胸膜肥厚 キョウマクヒコウ

初診に適した診療科目

胸膜肥厚はどんな病気?

胸膜肥厚とは、何らかの原因で胸膜が炎症を起こしてその後に完治し、胸膜が厚みを帯びた状態を指します。
胸膜とは肺を包む膜のことで、肺の表面を直接覆う臓側胸膜と胸壁の内側を覆う壁側胸膜とがあります。
炎症によって2枚の胸膜の間に胸水が溜まった後にそれが治療などで改善した結果、硬くなり肥厚が起こると考えられています。
肺の上の部分にあたる、肺尖部によく見られます。また、一部には胸膜の癒着が見られる場合もあります。

細菌やウイルス等による炎症によって生じるケースが多いとされており、過去に結核性胸膜炎や膿胸にかかった人にもよく見られます。
ほとんどの場合、病気として捉える必要はありませんが、結核などの感染症や悪性胸膜中皮腫などでも現れる症状の一つです。
健康診断の結果として胸膜肥厚の所見が見られる場合には、疾患によって生じたものではないことを確認する必要があります。
特に胸痛、発熱、咳などの自覚症状がある場合には胸膜炎の疑いもあります。

主な症状

胸膜肥厚の状態であっても、特に現れる症状はありません。
自覚症状を伴う場合には他の疾患が隠れている可能性があります。胸膜肥厚に隠れてる疾患として近年増加傾向にあるのが胸膜中皮腫です。
これは胸膜の中皮細胞から発生する悪性腫瘍であり、アスベスト(石綿)を肺に吸い込むことで発症する疾患です。
胸膜中皮腫を発症している場合には、胸膜肥厚だけでなく胸水貯留も所見として確認できます。
また通所の病的ではない胸膜肥厚と比較すると胸膜が肥厚が大きく、形も不整である特徴があります。

胸部X線検査は健康診断で行われる項目の一つで、結核などの感染症や肺がんなどが発見に重要な検査です。胸膜肥厚は健康診断の結果、軽度異常として記載されることがあります。特に肺の先端部分である肺尖部に厚みがある肺尖部胸膜肥厚がよく発見されますが、昔の胸膜炎や肺炎などによる炎症の跡である場合がほとんどです。
活動性の炎症などが見られる場合以外には、放置しても特に問題ありません。

主な原因

胸膜肥厚は、主に過去の炎症を原因として生じたの傷跡であることがほとんどです。
胸膜肥厚を生じやすい疾患としては結核性胸膜炎や膿胸などが挙げられます。自分では気がつかないうちに病気にかかり、自然に治癒した後であるケースもあります。
基本的に古い傷跡と認識して問題ありませんが、詳しい検査が必要になるケースとしては以前の胸部X線検査の結果と比較した際に何らかの変化が見られる場合や、新たに出現した場合です。
特にアスベスト曝露歴のある人であれば、胸膜中皮腫である可能性が疑われます。
胸膜中皮腫は発症するまでの期間が数十年に及ぶため、建築業や車両修理などに携わっていた人やアスベストの製造工場付近に住んでいた人は特に健康診断などの結果に注意する必要があります。

20代~40代の若年者であれば胸膜肥厚が見られても病的なものではない場合がほとんどですが、50代以降で指摘された場合には肺結核や胸膜中皮腫が原因となっている可能性もあります。

主な検査と診断

胸膜肥厚は、主に健康診断などの胸部X線検査によって発見されます。
ほとんどの場合は精密検査を行う必要はないと判断されますが、何らかの自覚症状があったり、前回の検査結果から変化が見られる場合には別の疾患の症状である可能性を確認するために胸部CT検査などが追加で行われます。
胸膜肥厚を生じる疾患としては胸膜中皮腫、肺結核、胸膜炎、胸膜腫瘍などの可能性が疑われます。
また、心配のない所見と言い切れない場合には要経過観察となることもしばしばあります。

追加で行った胸部CT検査の結果、胸水が溜まっていることが確認できれば胸水の一部を採取し、さらに細菌培養や癌の検査でもある細胞診などの精密検査が行われます。
これらの追加検査でも診断が確定できない場合には、肥厚した胸膜の組織を採取して生検を行ったり、胸腔鏡を用いて組織の生検を行うこともあります。
これらの組織検査でも同様に、細菌培養をしたり悪性所見がないかをより詳しく確認します。

主な治療方法

胸膜肥厚はそれ自体に治療は必要ないケースがほとんどです。
胸膜中皮腫、肺結核、胸膜炎、胸膜腫瘍など、原因となる疾患が見つかった場合には応じた治療が行われます。
胸膜中皮腫の場合は抗がん剤、放射線、手術、免疫療法などの選択肢があり、症状や進行の程度によってこれらの治療を単独で行ったり、組み合わせて行ったりします。
肺結核の治療は薬物療法を中心に行われ、薬剤機序の異なる治療薬を組み合わせる方法が一般的です。
胸膜炎であれば原因に合わせて抗ウイルス薬や抗生物質を用いた治療や対症療法、化学療法や手術、放射線療法などによる治療が行われます。
胸膜中皮腫などを含む胸膜腫瘍の場合は、手術に加え、放射線療法や化学療法も行われます。

また、現状疾患は見つからないものの、何らかの疾患の症状であることが疑われる胸膜肥厚に対しては、1ヶ月から数ヶ月後に再検査を行うなど慎重に経過を観察する場合があります。
良性の変化であると判断されていれば、1年後の検査など比較的長い間隔での経過観察となります。