前立腺肥大症

初診に適した診療科目

前立腺肥大症はどんな病気?

前立腺は会陰部のところにある男性にしかない組織で、尿の通り道である尿道を取り囲むように存在しています。
個人差がありますが前立腺は加齢とともに、中を貫く尿道の周囲組織が肥大してきます。
その肥大したサイズや形態によって、尿道が押しつぶされ狭くなるために排尿に時間がかかる・若い頃と比べて尿の勢いが弱い・残尿感などの症状が出て来るのが前立腺肥大症と呼ばれる疾患です。

主な症状

前立腺肥大により尿道が狭くなると、尿の勢いが弱くなり排尿時間が長くなります。また腹圧をかけないと出てこない・何度も尿が途切れる・し終わっても残尿感がある、などの症状が出てきます。
そのほか、尿意を感じてからトイレに行くまで我慢できない切迫感が出てきたり、夜間何度も排尿のために起きる必要が出てくることもあり、これらは生活の質をかなり低下させます。
治療しないまま肥大が増悪すると、したくても排尿できなくなる尿閉や、常に残尿が残るため膀胱内に結石が溜まったり細菌感染を起こしやすくなることがあり、このような場合は早期治療を考慮します。

主な原因

加齢により男性ホルモンを女性ホルモンに変換させるアロマターゼ活性化が高まります。これにより若い頃とは体内の男性ホルモンと女性ホルモンの比率が変化するのですが、これが前立腺組織の肥大を促進することがわかっています。
また慢性疾患などが原因で前立腺組織に慢性炎症や血流障害が増えてくると、肥大が増悪することがわかっています。

主な検査と診断

かつては前立腺のサイズが大きいほど重症と考えられていましたが、実際に排尿症状に影響するのは前立腺そのものの大きさではなく、肥大のせいでどれだけ尿道を狭めているかという形態のほうが重要です。
そのため超音波でサイズを測定するのは重要な検査ですが、治療介入するのはいかに困る症状があるかのほうが重要です。

まずは上記の症状などをIPSS質問用紙などでスコアリングします。
これまでの持病・手術歴などから前立腺肥大症以外に排尿困難の原因がないかを除外します。
前立腺癌が隠れていないか、直腸ごしに前立腺を触診し、大きさや硬さを確認し、PSAという前立腺癌腫瘍マーカーもチェックします。
尿の勢いやかかる時間を尿流測定で確認し、前立腺サイズや排尿後の残尿を超音波で確認します。

主な治療方法

薬物内服治療と手術治療があります。
 
薬物としては以下のものを症状・サイズに合わせて使い分けます。
前立腺肥大部の筋肉を弛緩させて狭窄を解除するα1ブロッカーは狭窄症状が強い方に効果があります。副作用にはめまいや射精したときに精液がでにくくなる逆行性射精などがあります。
前立腺サイズが大きくて症状が強い方は前立腺のサイズを縮める5α還元酵素阻害薬を使用します。効果が出るまで数ヶ月かかることと、前立腺腫瘍マーカーであるPSAが見た目低下しますので、前立腺癌検診の時は内服していることを必ず医師に伝える必要があります。
前立腺や膀胱の慢性炎症がある場合はPDE5阻害薬を使用します。前立腺や膀胱周囲の血流を改善させることで炎症をおさえ、排尿を改善します。心臓の持病が在る方では使用できないことがありますので、事前に医師に確認して下さい。
 
手術治療として、現在開腹手術はほぼ行われません。尿道から内視鏡を入れて、身体に傷をつけずに大きくなった前立腺を削ったり焼灼して尿道を広げることができます。
電気メスを用いるTUR-Pは歴史があり、行われる病院が多いです。
そのほか最近では肥大した前立腺の内部をレーザーで完全にくり抜くHoLEPや、肥大部をレーザーで蒸散させるPVPやCVPといった術式を行う施設も増えています。