害などを生じる可能性があります。

加わった力が軽度で、骨や靭帯の損傷に留まっている場合には骨折や脱臼に対する治療のみで済むケースもあります。より強い力が加わり、脊髄までダメージが及んだ場合、神経に関わる様々な症状を引き起こします。

主な症状

脊椎損傷の中でも上位頸椎損傷では頸部痛、後頭部痛のほか、頭を両手で支える動作が現れることもあります。
上位頸椎は呼吸をつかさどる、神経の中枢がある場所です。
脊柱管(前述)が広いため、神経麻痺はあっても比較的症状が軽いことが多いといわれていますが、重度の損傷では四肢麻痺(ししまひ)や命に係わることもあります。 

中下位頸椎損傷では頸部痛、頸部の運動制限や運動時痛が起こります。この部位では脊柱管が狭いために高率に脊髄損傷がみられ、四肢麻痺を生じます。
また、脊髄は損なわれない場合でも神経根が損なわれると、上肢の疼痛、しびれ、筋力の低下などの症状も見られます。

胸・腰椎の脱臼・骨折では、神経の損傷を合併することも多く、腰背部痛に加え、両下肢の運動、知覚麻痺を生じます。また、排尿・排便障害が現れることもあります。骨粗鬆症を伴う高齢者の胸・腰椎圧迫骨折においては、下肢の麻痺が起こることは少ないのですが、受傷後しばらくたってから麻痺症状が現れることもあるので注意が必要です。

主な原因

脊椎損傷は脊椎に対し外から非常に強い力が加わり垂直性圧迫、過度な屈曲、回旋、伸展が起こることで生じるものです。
打撲により揺さぶられたり骨折、腫れ、血腫により圧迫される、断裂するなどによって脊髄が損傷することで神経が傷つき伴う機能の障害を引き起こします。
脊髄神経根、神経根の束なども影響を受けます。また、椎骨が動くようになると、脊髄や血流を圧迫したり、脊髄神経根を損傷したりすることもあります。

具体的には自動車事故、転倒や転落、暴行、スポーツ外傷などが原因となることが多いです。スポーツでは激しい接触の多いラグビーやアメリカンフットボールが多いとされています。

脊椎は重要な神経を守るために硬く太い構造になっていますが、骨粗しょう症を発症している場合や脊椎にがんの転移が見られる場合は転倒などの軽い衝撃でも脊椎損傷を生じるケースもあります。また、脊椎のひとつである上位頚椎が、関節リウマチに起因して亜脱臼を生じることもあります。

主な検査と診断

脊椎損傷は主に問診、画像検査によって診断されます。まずは問診によって受傷した際の状況や痛みなどを確認します。
脊椎損傷の検査では骨折や脱臼の有無の他に、脊髄への損傷も調べる必要があります。他の部位の損傷も併発しているケースが多く、全身の検査も必要に応じて行われます。

脊椎の損傷と脊髄の損傷はX線検査、CT検査、MRI検査などが用いられます。X線検査では主に脊椎に生じた骨の損傷を確認できますが、脊髄の損傷の判断には使用できません。CT検査では脊椎の損傷、骨損傷のほぼすべてが明らかにできる検査で、脊椎損傷には欠かせない検査です。MRI検査は脊髄の損傷だけでなく靱帯の損傷を把握するのに適しており、CT検査の後に行われることも多いです。

必要に応じて行われるのがCT脊髄造影検査です。X線を通さない造影剤を脊髄の周りに注入して行うCT検査で、ペースメーカーを埋め込んでいる患者などMRI検査が実施できない場合に用いられます。

主な治療方法

脊椎損傷は治療にあたり、患者を移動する際には必ず首が動かないように硬い板に固定する必要があります。
脊椎がぐらついている場合、わずかなずれで脊髄が圧迫され麻痺がおこる可能性もあるためです。

脊椎損傷の治療は損傷部位や程度に合わせた治療法が選択されます。痛みが生じている場合には鎮痛薬、けい性麻痺がある場合には筋弛緩薬などを用います。
基本的に継承の場合にはギプスなどを装着して骨を固定し、安静を保つ方法が選択されます。

脊髄への圧迫があり偏位が大きい場合には手術が選択されることもあります。損傷部位を整復することで脊髄や神経への圧迫を解除します。また脊椎損傷は、骨折部位が変形して癒合するケースや骨折部位が治らずに偽関節となるケースがあります。特に腰椎の圧迫骨折に多く、この場合受傷後すぐではなく、これらの経過をたどって周辺の脊髄や神経を圧迫することがあります。このような場合にも同様の手術が検討されます。