反復性肩関節脱臼 ハンプクセイカタカンセツダッキュウ

初診に適した診療科目

反復性肩関節脱臼はどんな病気?

反復性肩関節脱臼とは肩の脱臼が癖になり、繰り返しおこる状態を指します。
全身の関節の中でも肩関節は反復性脱臼が最も多くみられる関節と言われています。
肩関節はもともと構造が不安定な関節な上に全身の中でも頻繁に動かす部分であるためです。

外傷性の脱臼に続発して発症することが多く、何度も繰り返すうちに寝返りやくくしゃみなど日常生活における軽い動作でも脱臼が起こりやすくなります。
このように脱臼が癖になってしまうのは若年層に多いとされており、中高年に比べ肩関節を包む軟部組織が柔らかいためです。また若年層は活動も活発で、受傷した後も同じスポーツを継続するため再発のリスクも高いと言えます。

肩関節の脱臼は外傷性のものでは、スポーツ中の激しい接触や事故による転倒などが原因となることが多いです。中でもスポーツをする人に多く、ラグビー、アメフト、柔道など体の接触が多いスポーツで特に起こりやすい特徴があります。外転・外旋位を強制されることで起こる前下方脱臼が大多数を占めます。

主な症状

反復性肩関節脱臼は日常生活を過ごしている中で痛みを感じることはほとんどありません。
しかし肩関節が脱臼しやすい不安定な状態になっているため、外転・外旋する動作をしようとすると肩関節前方に不安定感があり、軽い圧痛を生じることもあります。それによってボールを投げようとする際など、思い切り腕を振る動作ができなくなる傾向があります。
特に野球など、肩に負担のかかるスポーツをする人にとって影響が大きいと言えます。また、軽い転倒やふと腕を上げたときなどに脱臼してしまうこともあります。

肩関節脱臼は時間がたつほど整復が難しくなるため、受傷後なるべく早く医療機関を受診するようにしましょう。前下方脱臼の場合、前下方に上腕骨骨頭を触れる状態になるため簡単に自分の力で元の位置に戻すことができる場合もあります。

一度目の肩関節脱臼が10代の場合その再発率は高く8割~9割とされています。一方40歳代以降に初回の脱臼をした場合、ほぼ再発は見られません。

主な原因

反復性肩関節脱臼は肩関節が脱臼し、関節包や関節唇などの軟部組織がはがれたりきれたりすることが原因となります。
肩関節の骨は受け皿にボールが乗っているような形状をしています。受け皿の部分が小さく浅いため股関節よりも大きく動く反面、不安定で脱臼を起こしやすいという特徴を持っています。

通常腕をひねった際、関節上腕靭帯と呼ばれる靭帯が脱臼を起こさないように抵抗する働きを持っています。
これが事故やスポーツでの接触など強い力がかかることで関節唇ごと関節上腕靭帯がはがれたり、関節窩が骨折したりして脱臼します。関節唇がはがれたままになることが再脱臼の大きな原因と言えます。
脱臼する回数が増えると受け皿となる部分がすり減り、靭帯にも傷がつくためさらに脱臼しやすくなるというループになります。

また、若年層に反復性肩関節脱臼が多い原因は肩関節を包む軟部組織に柔軟性があるためです。年齢を重ねると次第に関節がかたくなってくるため、中高年の脱臼の再発は多くありません。初回脱臼の年齢が反復性肩関節脱臼に移行するかに大きく影響します。

主な検査と診断

反復性肩関節脱臼の検査と診断にはレントゲン検査が用いられます。
脱臼時の骨の様子と通常時の骨の様子は明らかに異なるため、レントゲン検査で確定診断が可能です。またこの際に骨折していないことも併せて確認します。

また、診断や検査を受ける段階で脱臼していない状態の場合にも問診やレントゲン検査などによって診断が可能です。
特に脱臼の既往歴、外転・外旋する動作で不安感を感じる、肩関節前方の不安定感や圧痛などが特徴で、診断の助けとなります。レントゲン検査では肩を2方向撮影、内旋位前後方向撮影などで骨頭のすり減りを確認します。
また、関節内に造影剤を注入して行われる関節造影検査やCT検査では関節唇など軟部組織の損傷を詳しく確認することができます。
関節造影検査は手術方法や手術をするかどうかを判断する際にも用いられます。

また、明らかな外傷の経験がなくても脱臼の不安感を持つ人がおり、これを動揺肩と呼びます。この場合検査を行っても関節の構造はほぼ破壊されてない状態であることが分かりますが、手術による治療が選択されることもあります。

主な治療方法

反復性肩関節脱臼の治療には手術が選択されます。
一時的な脱臼であれば脱臼した骨を手でもとの位置に戻す徒手整復などが一般的です。
手術の他にも脱臼の保存療法としてはインナーマッスルを鍛える方法などがありますが、反復性肩関節脱臼においては改善が見られないことが多いです。
日常生活やスポーツ活動で脱臼を繰り返し反復性肩関節脱臼に移行してしまい、活動が制限されるような場合には脱臼の根治を目指す手術が選択されます。

手術では皮膚を2~4か所切開し、内視鏡を入れて行われる方法が一般的です。
関節窩にアンカーと呼ばれる糸の付いたおもりのようなものを打ち込む方法や、骨を移植して補強を行う方法、上腕骨に関節包と腱板を縫い付ける方法などがあります。手術後は関節や筋肉の運動などのリハビリテーションが行われます。また、腕をひねったり、後ろに手をつくなど再脱臼を引き起こすような動作を避けるようにします。接触の多いスポーツへの復帰までには約6カ月程度必要とされています。