肩腱板断裂 カタケンバンダンレツ

初診に適した診療科目

肩腱板断裂はどんな病気?

肩腱板断裂とは、肩関節を安定させ動かすために必要な腱板と呼ばれる部分の一部や全体が断絶する状態を指します。
腱板は肩甲骨と腕の骨を綱ぐ板状の腱です。
肩甲骨と上腕骨の出っ張た部分に挟まれやすい構造をしており、断絶などが起きやすい部分と言えます。
肩腱板断裂を生じると主に肩の運動障害、運動痛、夜間痛などが現れる症状です。
腕を前や横からあげようとした際などに痛みを生じたり、力が入らない、異音がするなどの症状が現れますが、肩がまったく上がらなくなることはありません。
五十肩などと異なる点としては、関節の動きが固くなることは少ないことです。
夜間痛で睡眠がとれなくなり、受診に至るケースが多いです。

特に40歳以上の男性に発症が多く発症年齢のピークは60代とされており、男女比では約3:1となっています。右肩に好発する点も特徴と言えます。

一度切れた腱板は再度繋がることはないとされています。
治療には炎症などを抑える対症療法、運動療法、手術によって腱板をつなぎ合わせる方法などが選択肢となります。

主な症状

肩腱板断裂を生じると、肩を上げ下ろしする際に痛みや引っ掛かりを感じたり、ゴリゴリ・ジョリジョリといった異音が生じる場合があります。
腕の上げ下ろしでは、顔から胸の高さで主に痛みが現れ、その範囲より高い位置や低い位置では痛みを生じにくいのも特徴と言えます。
運動時や夜間に特に痛みの症状が強く現れます。
また、反対の腕で症状が現れている方の腕を持ち上げると動くのに、自力で腕を持ち上げようとすると上がらないというケースも多く見られます。
力が入らなくなったり腕が上がらなくなる症状は、腱板が断裂したことで関節のバランスがくずれることが原因です。
また急性の断裂の場合には断裂とともに激しい痛みを生じ、腕が上に上げられなくなるのが特徴です。

肩腱板断裂で現れる症状は四十肩や五十肩と症状が似ているため、発症していても気が付かずに放置してしまう例も少なくありません。
痛みの症状の多くは2~3週間程度継続するケースが多いですが、徐々に落ち着いていきます。

主な原因

肩腱板断裂を発症する原因としては、加齢によって腱板がすり減ったり痛んだりすることや、肩を打つなどの外傷が挙げられます。
その背景には、腱板が骨と骨にはさまれているため使い過ぎによってすり切れやすいという構造も関連しています。
加齢による影響が大きいため、中年以降に発症することが多い疾患といえます。また肩を打ったりひねるなど、明らかな外傷を原因とする場合がありますが、それは全体の約半数程度です。
残りの半数ははっきりとした原因がなく、日常生活動作の中で断裂が起きるものです。

また、40代以降の男性の右肩に多くみられることから、肩の使いすぎが原因とも考えられています。
外傷などによって一気に断裂したものを急性断裂、老化などによる変性を原因に断裂したものを変性断裂と呼びます。

若い年齢で肩腱板断裂が起きる場合は、投球肩による不全断裂をはじめ、水泳、テニスなど頭より上で腕の動作を行うスポーツが原因となっていることも多いです。

主な検査と診断

肩腱板断裂は、診察、X線検査、MRI検査、超音波検査などの結果から診断されます。
診察では主に、肩が挙上できるかどうか、関節が固まっているか、肩を挙上した際に軋轢音があるか、棘下筋萎縮があるかなどを丁寧に確認します。
軋轢音や棘下筋萎縮が見られる場合には腱板断裂が疑われ、さらに詳しい状態を把握するために画像検査が行われます。
診察によって診断が可能なケースも多いです。

X線検査では、肩腱板断裂を発症している場合には肩峰と骨頭の間が狭くなっていたり、肩甲骨の下の部位に骨のトゲなどが認められることが多いです。
レントゲンでは腱板が映らないため、正確な診断にはMRI検査が不可欠です。
MRI検査では骨頭の上方の腱板部に断裂の所見を確認することができます。

肩腱板断裂の中には長期に渡って五十肩と診断されているケースも多く見られます。
五十肩では1年以上痛みが続くことはほとんどなく、腕の動きが強く制限されるなど肩腱板断裂とは異なる特徴を持ちます。

主な治療方法

肩腱板断裂においては断裂部が治癒することはありません。
ただ約70%は保存療法で軽快が期待できるとされており、注射療法と運動療法などが行われます。
注射療法では主に水溶性副腎皮質ホルモンと局所麻酔剤が用いられます。特に夜間に痛みが激しく、肩関節周囲炎の状態となっている場合に行われることが多いです。夜間痛の症状が落ち着いて場合にはヒアルロン酸の注射へ変更します。また急性外傷によって発症した時には、三角巾で1~2週安静を保つことで自然に症状が落ち着くことが多いです。

また断裂せずに残っている機能を高める目的で行われる腱板機能訓練も有効です。

保存療法では肩関節痛と運動障害が改善しない場合、手術による治療が検討されます。
関節鏡視下手術と直視下手術があり、手術後の痛みが少ない関節鏡視下手術が行われる例が多いです。
大きな断裂の場合には直視下手術が選択されます。どちらの手術も、手術後には固定と機能訓練が必要です。