偽アルドステロン症 ギアルドステロンショウ

初診に適した診療科目

偽アルドステロン症はどんな病気?

偽アルドステロン症とは、アルドステロンと呼ばれる血圧を上昇させる働きを持つホルモンが実際は増加していないのに高血圧、むくみ、カリウム喪失などの症状が現れる疾患です。
アルドステロンは副腎から分泌され、体内に塩分と水をためこみ、カリウムの排泄をうながして血圧を上昇させるホルモンです。
このホ ルモンが過剰に分泌された結果、高血圧、むくみ、カリウム喪失などを起こす病気がアルドステロン症です。
偽アルドステロン症はアルドステロン症のような症状を示すことからこのような病名がついています。

偽アルドステロン症は医薬品を原因に発症することがあり、特に甘草などが含まれる漢方薬、かぜ薬、胃腸薬を服用した際に発症するケースが多いです。
これらの医薬品を使用して、10日以内など比較的早期に発症する場合もあれば、数年以上使用してから症状が現れるケースもあり、発症までの期間には個人差があります。
中でも3ヵ月以内に発症するケースは約4割と、比較的高い割合を占めます。

主な症状

偽アルドステロン症を発症すると、手足の力が抜けたり弱くなる、血圧が上がるなどが典型的な症状として知られています。
これに次いで、筋肉痛、体のだるさ、手足まひやしびれ、こむら返り、頭痛、顔や手足のむくみ、のどの渇き、食欲の低下、動悸、気分の悪さ、吐き気、 嘔吐など幅広い症状を呈します。
症状が進行すると、まれなケースでは意識がなくなる、体を動かすと息苦しくなる、歩いたり立ったりできなくなる、赤褐色の尿が出る、尿がたくさん出たり、出にくくなったりする、糖尿病の悪化なども現れる症状の一部と言えます。
また、まれに自覚症状がまったくなく、血液検査によって低カリウム血症が発見されて診断に至る場合もあります。

偽アルドステロン症は男女比では約1:2と女性に発症が多い傾向にあり、患者の約80%が50~80歳代とされています。
また、低身長、低体重であり体表面積が小さな子供や高齢者に発症が多いという報告もあります。

主な原因

偽アルドステロン症を発症する原因は、主に甘草やその主成分であるグリチルリチンを含む医薬品の服用です。
甘草やグリチルリチンは、漢方薬、かぜ薬、胃腸薬、肝臓の病気の医薬品などに含まれています。

また高血圧症や心不全に対して用いられるサイアザイド系降圧利尿薬、ループ利尿薬や糖尿病に対して用いられるインスリンなども低カリウム血症を起こしやすいとされています。その他にもB 型、 C 型慢性肝炎の治療で用いられる小柴胡湯とのグリチルリチン配合剤の組み合わせや、副腎皮質ステロイド、甲状腺ホルモン薬なども発症リスクのある例として挙げられます。

偽アルドステロン症の症状をまとめると低カリウム血症を伴う高血圧症と言うことができます。
体内に塩分と水がたまり過ぎることで血圧の上昇やむくみが起こり、体からカリウムが失われるために、力が抜けたり、筋肉の異常が起こります。
医薬品の使用中にこれらの症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。

主な検査と診断

偽アルドステロン症は初期に現れる症状から疑われ、血液検査や心電図検査などの結果から診断されます。
注意すべき症状としては徐々に進行する手足の脱力や筋肉痛が挙げられます。
これらの症状は偽アルドステロン症の患者の約60%に現れます。この前に手足のしびれなどの初期症状がみられる場合も多いです。
また、高血圧も全体の約35%にみられます。

血液検査ではこれらの症状と関連するカリウムの数値を確認します。
低カリウム血症に伴って心室性不整脈を引き起こす場合もあるため、心電図検査も行われます。
心電図異常で見られる所見としてはT 波平低化、U 波出現、ST 低下、低電位などが挙げられます。偽アルドステロン症を発症する可能性がある薬剤を用いて治療を行う際には使用を開始した際や量を変更した際だけでなく定期的に血液検査、心電図検査が行われます。

偽アルドステロン症と同時に副腎偶発腫瘍を発症している場合、現れる症状などが原発性アルドステロン症や DOC 産生腫瘍などの疾患と類似しています。
診断の際にはこれらと判別することも重要です。

主な治療方法

偽アルドステロン症の根本的な治療方法は、原因となる薬剤の使用を中止することです。
基本的に薬剤の使用を中止すれば血圧はすぐに低下します。ただ低カリウム血症の症状はすぐに改善がみられるものではなく、抗アルドステロン薬などを使用します。
およそ数週間程度で症状は改善していきます。
低カリウム血症に対してカリウム製剤を投与しても、尿中に排泄されるカリウムの量は増加しますが症状は改善しません。

市販の医薬品を使用して発症している場合は、患者自身が早期に症状に気が付くことも重要です。
漢方薬、かぜ薬、胃腸薬、肝臓の病気の医薬品、市販の医薬品などを服用している場合には特に体調の変化に気を付ける必要があります。
複数の医薬品の飲み合わせで起こる場合もあります。特に手足のだるさ、しびれなどの症状が徐々に進行するような場合に早期に、医療機関を受診しましょう。
症状は数週間あるいは数年にわたって服用してから、はじめて現れる場合もあります。
受診したり、薬剤師に相談したりする際には、服用した医薬品の種類と量、期間などを伝えられるようにしておくことも大切です。