薬物性肝障害 ヤクブツセイカンショウガイ

初診に適した診療科目

薬物性肝障害はどんな病気?

薬剤性肝障害とは、医療機関で処方された薬ややドラッグストアで購入した薬、サプリメントなど薬剤の使用が原因で起こる肝障害の総称です。
薬の他、毒物や化学物質も原因となります。

中毒性肝障害、蓄積性肝障害、アレルギー性肝障害の3種類に分けられ、そのほとんどはアレルギー性肝障害とされています。
アレルギー性肝障害はアレルギー反応によって発症したり、特殊な代謝経路によって発症するものです。薬剤投与量に関係なく起こるのが特徴で、繰り返すとショック症状を起こすこともあるため注意が必要です。多くの場合は軽度で、経過も良好なケースがほとんどですが、まれに劇症化し命に係わることもあります。

症状としては、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛などの消化器症状、全身倦怠感、黄疸などが約半数の人にみられますが、特徴的な症状は発熱、発疹(薬疹)、かゆみです。薬剤を使用したあと、これらの症状があらわれた場合は、薬剤性肝障害が疑われます。

主な症状

薬物性肝障害にはさまざまな症状があります。薬剤が体内に入るとその大部分は肝臓に運ばれます。
そして肝細胞内の蛋白によって処理され、効果を発揮したり作用を弱められたりします。その過程で、肝臓の細胞自体にダメージが加わるケースと、胆汁がうっ滞するケースがあり、共通する症状としては発熱、全身の倦怠感、食欲不振などが挙げられます。
しかし高い割合で自覚症状がなく肝機能の検査で障害が発覚するケースも少なくありません。その他にも、薬物性肝障害の場合には黄疸で皮膚が黄色くなる、皮膚にかゆみが出るなどの症状もあります。

中でも劇症肝炎に進行する危険があるのが解熱鎮痛薬や痛風薬、抗がん剤などが原因の薬物性肝障害です。
命にも関わる危険があり、早期診断と早期治療が重要です。また、アレルギー性の薬物性肝障害では、肝障害よりも先にアレルギー症状が現れることも多いのが特徴と言えます。

近年では漢方などの輸入薬剤やサプリメントによる肝障害も増えており、薬の使用にも注意が必要です。

主な原因

薬物性肝障害は中毒性、アレルギー性、異常代謝性の3種類に大きく分けられそれぞれ特徴があります。
中毒性の薬物性肝障害では、解熱鎮痛薬や抗がん剤などが原因となることが多く、服用後すぐではなく長く飲み続けることで発症する点が特徴です。
薬物そのものや、薬物が分解されてできた物質が肝臓にダメージを与えることで薬物性肝障害を引き起こします。
次にアレルギー性の薬物性肝障害では、ある特定の薬物に対して起こるアレルギー反応が原因となり肝障害を引き起こします。あらゆる薬物に起こりうる可能性があり、特に抗菌薬によるものも多いとされています。
内服後、数週間で発症する場合が多いです。 最後に異常代謝性の薬物性肝障害は、生まれ持った体質、遺伝的な要因で特定の種類の薬物を体内で分解することができないために肝臓に大きな負担がかかることで肝障害を引き起こします。薬を服用してから症状が現れるまでに幅があり、早ければ1週間ほど、長ければ1年以上かかる場合もあります。抗結核薬や抗てんかん薬に多いとされています。
 

主な検査と診断

薬物性肝障害の検査と診断は服用した薬物内容の確認に始まり、行われる検査は肝障害を引き起こすその他の病気の可能性を除外するために行われます。

数種類の薬物を服用している場合には、どの薬物が障害を引き起こしているか判断が難しいこともあります。近年健康食品や漢方、サプリメントなどを摂取している人も多く、これらも原因のひとつとして選択肢に入れておかなければなりません。

血液検査では肝障害の程度や肝機能の数値を調べることができ、特に好酸球と呼ばれる細胞の増加などを確認します。
また必要に応じて肝炎ウイルスマーカーを用いて他の病気の可能性を探る場合もあります。
同じく他の肝疾患を確認するために、腹部超音波検査、腹部CT検査等の画像診断が行われます。

アレルギー性の薬物性肝障害が疑われる場合に用いられるのがリンパ球培養試験、パッチテストなどの薬物感受性試験です。
これらの検査を行っても他の肝疾患との区別が難しい場合、組織を採取して顕微鏡で確認する肝生検が行われることもあります。

主な治療方法

薬物性肝障害の治療はまず原因となる薬剤の服用を中止することが最も有効であるとされています。
軽症の場合は、薬剤を中止することで比較的速やかに回復に至るケースが多いです。
服用を中止しても症状が改善しない、症状が重篤化しているような場合には入院して栄養療法や薬による治療が行われます。まずは低たんぱく、低脂肪の食事により、肝臓の負担を減らすことができます。
さらに飲酒によっても症状が重篤化することがあるため、治療の間は禁酒をすることも重要です。

また、必要に応じて肝臓を保護するために、細胞を安定化させるための薬や胆汁の排出を促す薬も併せて使用します。
アレルギー性の薬物性肝障害の場合、1度目に発症した時より2度目のほうが重篤化する危険性があります。そのため原因となった薬剤は今後一切使用しないようにします。
医療機関に受診した際には、その旨が分かるよう記録したものを提出し、自分の身を守る必要があります。特に初めての医療機関を受診する際は注意が必要です。