横川吸虫症 ヨコカワキュウチュウショウ

初診に適した診療科目

横川吸虫症はどんな病気?

横川吸虫症とは、横川吸虫と呼ばれる寄生虫に感染することで発症する疾患です。
横川吸虫の成虫は洋梨のような形をしており、体長1~2mmほどです。巻貝やアユなどの淡水魚や汽水魚に肉眼では見えないメタセルカリアと呼ばれる形で寄生しているのが特徴です。
メタセルカリアとは感染性をもつ幼虫の状態です。
井戸水で養殖された魚などには寄生していません。横川吸虫はアジア諸国に広く存在しており、日本でもよく見られるものです。
横川吸虫が寄生した魚などを調理不十分な状態で食べることで感染したり、調理の際に接触したまな板や布巾などから二次感染をするケースもあります。
人以外に他の哺乳類や鳥類にも感染します。

横川吸虫の成虫は主に小腸粘膜に寄生する特徴があります。
単体や少数が寄生している場合には自覚症状は現れないことがほとんどです。
多数の横川吸虫が寄生していた場合には、腹痛、下痢などの消化器症状も見られます。このような場合、治療にはプラジカンテルと呼ばれる薬剤が用いられます。

主な症状

横川吸虫症は基本的に組織侵入性は持っておらず、小腸の微絨毛表面に密着して寄生します。
また体長も1~2mm程度と非常に小さいため大量の横川吸虫が寄生している場合以外はほとんど症状が現れません。
吸虫が数百個体以上寄生した場合には、体内に入り込んだ横川吸虫のメタルセルカリアが小腸の粘膜を刺激することで軟便、腹痛、腹部膨満感、下痢などの消化器に関わる症状が現れる場合もあります。
また、まれに蛋白漏出性胃腸症を引き起こしたり、重篤な場合には脱水を来すほどの下痢を生じることがあります。

無症状の場合、横川吸虫は数年体内に寄生し続けることもあります。横川吸虫症は症状が現れたとしても軽度なケースがほとんどであるため、原因不明の慢性的な腹痛として長年扱われ、正しい原因が発見されないことも多くあります。
症状の有無や程度・出現時期などは摂取量によってさまざまです。また、同一の食事を囲むことが多い同居者にも同じ症状が現れることもあります。

主な原因

横川吸虫症は横川吸虫と呼ばれる寄生虫が原因と言えます。
横川吸虫はまず清流に棲息しているカワニナと呼ばれる巻貝の中で成虫へと孵化します。カワニナの消化管を破って水中へ広がり、アユやシラウオ、ウグイなどの魚に寄生していきます。
第1中間宿主がカワニナ、第2中間宿主がアユなどの淡水魚、そして最終宿主が人となります。
魚の中で横川吸虫は感染性を持つ幼虫へと変化し、この状態をメタルセルカリアと呼びます。メタルセルカリアが寄生している魚を食べることで横川吸虫症を発症します。

ヒトの消化管に侵入した横川吸虫は成虫へ成長し卵を産み付けます。
卵で汚染された便が水環境に戻っていき、再び汚染されるためこのサイクルは続いていきます。
横川吸虫の卵を摂取したとしても発症には至りません。

日本の場合、横川吸虫が多く生息しているとされるのは東海や西日本ですが、基本的には北海道以南の全国に分布しています。
日本には生の魚を食べる習慣があるため、感染のリスクは高いと言えます。

主な検査と診断

横川吸虫症は主に便の検査によって診断されます。便のサンプルを採取し顕微鏡で確認する方法によって、便中に横川吸虫の卵が認められた場合、横川吸虫症と診断されます。
ただ卵の状態では、異形吸虫や有害異形吸虫などの、同じように人の消化管に寄生する寄生虫と判別することは困難です。
そのため確実に横川吸虫症であると診断するためには、排出される成虫を確認する必要があります。
ただ、重篤な症状も現れていない上に治療法は異形吸虫や有害異形吸虫であっても基本的に同じであるため、積極的には行われないことが多いです。

横川吸虫症は自覚症状がないことが多いため、患者自ら受診して発見に至るケースは少ないと言えます。
健康診断や人間ドックなどで行われる寄生虫症スクリーニング検査によって偶然発見されるケースが多いです。
また必要があれば検便や血清診断なども行われますが、明確な結果が得られにくく、横川吸虫症においては感度が低いと言えます。

主な治療方法

横川吸虫症はプラジカンテルと呼ばれる薬剤を用いて治療が行われます。
プラジカンテルは吸虫感染症全般にわたってほぼ100%の高い駆虫効果を示すことで知られている薬剤で、これに替わる薬は現在のところありません。
まずプラジカンテルを内服し、時間を空けて下剤を内服する方法で治療が行われます。
これによって横川吸虫を体の外に排出するよう促し、駆虫します。基本的に治療はこの方法を一度行うのみで終了し、副作用なども特に見られません。
ただ妊婦の場合、胎児への影響がまったくないと証明されていないため使用は控えるケースが多いです。
日本では妊娠4カ月未満の妊婦に対しての投与は行われていません。また授乳中の女性の場合、プラジカンテル使用後72時間は授乳を控えることが推奨されています。

プラジカンテルの内服による治療は有害異形吸虫全般に対しても行われますが、推奨される用量は対象となる吸虫の種類によっても異なります。
また腎機能や肝機能に疾患を抱える高齢者の場合は、治療中や治療後の経過に注意が必要です。