閉塞性静脈炎 ヘイソクセイジョウミャクエン

初診に適した診療科目

閉塞性静脈炎はどんな病気?

閉塞性静脈炎とは、静脈が炎症を起こしたり血栓を生じて閉塞する疾患を指します。
血栓によって閉塞を起こすものを血栓性静脈炎とも呼びます。血栓以外には手術や外傷によって静脈が閉塞するケースや、悪性腫瘍、糖尿病、心臓病、妊娠、静脈注射に対する反応などの原因から引き起こされるケースもあります。
閉塞が多く見られる場所としては下肢が挙げられます。
下肢に静脈炎を発症すると、下肢が腫れる、静脈に沿うように熱を帯びる、痛みなども症状として現れます。
また閉塞性静脈炎から肺梗塞が引き起こされるケースもあります。特に上下にある大静脈が閉塞された場合、上半身または下半身の血流が障害されるため半身に浮腫が起こります。
これらを上大静脈症候群、下大静脈症候群と呼び、命に関わる重篤な疾患です。

単発で生じた閉塞に対しては血栓を溶かす薬を用いることで改善するケースが多いものの、静脈炎が慢性化していると効果が良好でない場合も多いです。

主な症状

閉塞性静脈炎は、閉塞した血管付近の皮膚が炎症によって赤くなる、腫れてむくみを生じるなどの症状が現れます。
血管に痛みを感じたり、脚の深部静脈に血栓が生じている場合にはふくらはぎを掴むと痛みを感じることもあります。
また症状が現れている部分が硬くなるなども症状の一つです。まれなケースでは発熱、悪寒などの全身症状も現れます。症状が進行すると、下肢全体が赤く腫れあがり、さらに動脈も圧迫されることで血流が障害され蒼白になることもあります。

肺塞栓は心臓を通った血栓が肺動脈で止まり、閉塞することで生じる疾患で、肺へ血液が流れなくなり、命を落とすこともある重篤な合併症と言えます。
肺塞栓は循環器疾患による突然死の原因として心筋梗塞、大動脈解離と並ぶ3大死因のひとつともされています。
肺塞栓以外にも合併症として挙げられるのが、脚のむくみと不快感が長期に渡って継続する慢性静脈不全症や、虚血などです。
虚血は脚に大きな血栓が生じた場合に起こるものです。

主な原因

閉塞性静脈炎は、下腹部の手術や下肢骨折などの外傷、静脈瘤、感染などが原因となって発症すると言われています。
健康な人に突然発症するなど、原因不明のものも多く存在します。

静脈壁の病変、静脈血流の遅延、血液成分の変化などは血栓が生じる代表的な原因とされます。
静脈壁の病変としては主に腕や脚の手術、刺激物の注射、炎症、閉塞性血栓血管炎などの疾患が挙げられます。
また一度血栓ができた箇所は再び血栓ができやすい状態と言えます。

静脈血流の遅延としては長時間にわたり同じ姿勢で座っていたことで発症するエコノミークラス症候群も下肢の静脈血栓症の一種です。
正常に脚を動かせない状態が続くとふくらはぎの筋肉が収縮せず血流が遅くなります。
そのため重篤な病気で安静にしていた期間が長かった人にも閉塞性静脈炎は多く発症がみられます。
血液成分の変化ではがんや遺伝性血液凝固障害などが挙げられます。経口避妊薬、 エストロゲン療法薬などによって血液が凝固しやすい状態になるものです。

その他、悪性腫瘍や糖尿病、心臓病、妊娠などに合併して現れる場合もあります。

主な検査と診断

閉塞性静脈炎は、まず視診や触診によって下肢の腫れ、皮膚の温度、表在静脈の拡張などついて確認し、血液検査、下肢超音波検査、造影CT検査、静脈造影検査などの結果から診断されます。
血液検査では主に炎症の数値や血栓に関連する数値を確認します。
下肢超音波検査は下肢に生じた血栓を比較的容易に発見できるため、この疾患の診断には頻繁に行われる検査と言えます。造影CT検査は、深部静脈に生じた血栓を確認することができます。静脈造影検査では血栓の位置やどの程度血流に障害が生じているのかを確認できます。
痛みや腫れがまったくみられない深部静脈に生じた血栓は特に発見が難しいとされており、その場合必要に応じてドプラ超音波検査と呼ばれる検査が行われます。

また肺塞栓症の合併が疑われる場合にはCT血管造影検査、肺シンチグラフィーなどが行われます。
重度の肺塞栓症によって失神を起こしている場合には、これらの検査は行わず速やかに治療を開始します。

閉塞性静脈炎と症状が似ている疾患としてはリンパ浮腫が挙げられ、場合によっては判別が難しいケースもあります。