頸椎後縦靭帯骨化症

初診に適した診療科目

頸椎後縦靭帯骨化症はどんな病気?

頸椎後縦靭帯骨化症とは、背骨の中にある後縦靭帯と呼ばれる靭帯が何らかの原因で骨となり、神経を圧迫することで起きる疾患です。
手足のしびれや痛みを発症することが多く、手の細かい動作がやりにくくなったり(巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい))、足が突っ張って歩行がしにくくなる(痙性歩行(けいせいほこう))などの運動障害も出現します。難病に指定されている疾患で、日本においては国民全体でも1.5〜5.1%がこの疾患にかかっているとするデータもあります。
症状が重症化すると介助が必要になったり、日常生活への影響が大きくなります。

しかし痛みなども伴わず無症状の場合も多く、後縦靭帯が骨化すること自体に病的な意味はないとされています。自覚症状がないため、別の検査のために頚部のレントゲン写真やCTを撮影した際に偶然発見されるケースも少なくありません。

特に50歳前後の男性に発症が多く、糖尿病や肥満とも関連があり、遺伝傾向も見られます。

主な症状

頸椎後縦靭帯骨化症では、現れる症状は感覚、運動、自律神経に関連したもので、中でも首筋や肩甲骨周辺、指先の痛みやしびれが典型的な症状とされています。

特に神経圧迫の影響で起こるものでは、手足の痛みやしびれが代表的です。
徐々に痛みやしびれの範囲が広がって脚や手指にまで症状が広がります。さらに頻尿や失禁、便秘などの排尿・排便に関わる膀胱直腸障害もみられます。
重度になると、首を動かしにくくなったり、つまずきやすくなる、足がふらついて歩けない、脱力してしまうなどの大きな動きに関わる障害も現れます。歩行障害が重症化すると日常生活を送ることが困難になるケースもあります。

転倒などの軽い外傷をきっかけに麻痺症状は急激に悪化します。脊髄症状による歩行障害が転倒を招き、その結果、脊髄症状が悪化するという悪循環にもつながります。 いったん高度の脊髄麻痺が発症すると、その治療は困難とされています。ただ症状の現れ方はさまざまで、発症してからも数年に渡り症状が悪化しないケースが半数に及びます。

主な原因

頸椎後縦靭帯骨化症は後縦靭帯が骨化することで発症します。後縦靭帯は背骨にある脊柱管と呼ばれる空間に安定感や柔軟性を与える役割を果たしています。
この脊柱管野中には神経が集まった脊髄が納まっており、後縦靭帯が骨化することによって脊髄が圧迫され様々な神経に関わる障害が現れます。

後縦靭帯が骨化が起こるメカニズムは解明されておらず、なぜ起きるのかという原因は不明です。関連性があると考えられている要因としては遺伝子や性ホルモンの異常、カルシウム代謝異常、糖尿病、老化、局所ストレス、全身的な骨化傾向、他の部位での椎間板脱出などが挙げられています。単一の原因で生じるものではなく、複数の要因が関わりあって発症するものと考えられています。

後縦靭帯骨化症においてはこれまでの研究から兄弟に靭帯骨化症が認められる確率が約30%であり、遺伝が関連する可能性が高いとされています。血縁者に必ず遺伝するものではありません。

主な検査と診断

頸椎後縦靭帯骨化症はまずは問診で自覚症状、家族の罹患がないか、日常生活での腰への負担などを確認します。
問診の結果、後縦靭帯骨化症が疑われる場合にはまずはレントゲン検査が用いられることが多いです。
頚椎後縦靭帯骨化はレントゲン写真によって見つけやすい疾患とされていますが、後縦靭帯の骨化について判断が難しい場合にはCT検査などを用いることでより詳しく骨化の大きさや範囲を把握することができます。

頸椎後縦靭帯骨化症の治療においては特に脊髄の圧迫状況を把握が重要で、これにはMRI検査が用いられます。
MRI検査では骨化した後縦靭帯が脊髄を圧迫している状況を正確に把握することができるため頸椎後縦靭帯骨化症の診断に欠かせない検査と言えます。

頸椎後縦靭帯骨化症は手術などの治療が行われ一旦完治した後にも数年後に再発することがある疾患です。そのため定期的にレントゲンなどの画像検査を受けて経過を観察することが推奨されています。

主な治療方法

頸椎後縦靭帯骨化症の治療では保存療法もしくは手術療法が選択されます。
保存療法は骨化によって圧迫されている神経の保護を目的として、高さを調節できる頚椎カラーによって患部を固定したり、消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、ビタミンB剤などの薬剤を使用し、痛みやしびれの軽減を図ります。治療と同時に、首を後ろにそらすような姿勢を裂けたり、転倒に注意するなどして症状の悪化を防ぐことも重要です。

これらの保存療法で効果が見られなかったり、歩行や排尿機能に影響が出て日常生活に支障をきたしている場合には手術療法が選択されます。
脊髄への圧迫を取り除く除圧と、不安定な椎間を安定させることを目的として手術が行われます。具体的には、骨化部分が大きい場合は神経を圧迫している骨化靭帯の一部を取り除き、骨で固定する方法そ、骨化部分がそれほど大きくない場合には骨化靭帯には触れずに脊柱管を拡張する方法など、症状に合わせて手術方法も選択されます。