ホルモン耐性前立腺ガン ホルモンタイセイゼンリツセンガン

初診に適した診療科目

ホルモン耐性前立腺ガンはどんな病気?

ホルモン耐性前立腺ガンは精巣や副腎で作られた男性ホルモンによって刺激され増殖するがんです。
前立腺は男性ホルモンの命令で精液をつくるところで、前立腺ガンは男性ホルモンの影響を受けて増殖する性格をもったままガン化するものがほとんどです。

一般的に男性ホルモンの産生を抑えるような治療が行われます。しかし、なかには悪性度が強くホルモン療法が効かないガンや、治療を続けていくうちにホルモン治療を行っているにも関わらずがん細胞が再度増殖してしまうものがあり、これらの状態の前立腺ガンをホルモン耐性前立腺ガンと呼びます。

ホルモン療法を開始してもPSA(前立腺抗原)値がまったく下がらず、排尿困難や骨転移による腰痛などが悪化する場合と、一旦はPSA値が下降するものの、2年程度でホルモン療法の効果が弱まり、PSA値が再上昇し前立腺再腫大による排尿困難の再燃、新たな転移の出現などが起こる場合とがあります。ホルモン耐性前立腺ガンでは薬を変更するなど、治療法を状況に合わせて変えていく必要があります。

主な症状

ホルモン耐性前立腺ガンの症状は一般的な前立腺がんと同様です。初期の段階で自覚症状はない場合が多く、これは前立腺ガンの約7割が前立腺の辺縁域に発生するためです。

早い段階で見られる症状には、尿が出にくい、排尿の回数が多い、尿線が細くなる、尿線が中絶したりタラタラ垂れるなどが挙げられます。これらの症状は前立腺にできたがんが大きくなったことで、排尿に関わる尿道を圧迫するために起こります。同様の症状を示す疾患のひとつに前立腺肥大症というものがあります。前立腺が肥大する疾患で、前立腺がんと前立腺肥大症が同時に起きるケースも少なくありません。前立腺肥大症が疑われて検査をしてみると、合併している前立腺ガンが発見されるといった場合もあります。

さらに進行が進み、骨やリンパなどに転移すると血尿や、血精液、腰痛、EDなども見られます。進行性の前立腺がんはリンパや骨に転移しやすいのも特徴で、リンパへでは下肢のむくみ、骨への転移では痛み、下半身の麻痺を引き起こすこともあります。

主な原因

ホルモン耐性前立腺ガンの原因は男性ホルモンを低下させるためにホルモン治療を続けていく中でがん細胞が性質を変化させ、男性ホルモンが抑えられた状況下でも生き延びる力を持ってしまうために起こるとされています。
これによって初回ホルモン療法で効果が出にくい細胞が増え、ホルモン耐性前立腺ガンになります。

そもそも前立腺ガンになる原因としては、家族歴や高齢化などが挙げられます。また、影響が大きいと考えられているのが食生活です。食の欧米化が進んだことにより摂取される食品が変化してきており、脂質・肉類の摂取量の増加、カルシウムの過剰摂取などについては近年研究が進められています。また、喫煙などの生活習慣、肥満なども前立腺がんのリスクを高める一因ではないかとされています。

ホルモン耐性前立腺ガンに限れば、治療を行った結果起こるものであり予防することは難しいと言えます。そのため普段の生活習慣において飲酒や喫煙、規則正しい食生活を心がけることでガンのリスクを少しでも下げるよう心掛ける他に対策がないのが現状です。

主な検査と診断

ホルモン耐性前立腺ガンは、まず前立腺ガンの検査、診断が行われ、ホルモン治療が行われたのちにその結果によって診断されるものです。

前立腺ガンの検査にはPSA測定、直腸指診、MRI検査、生検検査などが行われます。
中でもPSA測定は腫瘍マーカーとして現段階で最も有用であるとされている方法で、定期検診でも取り入れられています。がんの進行度の推定、治療効果の判定、再発の診断などにも活用されます。

肛門から指を入れて診断する直腸指診は古くから行われる診断方法で、直腸から前立腺に直接触れることで、ある程度大きさのあるがんを診断できます。MRI検査による画像検査では高い精度で前立腺がんの描出ができるため、さらに詳しくがんの広がりや大きさを確認したい場合にも活用されます。さらに細胞を採取して行う生検検査で確定診断となる流れがほとんどです。

診断が確定し、ホルモン療法で治療を行う中でがん細胞が再度増殖するなどが見られた場合にはホルモン耐性前立腺ガンとなります。

主な治療方法

前立腺ガンの治療では、手術や放射線療法の他に、ホルモン療法が選択されることも多いです。
男性ホルモンの産生を押さえたり、前立腺内への取り込みを押さえたりすることでがんを治療していく方法です。
ホルモン治療は永久的に効果があるというわけではなく、初回のホルモン治療の平均的な効果持続期間は3年とされています。
ホルモン治療の効果がなくなることで、前立腺がんは再び増殖するようになり、ホルモン耐性前立腺ガンとなります。

ホルモン耐性前立腺ガンに効果が見込まれるとされている薬剤がクスタンジ、ザイティガなどの内服薬、ドセタキセル、ジェブタナなどの注射薬、骨転移治療薬であるゾーフィゴなどが挙げられます。中でも最も早く有効性が示されているのがドセタキセルです。ホルモン耐性前立腺ガンは根治することは不可能で、治療はがんの進行を抑えるために行われます。そういった理由から痛みなどの症状がある場合にのみ使用し、症状がない場合には使用するケースは少ないと言えます。