軽度発達障害

初診に適した診療科目

軽度発達障害はどんな病気?

軽度発達障害は、学習障害、注意欠如多動性障害(ADHD)、高機能広汎性発達障害等の発達障害を包含する概念です。
知的障害を伴わない発達障害で、今日の特別支援教育を整備する過程で、用いられるようになったものです。
これらの障害をもつ子どもには、特別の教育的ニーズがあり、それらに応じて教育的支援を必要としていることが認められ、この言葉が生み出されました。現段階で発達障害は脳の発達の違いによるものであり、ストレスなどによって起きる心理的変調ではないとされています。

知的障害を伴わないことから、周囲には「少し変わっている」という見られ方をすることも多いです。アスペルガー障害を含むPDDは女性より男性の割合が多いとされています。マイペースで一人行動を好む、間を読んだり比喩的な表現が苦手などの特徴があります。また、ひとつのことを極める力が優れていたり、記憶力に優れているなどの長所とも言える特徴もあります。

その特徴や症状を理解し、それぞれに合わせた支援を行うことが重要とされています。

主な症状

軽度発達障害の症状には特定の読み・書きなどを苦手とする学習障害や、落ち着きがない、不注意などの特徴がある注意欠陥・多動性障害、人とのコミュニケーションを苦手とする自閉スペクトラム症などが含まれます。

中でも自閉スペクトラム症は社会性、コミュニケーションと大きく関わるもので、軽度発達障害の中でも広く知られている障害と言えます。
人とのつきあい方のルールや社会の常識が理解しにくいなど社会性の獲得が困難を感じるケースが多いです。
また、会話や身振りでのやりとりなどコミュニケーション全般を苦手とする傾向がありますが、アスペルガー症候群の場合はこの特徴が目立たないこともあります。いつもと変わらないことを好み、はじめての場所や予定の変更を嫌がる傾向もあります。

注意欠陥・多動性障害では年齢と見合わない多動・多弁・行動が特徴で、7歳までに症状が現れるとされています。
学習障害は「読む」「書く」「計算する」「話す」などのうち特定の事柄にのみ困難を感じることが多く、これらの力が必要となる小学生の頃に気が付く場合が多いです。

主な原因

軽度発達障害の原因は先天的な脳機能の異常によるものとされています。
その要因やメカニズムのほとんどがいまだ解明されていない状況ですが、胎児期の風疹感染や脆弱X症候群、結節性硬化症、フェニルケトン尿症などの感染症と合併するケースがまれにあるとされています。

以前は小児期に接種するワクチンの中に自閉スペクトラム症と関連するものがあるとされ、予防接種が差し控えられた時期がありましたが現在ではその関連性は無いとされています。

親の愛情不足や育て方が原因となるというのは誤りで、症状が現れるにも環境要因をはじめ様々な要因が関係しているとされています。生まれつき脳の発達が通常とは異なるため、幼児の頃から症状が現れることがほとんどです。標準的な育児ではうまくいかなかったり、成長するにつれて本人が生きにくさを感じることもあります。ただ、その特性を本人や家族・周囲の人が理解することで本来の力を発揮するサポートができます。

主な検査と診断

軽度発達障害の検査は特徴的な症状から診断を行うのが一般的です。現在のところ明確な診断基準はなく、メカニズムも不明な点が多いためです。
具体的には面談や、チェックリスト、脳波を調べるなどの生理学的な検査、心理検査などを必要に応じて行い、それらの結果を総合的に判断し診断を行います。

診断基準は精神疾患の診断・統計マニュアルの「DSM-5」、WHOの「ICD-10」(『国際疾病分類』第10版)などが主に用いられます。

また、感染症などの合併が疑われる場合には各臓器の腫瘍など、伴う症状について検査を行います。脆弱X症候群などは遺伝子異常によって発症すると言われています。その他にも新生児の頃に行うマススクリーニングの対象となっている疾患もあり、フェニルケトン尿症などが含まれています。

軽度発達障害の症状は多岐に渡るため、子どもの頃に診断がつくこともあれば大人になってからも一人で悩みを抱えている患者も多くいます。

主な治療方法

軽度発達障害の治療にはそれぞれの症状に合った方法が選択されます。
特性に応じた療育と必要な場合には薬物療法が併用されることもあります。

例えば自閉スペクトラム症に対しては社会的なスキルを身に着けて社会生活を送ることを目指し、コミュニケーション能力や適応力の発達を促すための療育を行います。適切な療育のためには、弱い、あるいは欠けている面だけでなく、強い領域を含めて包括的な評価がなされなくてはなりません。

学習障害に対しては無理に苦手分野の克服を促すことで症状が悪化したり、意欲や自己肯定感の低下につながる可能性もあります。苦手ではない分野の学習を保障するなどのサポートも大切です。

薬物療法が選択される具体的な例としては注意欠陥・多動性障害に対する治療です。この場合は脳内ドーパミンやノルアドレナリンの伝達機能を強める薬を用います。カウンセリングや心理療法も併せて行われ、ペアレント・トレーニングによって保護者が接し方を学ぶこともあります。