慢性便秘 マンセイベンピ

初診に適した診療科目

慢性便秘はどんな病気?

慢性便秘とは、大腸内に便がとどまり、数日以上も便通がない症状(=便秘症)が日常的に起こるものです。
慢性の便秘とは、旅行などで食事や生活環境が急に変化して起こる一過性の便秘ではないものを指します。

症状は個人差が強く、一般的には不快感、腹部膨満感、腹痛、食欲不振などです。
慢性便秘の原因が病気である場合は、その病気の治療を行うこと、それ以外の場合は、食生活の改善や規則正しい排便習慣などにより完治します。
排便の回数や量、硬さなどには個人差があります。そのため便秘という状態を一概に定義することは難しいですが、ガイドラインでは「本来体外に排出すべき便を十分量かつ快適に排出できない状態」を便秘とし、6か月以上前から症状が現れ、その状態が直近で3ヵ月以上続いている状態を慢性便秘としています。

日本人では人口の約28%の人が便秘に悩まされており、よく見られる病気の一つです。特に慢性便秘は20~60歳では女性に多く、年齢を重ねるほど有症率も高くなります。

主な症状

便秘の症状が症状が3カ月以上続く場合に慢性便秘と診断されるのが一般的です。
そのため慢性便秘の症状は便秘症状とほぼ同じで、排便回数減少型と排便困難型のふたつに大きく分類されます。
排便回数が少なくなると腹痛や腹部の張りを感じます。また便が硬かったり逆に軟便になることで排便が困難になり、強くいきむ必要があったり
残便感を生じる場合があります。

さらに具体的には、下剤を飲まないと便が出ない、お腹が張る、腹痛、吐き気、食欲不振などが挙げられます。たまった便やそれに伴うガスの発生によって痛みや張りとして現れます。
腸内環境のバランスが乱れることでおならがたくさん出る、臭いが気になる、ニキビなどの肌荒れの原因になることも多いです。食欲不振の原因は便が排出されずたまることで新しい食べ物を腸に送り込みにくくなるためです


便秘の症状が長期間続くと痔、腸閉塞、腸炎、腸管穿孔などを引き起こすケースもあります。便秘症によって便の水分が再吸収され硬くなることでこれらの疾患を引き起こします。

主な原因

慢性便秘は消化管に異常がある器質性便秘と消化管に異常がなく消化管の動く力に異常がある機能性便秘の2種類があり、それぞれ原因が異なります。

まず器質性便秘とは大腸の病気など形に異常があることで排便がスムーズにできなくなってしまうものです。大腸がんやクローン病などが代表的で、大腸の内部が狭くなってしまうために便秘が起こります。便が大腸を通過するのに時間がかかったり、ひどい場合には大腸の中で便が完全に止まってしまう腸閉塞を引き起こすこともあります。
その他、巨大結腸症や直腸瘤などの疾患も便秘の原因となる可能性があります。

次に機能性便秘とは大腸の形には異常がなく、動く力に異常があるもので、その多くは特発性で明らかな原因がありません。原因となりうるのは食物繊維の不足や運動不足などの生活習慣、持病、副作用がある薬による場合があります。また、腹筋の筋力が低下することでいきみにくくなったり、排便の際に肛門を締めてしまう異常も排便能力低下の一因となることがあります。

主な検査と診断

慢性便秘の検査には血液検査、腹部X線検査、CT検査、内視鏡検査などが行われ、必要に応じて注腸造影検査や排便造影検査なども行われる場合があります。

血液検査ではホルモン分泌異常や大腸がんといった慢性便秘を引き起こす病気がないかを調べることができます。腹部X線検査やCT検査では、大腸の中にたまった便の状態を大まかに確認したり、さらに詳しく確認するために行われることが多いです。大腸内には便がたまっているものなので、より詳しく調べたい場合に腹部CT検査を行います。

また、大腸の内視鏡検査は一般的に便潜血検査で便に血が混じっていた場合などに行われることが多く、大腸に発生した病気、主に大腸がんの有無を調べることができます。
さらに大腸の内部が狭くなる病気がないかを調べるために注腸造影検査が行われることもあります。

排便機能の異常が疑われる場合には排便造影検査によって排便がうまくいかない原因を調べます。便と同じような硬さの造影剤を直腸内に注入し、患者は実際の排便時のように便座に座って検査を行います。

主な治療方法

慢性便秘の治療は食事・生活習慣の指導に加え、排便習慣の指導、薬物療法が併せて行われるのが一般的です。
大腸がんやクローン病など原因となる病気がある場合にはその治療が行われます。

病気が原因ではない慢性便秘の場合、治療の中で最も重要なのは食事や生活、排便習慣の改善とされています。
まずば食物繊維を適切に摂取するなど規則正しい食生活、適度な運動、便意を感じた場合すぐに排便をする排便習慣を徹底することも欠かせません。便秘になった場合に、便意がないのにトイレへ行き長時間いきむという方法は誤りです。

これらの習慣を見直しても症状の改善が見られない場合には薬物療法も用いられます。便を柔らかくする薬や下剤などを使用します。便の硬さを保って排便回数を安定させるには一般的にまず非刺激性下剤を毎日内服します。刺激性下剤は一時的な使用に限る場合が多いです。

腹筋の筋力低下や肛門機能の異常には専門的な治療も用いられます。直腸内の便をうまく出せなくなってしまう直腸瘤には外科的な手術が行われることもあります。