術後感染症

初診に適した診療科目

術後感染症はどんな病気?

術後感染症とは、手術を行った部分に細菌が侵入することによって手術後発熱や痛みなどが現れる疾患です。
手術部位に膿が溜まることもあります。時間が経過すれば手術創は赤くなり、傷が開いて膿が排出されるのが一般的です。
手術創に金属インプラントなどの異物があるケースでは、特に術後感染症発症リスクが高いとされています。
また手術創から入り込む細菌は皮膚の組織内の皮脂腺、汗腺、空気中などに常に存在している菌であり、細菌に感染するリスクは必ず存在すると言えます。
特に糖尿病や透析を行っている患者の場合、感染の確率が高くなるとされています。

手術を行う部位は十分に消毒され、手術に用いる機器なども滅菌された状態で使用されます。さらに手術前後に抗生物質を投与することで細菌を殺し、予防する他に対策はありません。抗生物質の投与を行ったとしても術後感染症のリスクを完全にゼロにすることはできません。術後感染症を発症した場合には、創を開いて膿を排出する治療などが行われます。

主な症状

術後感染症を発症すると主な症状としては発熱、手術部位の痛み、膿が溜まるなどが挙げられます。
また熱に伴って脈拍が速くなる、血圧が下がる、呼吸数が増える、冷や汗などの症状が現れる場合もあります。手術後にこれらの症状が現れた場合、尿路感染症や肺炎、創部感染、カテ-テル感染、下痢症などによって生じている場合があります。感染症以外にもこれらの症状が現れるケースもあり、中でも多いとされているのが薬剤熱です。
手術後に投与される抗生物質が原因となって発熱しているということがあります。

また、これらの症状が現れることによって治癒が遅くなり、入院日数も長くなることが患者にとって負担となる部分と言えます。

術後感染症は術野感染と術野外感染に分類することができます。術野感染とは手術操作が直接触れる部分の感染症であり、発熱、痛み、膿の症状はこれに含まれます。
一方で術野外感染は手術操作が直接及ばない部位の感染症であり、尿路感染症や肺炎などがこれに含まれます。

主な原因

術後感染症は手術を行った部分に細菌が入って増殖することで発症するものです。
また手術創の中に金属インプラントなどの異物がある場合、感染リスクが高くなり、かつ治りにくいとされています。縫合糸もその一つです。
縫合糸は手術において頻繁に用いられますが体内では異物となり、細菌の温床となる場合があります。かつては絹糸が使用されていましたが、近年では合成吸収糸と呼ばれる糸が使用されており、以前と比較して発症リスクは抑えられていると考えられます。
感染源となる細菌は黄色ブドウ球菌、連鎖球菌に加えて皮膚に常在する菌や、空気中にある菌などさまざまです。
患者に持病がある場合やその他の疾患や治療のために栄養バランスが乱れたりや免疫力が下がっている場合にも発症しやすくなるとされています。

術後感染症は近年SSIとも呼ばれており、SSI対策として手術中、手術後の対策などは徹底して行われています。
基本的に術後感染症は、患者の状態と細菌の悪性度、医療者による治療の結果が関わりあって発症するものです。

主な検査と診断

術後感染症は、まず手術後に熱がなかなか下がらない場合に疑われます。
血液検査を行って白血球数やCRPなどを確認し、手術を行った局所のに発赤や熱感などの特徴的な所見が見られる場合、医師によって診断されます。
診断には発熱の原因がどこにあるかが重要となり、まずは感染症によるものとそれ以外に分類できます。感染症以外の原因としては薬の使用による薬剤熱、血栓・塞栓症、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、痛風、偽痛風発作に代表される結晶性関節炎などが挙げられます。
発熱、痛み、膿などの術後感染症の典型的な症状以外に、これらの疾患が疑われる症状が現れている場合には必要に応じては造影CT検査、レントゲン検査などの画像検査が行われる場合もあります。

また感染症によるものである場合、その感染臓器を特定するために血液培養検査、尿検査、尿培養検査、胸部レントゲン検査などが行われます。
血液培養の結果からカテーテル感染が発見されたり、尿検査から尿路感染症が発見されることもあります。

主な治療方法

術後感染症は治療ももちろんのこと、感染が起きるリスクを減らす予防の対策が重要です。
これをSSI対策と呼びます。例えば手術室の空調は浮遊している粒子が少なくなるような予防が行われており、手術を行う部位の消毒も十分に行われます。
手術器械や体内に入るインプラントは、熱・ガス・放射線などで完全に無菌状態で使用されます。
手術用手袋は吻合終了時に交換され、創閉鎖時には器具を変えるなども徹底されています。
さらに手術前後に抗生物質の投与も行われます。また治療前には患者の免疫低下がなるべくないような治療計画が作成され、手術を行う部位以外に感染がある場合にはその治療を優先し、感染が治まった後に手術が行われることが多いです。
禁煙などの生活指導によって免疫低下を防ぐことも重要です。これらの予防の対策を徹底していたとしても手術後の感染は一定の確率で生じます。

感染が起こった場合は、創を開いて膿を排出する、インプラントなどの異物を抜去するなど必要に応じた治療が行われます。