鉤虫症 コウチュウショウ

初診に適した診療科目

鉤虫症はどんな病気?

鉤虫症とは、長さ1cmほどの鉤虫と呼ばれる寄生虫が小腸や十二指腸などに寄生しておこる疾患です。
釣り針のような形をしていることから鉤虫と呼ばれています。
熱帯から亜熱帯の地域など温暖で湿気の多い地域に多く見られ、日本ではあまり感染する症例は見られません。
衛生環境の整っていない地域に多いとも言えます。十二指腸虫症とも呼ばれますが、小腸に寄生するケースが多いとされています。
鉤虫は土の中に潜んでいるケースが多く、皮膚から体内に入り込むことで発症したり、鉤虫で汚染された野菜などを食べることでも発症します。

鉤虫は消化管にくっつく特徴があり、それによって持続的な消化管出血を生じます。
出血が続くと鉄欠乏性貧血を引き起こすこともあります。
また、木炭や土などの食物以外のものを食べる異食症の原因となることも多いとされています。

流行地域を訪れる際には素足で歩かないこと、食物は洗浄したり火を通してから食べることを徹底することが予防のためにも重要です。

主な症状

鉤虫症を発症してもほとんどの場合は症状が現れません。
ただ幼虫が移動している際や移動した先の臓器で何らかの症状を引き起こすケースがあります。
まず幼虫が皮膚を貫通して侵入した部分に発疹が生じることもあります。
この発疹は赤くふくらみを持っていてかゆみを生じます。また咳の症状が現れたり、その他にも発熱、喘鳴、ふらつき、めまい、息切れなど貧血のような症状が現れる場合もあります。
特に発熱、喘鳴などは幼虫が肺に移った際に現れるとされています。

また幼虫が腸にかみついた際に腹部に痛みを生じることもあります。
さらに進行すると食欲不振、下痢、体重減少などもみられるようになります。
重度の感染症を生じた場合、血液が失われ続けることで貧血状態になり鉄欠乏症を合併します。
特に小児の場合は失血が続く状態に注意が必要で、重度の貧血になると心不全を引き起こしたり組織の腫れなどが生じます。
同様に妊婦の場合にも胎児の正常な成長が障害されることがあります。

主な原因

鉤虫症は、鉤虫と呼ばれる寄生虫が体内に入り込むことが原因で発症します。
鉤虫の中にも様々な種類があり、中でもズビニ鉤虫、アメリカ鉤虫、犬鉤虫が人にって問題になる種類とされています。
鉤虫の卵は温暖で湿り気のある土などで孵化し、5〜10日ほどで感染性を持つようになります。
鉤虫で汚染された土に触れたり、裸足で歩いたりして感染するケースや汚染された食べ物を食べたことによっても感染します。
体内に侵入した鉤虫は血液に乗って肺へ到達し、肺を突き破って気道に入り、飲み込まれることで消化管内へ移動します。
消化管で卵を産み、便から排出されることでこのようなサイクルが続きます。

消化管内の成虫が消化管出血を引き起こすことで貧血症状などが現れます。
鉤虫が体のなかに入りこむことでアレルギーのような症状を引き起こす場合もあります。
また鉤虫症は若菜病と呼ばれることもありますが、これは鉤虫に汚染された若菜の浅漬けなどを原因として鉤虫症を発症することに由来しています。

主な検査と診断

鉤虫症は、便中に鉤虫の虫卵があるかを確認する検査によって診断が可能です。
このような便のサンプルを用いた検査は、排便後数時間以内に検査を行う必要があります。
虫卵だけを見てもズビニ鉤虫やアメリカ鉤虫など種類の判別まではできないため、加えて幼虫の形態を確認する必要があります。

また血液検査によって抗体を調べる方法も有効とされています。
血液検査では同時にヘモグロビン、鉄、フェリチンなどの数値も確認し、貧血の評価を行います。
これは鉤虫症に現れる症状の中でも鉄欠乏性貧血の進行が最も懸念されるためです。便潜血検査なども同様に貧血の評価に役立ちます。
また鉤虫が皮膚に侵入してさまよった際に生じる皮膚幼虫移行症が疑われる場合、発疹の外観と部位から判断されるケースが多いです。

特に海外から帰国した後に貧血の症状がでたら、鉤虫症を疑う必要があります。特に、南米やインド、アフリカ、中国など農村に行った場合は注意が必要です。

主な治療方法

鉤虫症の治療は寄生虫を駆除する駆虫薬や、貧血の症状に合わせて鉄剤などが用いられます。
アルベンダゾール、メベンダゾール、パモ酸ピランテルなどの薬剤が使用されますが、これら薬は胎児に対しては有害であるため妊婦への使用は慎重に検討する必要があります。

皮膚幼虫移行症は特別な治療は行わず、自然治癒を待つことがほとんどです。
ただ症状は5~6週間程度続く可能性があります。ルベンダゾールやイベルメクチンなどを投与することで感染症の根治が期待できます。

鉤虫症の予防としては、感染が見られる地域を訪れる際に清潔なトイレを使用すること、皮膚が土に触れないようにすることなどが重要です。
イヌやネコに鉤虫の予防処置を行うことも人への感染を防ぐために有効とされています。
日本ではほぼみられない寄生虫ですが、鉤虫がよく発生している地域では定期的なアルベンダゾールの投与を行っていることがあります。
これによって感染いよる合併症を防ぐことにも繋がります。