流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)(小児)

初診に適した診療科目

流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)(小児)はどんな病気?

流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)(小児)は、一般的にはおたふくかぜの名前で知られている主に子供に見られる感染病です。
ムンプスウイルスと呼ばれるウイルスの感染によって移ります。感染力は、麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)に比べると強くありません。多くの場合、頬の痛みと腫れで発病に気づくことがほとんどです。発病前に首の痛みや頭痛を訴えることが時にあります。頬の腫れは1~3日でピークに達し、その後3~7日くらいでひいていきます。片側の頬部(耳下腺部)の腫れに気づいてから、1~2日後に反対側が腫れてくる場合もあり、両方同時に腫れる場合ばかりではありません。
なかには一方の耳下腺の腫れだけで終わることもあります。耳下腺が腫れている時に発熱を伴うこともありますが、多くの場合軽い発熱で40℃を超えることは比較的珍しいです。
5人に1 人くらいは発熱がみられません。主な症状は激しい頭痛と嘔吐、食欲減退、発熱、けん怠感などです。

主な症状

流行性耳下腺炎の症状は重篤な状態になることはまれです。平均18日前後の潜伏期の後、発症します。
唾液腺が腫れ上がり手のひらで押すと痛みを感じます。また飲み込んだ際に痛むので食欲がなくなり、不機嫌になります。熱は40度を超えることはほとんどありません。
全く発熱しない場合もあります。1〜2週間で快方に向かうことが多いです。
唾液腺膨張は、両側または片側のみに見られますが、顎下腺、舌下腺が腫れることもあります。腫れがピークになるのはほぼ48時間で、それ以降は腫れは徐々に引いていきます。腫れていると喉に痛みを感じ、食欲がなくなります。特に柑橘類のジュースなど酸味のある飲み物や酢を使った料理、辛味のあるものは喉が痛くて食べられなくなります。合併症無菌性髄膜炎が合併症としてまれに見られます。軽症ですが、流行性耳下腺炎に疾患した場合の10%に発生する可能性があります。中枢神経症状を伴う場合も。思春期を過ぎてからは睾丸炎や卵巣炎になる場合もあるので注意が必要です。

主な原因

病原体のムンプスウイルスによる感染が原因です。ムンプスウイルスは11934年にJohnsonとGoodpasture によって原因となる病原菌が観察されました。
罹患者の唾液や尿、血液、母乳などにムンプスウイルスが見られます。流行性耳下腺炎が発症する7日前から発症した11〜14日までの患者から感染します。流行性耳下腺炎が発症した日がピークで、日が近いほど感染率は高いです。
麻疹や水痘ほどの感染力はありませんが、かなり高い感染力を持っています。主に唾液のついた手で触った部分の接触やくしゃみなどの飛沫感染でうつります。
耳下腺が腫れるまでは特に症状がないため、普通に学校に通っている患者がほとんどです。そのため、学校などでの集団感染が起きやすい傾向です。最初に流行性耳下腺炎を観察したのは紀元前5世紀のヒポクラテスだそうですが、やはり軍隊の集団生活で発見しました。流行性耳下腺炎は軽症な場合が多いですが、合併症になる可能性もあるためワクチンの接種が推奨されています。

主な検査と診断

流行性耳下腺炎の診断方法は基本的に耳下腺の腫れなど症状によって判断され、検査の必要性はありません。多くの場合、保育園や幼稚園など集団生活での感染が多いため、自治体からの感染情報と病歴が診断の基準として利用されます。
流行性耳下腺炎は一度罹患すると体内に抗体ができることがほとんどです。そのため、2度目の罹患はあまり考えられません。しかし、発症する可能性が全くないわけではありません。
またムンプスウイルスに感染したとしても症状が出ない場合もあるため、自覚した病歴だけで感染したかどうかを判断することはこんなんです。そのため診断が難しい場合は血液検査を行うこともあります。コクサッキーウイルス、パラインフルエンザウイルスなども耳下腺が腫れる症状を伴うウイルスです。
何度も繰り返し発症する反復性耳下腺炎とも間違われることがあります。反復性耳下腺炎は、流行性耳下腺炎と異なり、ほとんどの場合体温は37度台で軽症です。

主な治療方法

現時点では流行性耳下腺炎に直接効果を上げる治療法はありません。
自然に完治し、重篤になることがほとんどないため、対処療法を行います。
発熱や痛みには解熱剤や鎮痛剤が処方されます。腫れがひどいと食べ物を噛んだり飲み込んだりが難しい場合が多いです。
そのため、できるだけのどごしが良い刺激の少ない食物を選びましょう。ゼリーなど口当たりが良く、噛む必要がほとんどない飲み込みやすいものがベストです。その他、ポタージュスープやヨーグルト、果物(りんごなど)のすりおろしなどもおすすめです。オレンジジュースなど酸味のあるものは痛みが増すので避けるようにします。熱が高いときは、脱水症状を予防するために頻繁に経口補水液や牛乳などを与えるようにしましょう。
喉の痛みが強過ぎて飲み物を拒否し、脱水症状が心配な場合は点滴をする場合もあります。顔の腫れや痛みには保冷剤や冷却シートなどで冷やすと気持ち良く、痛みが軽減されるかもしれません。