肥満症(小児) ヒマンショウ ショウニ

初診に適した診療科目

肥満症(小児)はどんな病気?

肥満症とは、肥満を原因として病気を合併したり、肥満が関って病気を合併する、もしくはそのような可能性がある状態を指します。
肥満であること自体は疾患にはあたりませんが、肥満症は疾患であり治療が必要です。成人の肥満の場合指標とするのがBMIと呼ばれる値ですが、小児の場合は標準体重に対して体重がどのくらい上回っているかを示す肥満度という指標でも診断がされています。

特に小児の肥満症も大人と同様に進行すると糖尿病や高血圧などを合併しやすく、動脈硬化や心筋梗塞などのリスクも高まります。小児の肥満症の特徴として、学習など日常生活に影響が出やすいという点が挙げられます。肥満に伴って関節障害を起こしたり、骨折をしてしまったり、走る・飛ぶなどの能力の低下、いじめの原因となるリスクなども報告されています。また、小児期の肥満は思春期や成人期へそのまま移行するケースが多く、小児の肥満症はその後の長い人生にも影響を与えかねない疾患と言えます。
 

主な症状

肥満症は一般的に無症状ですが、肥満であることによって特に2型糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病と呼ばれる合併症を伴うケースが多いです。
これらの合併症は動脈硬化を促進するため、同時に将来脳卒中や心筋梗塞を起こすリスクも高めてしまいます。動脈硬化は成人に限らず小児期から進行します。

また、日常生活においても様々な障害となるケースがあります。特に小児の場合は学校生活への影響が顕著で、体重が重いために起こる関節障害や骨折、股ずれ、走行・跳躍能力の低下は体育の授業などでも障害となります。また、女児に至っては月経異常として現れることもあります。

特に年長児の肥満は大人の肥満へ移行する確率が高いというデータがあります。また思春期の頃に肥満になると生活習慣が定着してしまうことや、その時期に大きく身長が伸び体系が形成されてしまうため、肥満の状態が定着してしまう可能性が高いのです。これらの理由から、小児期における肥満症の治療は重要で、なるべく早期に開始すべきです。

主な原因

肥満症の原因は小児の場合ほとんどが摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることによる単純性肥満です。
食事やおやつの過剰摂取と日常の活動量・運動量の低下が大きな原因です。細かく要因を見ていくと、外遊びが減り室内でゲームをするなど運動量の少ない遊びが増えていることや、車や交通機関を使った移動が増えていること、手軽に食べられるコンビニやファーストフード・自動販売機が増えていること、核家族が増えて食事リズムが変化していることなどの理由があげられます。

小児の肥満が急激に増加したのが1970年代です。この時代には食生活やライフスタイルが劇的に変化していた時代でもあります。2020年現在では、子どもの1割以上が肥満であるというデータも確認されています。

単純性肥満の他には、病気が原因となっている症候性肥満があります。この二つを区別するには、身長の伸びを参考にします。単純性肥満の場合には伴って身長もよく伸びますが、症候性肥満の場合は身長の伸びが悪くなる点が特徴です。

主な検査と診断

肥満症の判定は、まず身長や体重の測定が行われ、脂肪の付着部位を確かめるために腹囲を測定したり腹部のCTを撮ることもあります。
特に内臓脂肪の分布は高血圧や糖尿病などと関わるため早い段階で確認をします。血圧測定や血液検査、尿検査なども併せて行い、現在の健康状態も確認します。

乳児の場合「カウプ指数=体重(g)×10÷身長(cm)÷身長(cm)」で算出します。
このカウプ指数は成人のBMIの算出方法と同様です。カウプ指数は乳児で22以上を肥満としています。性別や年齢ごとに示された基準値なども参考にしつつ診断されます。

また、幼児以上は「肥満度(%)={実測体重(㎏)-標準体重(㎏)}÷標準体重×100」で算出します。肥満度とは、日本人の年齢別、性別、身長別の標準体重を基準として、この値から何%上回っているかを表す数値です。肥満度15%以上を太りぎみ、20%以上をやや太りすぎ、30%以上を太りすぎとしており、平均して20%以上の場合を肥満とする場合もあります。

主な治療方法

肥満症の治療はまず健康障害の原因となっている肥満を解消することから始まります。
一般的には食事療法と運動療法を併用する形が選択されます。食事を制限するだけでは、体を作る上で欠かせない骨格筋の減少につながる恐れがあります。摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを整えてあげることが重要となります。高度肥満症の場合は、まれに食欲抑制を目的とした薬物療法、外科療法が検討されることもあります。


症候性肥満であれば、その原因を特定し、それを解消するための治療を食事療法と合わせておこないます。単純性肥満であれば、食事や運動を含めた生活習慣を見直し、改善するようにします。軽度の肥満であれば、無理な減量をするよりも、現状よりも太らないように注意することで、成長とともに身長と体重のバランスがとれるようになります。

いずれの場合も患者本人の努力だけでは継続が難しいケースも多く、専門家の指導のもとに行うのがより効果的です。近年では肥満症専門医のいる医療機関も増えてきています。