亜急性連合性脊髄変性症 アキュウセイレンゴウセイセキズイヘンセイショウ

初診に適した診療科目

亜急性連合性脊髄変性症はどんな病気?

亜急性連合性脊髄変性症とは、ビタミンB12が欠乏することによって脊髄の変性が生じる進行性疾患です。
約1万人に1人の割合で発症するとされており、胃切除手術を受けた人や慢性胃炎、悪性貧血、菜食主義、慢性アルコール中毒などと同時に発症するケースが多いとされています。
発症は40歳以上の人に多い傾向があります。

ビタミンB12の欠乏は、食事からの摂取量が不足するためではなくビタミンを吸収することだできないために起こります。
ビタミンB12は、脳からの信号を伝える速度に関連する髄鞘と呼ばれる部分の形成や維持に深く関連しています。
そのためビタミンB12が欠乏すると髄鞘が損傷し、感覚神経線維と運動神経線維にも変性が見られるようになります。脳、視神経、末梢神経にも影響を及ぼす場合があります。

主な症状としては全身の筋力低下、手足のしびれ、脚のこわばりなどが挙げられますが、時にいらだちやすくなる、眠気、錯乱などの症状も見られます。

主な症状

亜急性連合性脊髄変性症を発症すると、初期の段階で現れるのが全身のだるさ、倦怠感です。
全身の脱力感、両手足がチクチクするなどの異常感覚、しびれの症状なども特徴的です。腕と比べて足により早く、より高頻度に影響が現れます。
手足の異常感覚は常に起こるようになり、徐々に悪化する傾向があります。また症状が悪化すると、手足が強張る、自分の手足の位置感覚が分からなくなる、軽度から中等度の筋力低下が起こり歩行困難などもみられるようになります。また反射が弱くなったり、必要以上に活発になったり、消失することもあります。

その他の症状としては視力低下、無関心、眠気、疑い深さ、錯乱、いらだち、認知症、軽い抑うつなど幅広い症状が現れます。
精神機能障害の中には感情の起伏が激しくなり、性格の急な変化を認める場合が多いです。他人に危害を加えられると思い込むパラノイアなども症状の一つと言えます。

またビタミン12不足の原因が内因子不足による悪性貧血の場合、胃がんなどを発症するリスクが高くなる傾向があります。

主な原因

亜急性連合性脊髄変性症はビタミンB12が不足することが原因で発症します。
ビタミンB12が不足し、脊髄の神経繊維が変性し神経同士の連絡がうまくいかないことで、感覚異常などの症状が現れます。
脳や視神経にも損傷が及ぶと錯乱や無感動などの精神障害や、視力低下を引き起こします。ビタミンB12が不足する原因としては菜食主義、悪性貧血、胃の全摘出、薬剤などが挙げられます。
ビタミンB12は体内で作ることができない成分で、動物性の食物からしか摂取ができないため菜食主義の人にはB12不足が多い傾向があります。
他の大半のビタミンとは異なり、ビタミンB12は体に必要とされる時まで肝臓などに蓄えられています。
ビタミンB12は通常小腸から大腸へつながる回腸の部分で吸収されますが、胃で産生されるタンパク質と結合することで吸収されるもので、このタンパク質がなければ腸を通過して排出されてしまいます。
そのため、胃の全摘出や胃に慢性的な疾患がある場合、ビタミンB12がうまく吸収されないというケースが起こります。

主な検査と診断

亜急性連合性脊髄変性症は血液検査によって血中のビタミンB12濃度を測定することで診断が可能です。通常の血液検査で大きな赤血球が認められる点も特徴の一つと言えます。同時に血液中の葉酸値を測定することで葉酸欠乏症の可能性も探ることができます。また悪性貧血である可能性がないかを調べるために抗体の検査も同時に行われます。悪性貧血はビタミンB12の吸収を妨げる抗体ができてしまう貧血で、胃がんや橋本病などの甲状腺疾患を引き起こすリスクもあるため特に注意が必要です。悪性貧血の診断にはシリング試験と呼ばれる方法が行われるケースもあります。体が正常な量のビタミンを吸収しているか、その原因が内因子にあるかを確認できる試験です。

その他にビタミンB12不足になる広節裂頭条虫の寄生や、クローン病などに代表される回腸末端部の病気についても疑いがあれば必要に応じた検査が行われます。内視鏡検査によって胃の細胞の損傷状態を調べる場合もあります。損傷がひどいと、ビタミンB12の吸収に欠かせない内因子が生成されないためです。

主な治療方法

亜急性連合性脊髄変性症の治療には、ビタミンB12を注射で補う薬物療法が一般的です。早期に治療を開始できれば回復の可能性も高くなります。発症から数週間以内であれば大多数が完全に回復するとされていますが、回復の程度は神経変性の期間と程度に左右されます。ビタミンB12の投与は再発を予防するために、基本的には無期限に継続する必要があります。ビタミンB12の欠乏がみられるものの、神経症状が現れていない場合にはビタミンB12を大量に経口投与する方法も選択されます。また、注射による投与によって症状が安定した後に経口投与に切り替える例も多いです。これらの薬物療法を行っている間は定期的に血液検査を行い、ビタミンB12の値が正常であるか、それが維持できているかを確認することも重要です。

一方で治療の開始が遅れると失われた機能が完全に回復しない可能性が高くなります。病状の進行が遅くなったり、進行が止まったりといった改善がみられてもそれは一時的なものとなります。